今週のおすすめ本 vol.22
店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。
今回はスズキナオさんの新刊『家から5分の旅館に泊まる』をご紹介します。
『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(パリッコさんとの共著)など、日常の中にある小さな楽しみを見つけて、私達に届けてくれるスズキナオさん。
はじめての旅エッセイとなる本書でも、そのスタンスは変わらず。肩の力を抜いて楽しめて、それでいてときにハッとさせられるような、とても魅力的な1冊になっています。
日常と地続きの旅があっても良い
「旅」というのは、豊かな自然に触れて癒やされたいとか、普段はできない体験をして刺激を受けたいとか、何かしらの目的を持って計画するものです。
でも、旅の準備って正直面倒ですよね。旅先の選定、宿選び、タイムスケジュールの計画など、せっかくの旅行を満喫したいと思えば思うほど、事前の準備が必要になります。完璧で最高な旅のための計画作りに疲れてしまい、「今回は家でゆっくりするか」となってしまうこともあるんじゃないでしょうか。
人生を変えるような壮大な旅も良いけど、もっと気軽な旅もあって良い。思いつきで、ふらふらと近場を歩いてみるだけでも、いつもの街の知らない一面と出会えることだってある。本書に綴られていのは、そんな日常の小さな断片です。
最初のエピソードは、マクドナルドから始まります。そんな旅エッセイ、なかなかありませんよね。
久しぶりに訪れた東京で、旧友に連絡を取り、近所の公園で会う約束をしたナオさん。バッテリーが切れてしまったスマホをマクドナルドで充電し、コンビニで酒を買って旧友を待つ。犬を連れて公園に現れた旧友と、とりとめのない会話を交わす。お互いの近況報告を終えて、ビジネスホテルにたどり着く。
あまりにも地味なエピソードですが、ふとした時に思い出すのって、こういう何気ない出来事だったりします。
いつもの風景にも、まだ自分が知らない顔がある
タイトルにもなっている、「家から5分の旅館に泊まる」というエピソード。大阪の自宅のそばにある、年季の入った旅館「くず乃は旅館」のことが気になり、ゴールデンウィークが終わって落ち着いた平日のある日、意を決して宿泊してみることにします。
チェックインをしたあと、受付にいた女性に気になったことを色々と聞いてみると、「昔はあそこに映画館があった」とか「今は旅館だけやっているけど、以前は食堂もやっていた」とか、長くその土地に根を下ろしていた人しか知らない話が続々出てくる。
こういうことって、簡単そうで誰にでもできることではないですよね。目の前にある面白そうなものを見つけて、自然体で楽しむ。スズキナオさんならではの姿勢が生み出す、小さな奇跡が積み重なって生まれた1冊だなと思います。
8月の発売以来、店頭、オンラインともによく売れている本ですが、改めてご紹介したいと思い、今回取り上げてみました。
取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。在庫数は限られているため、売り切れの際はご容赦ください。
本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。
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