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本だけ売って暮らしたい

2022年の7月に、熊本市で「古本と新刊scene」というひとり本屋を始めた。
オープン当初は、平日の4日間、日中は別の仕事をしながら、18時から22時まで本屋を開け、土日や祝日は11時から19時まで1日本屋、といった生活をしていた。
ダブルワークをしばらく続けたのち、2023年には勤めていた職場を退職することになった。本屋の仕事に集中したくて辞めた、というわけではない。むしろ経済的には不安があったので、できればまだ続けたかったのだけど、その職場は自分が独立するまでという約束で雇ってもらったのもあったし、泣き言を言ってこれ以上しがみつくのも良くないと思い、最初の約束通り退職することにした。

ということで、退職後は改めて別の仕事を探すつもりでいた。個人事業をやっていると失業保険はもらえないと聞いていたのだけど、雇用保険は在職中払っていたわけだし、どうにかならないかとハローワークに相談してみることにした。退職して個人事業だけの状態になったけど、事業は始めたばかりで収支はずっとマイナス=無収入と同じ状態なので、失業保険の対象にならないか尋ねてみたところ、月ごとの帳簿を提出して、実質的な収入がないことを証明できれば失業保険の給付対象になると返事をもらえたので、転職活動は少し余裕を持ってやれることになった。

その後、営業時間を少し変更したりしながらも基本は平日夜営業のスタイルで本屋は続け、秋頃に一度は新しい仕事についたものの、自分の能力不足で1ヶ月ほどしか継続することができず、その頃には失業保険の給付も終わってしまった。2023年の後半はひとまず短期のアルバイトなどで食いつないできたが、2024年になっても仕事は決まらず、宙ぶらりんなまま2月の末日を迎え、3月の営業スケジュールをどうしようか迷っていた、というのが今現在の話だ。
ちなみに、数か月前からリモートで固定収入が得られるアルバイトを1つだけやらせてもらっている。おかげでずいぶん助かってはいるのだけど、それを合わせても食っていくには稼ぎが足りておらず、貯金は減り続けている。

現状の営業スケジュールは、月〜木が17時から21時の4時間、土日祝が12時から21時の9時間、金曜日は定休日にしている。ダブルワークを想定した営業時間のままにしているが、本屋の営業時間外は特に何かに拘束されているわけではなく、ここ最近は、平日の17時の開店時間前、午前中や昼頃から店に出てきてなにかしらの作業をしていることも頻繁にあった。
だったらもう、平日も1日店を開けてしまっても良いのではないだろうか。この数ヶ月ずっと考えてきたのだけど、あまり営業時間をころころ変えるのは良くないし、それよりちゃんと仕事を探すのが先決だろうということで、今までやれずにいた。

店舗の売上は、1年半以上続けてみても伸びてきているという実感があまりなく、平日はいまだに誰も来ないまま終わる日が、月に何日かある。そんな状態で、平日の4時間の営業時間を多少伸ばしたところで、店舗の売上がどれだけ増えるのかというと、正直たかが知れているだろう。ただ、どうせこのまま中途半端な状態が続くんだったら、1ヶ月くらいは本屋をフルでやってみても良いんじゃないかという思いもあり、それをやるかやらないかで悩んでいたわけだ(しょうもないことなのはツッコまれなくても分かっている)。

3月の営業時間を、平日17〜21時から12〜21時に変更して、1ヶ月本屋の営業に注力する。これをやってみるかどうか決断するにあたって、自分の中で条件を設定することにした。

・2月最終週、毎日店舗で売上を作る(来店ゼロ、売上ゼロの日がない)こと
・1月からの1ヶ月間で、事業用の口座の残高が一定額以上増えていること
・もし3月フルで本屋をやるとしても、仕事探しもちゃんと並行すること

これを達成できなければ、営業時間の変更はしない。平日の日中は仕事探しの時間にする、というのが自分が決めたルールだ。

2月の営業を終えて帳簿等を確認したところ、本当にギリギリだったが条件をクリアすることができていたので、3月は営業時間の変更を行うことにした。すでにSNSで告知を済ませ、グーグルの営業時間の情報も修正してしまっている。

情けない話なのでここにしか書かないけれど、これまで仕事探しをちゃんとやっていて、それでもなかなか決まらなかったのかというと、全然そんなことはなくて、正直なところほとんど何もしていなかった。
本屋のほかに何かしたいことがあるのかというと別にないし、できればこのまま本屋の仕事だけでどうにかならないものか、考えるのはそんなことばかりで、だからといって実際に本屋だけでやっていけるとも思えない。あぁどうしよう。そんな日々をこじらせた結果、たいした勝算もないのに、別の収入源を確保しないまま本屋の営業に注力するという無謀なことをやろうとしているわけだ。
あまりにも後ろ向きな理由に自分でも笑ってしまうけれど、本屋を始めたときもそんな感じだったし、自分らしいとも思っている。

営業時間を伸ばすのは4月以降も続けるか分からないけど、それとは別に、新しいルールも作ることにした。

・月末に、事業用の口座から3万円を自分に給付すること(個人事業なので給料ではないが、給料のようなもの)
・月3冊以上は自分のための本を仕入れること

「3万円」は何なのかというと、小遣いではなく生活費だ。月3万円で生活費が足りるのか。それを疑問に思ってはいけない。
またしても情けない話になるけど、これまではそんなことすらできていなかったので、自分にとっては大きな前進なのだ。今の売上を保たなければそれもできなくなるので、今後もサボらず努力することを心に誓いながら、本屋の売上から3万円を生活費にあてることにする。
本を自分用に仕入れることも同様で、これもなかなかできていなかった。仕入れた本を売り場に並べるのか自宅に持ち帰るのか、これまで曖昧なままになっていたので、「最低でも月3冊は自分用にしていいよ」という決まりをつくることにした。


ものを仕入れて売るというのは非常に単純明快な商売の仕組みで、個人でやれば、全てのことが自分の手に届く範囲にある。本屋を始めた理由はもちろん本が好きだったからだし、本を売る仕事は楽しく、自分にとても合っていると思う。日々の悩みは、売っても売っても自分の手元にお金が残らないことだけだ(それが事業継続にいちばん大切なことなんだけど)。

もういい加減、本だけ売って暮らしたい。そんなことを思いながら、3月にのぞもうとしている。その経緯はこれまで書いた通り、あまり誇れたものではないけれど、せっかくなのでやれるだけのことはやってみようと思う。



最後に宣伝です。店舗は熊本市にありますので、もしお立ち寄りいただけるタイミングがあれば、ぜひご利用ください。

古本と新刊scene
熊本県熊本市中央区神水1丁目2-8
輔仁会ビル 202号室

熊本市の中心部からは少し外れた、熊本県庁通り沿いにあります。駐車場はありませんので、近隣のコインパーキングをご利用ください。
公共交通機関をご利用の場合は、バスや市電で熊本県庁を目指していただくと、最寄りの停留所から徒歩5分ほどで着きます。


通販もやっています。来店が難しい方も、通販をご利用いただけると大変助かります。実際のところ、店の立地があまり良くないこともあり、通販の売上にかなり支えられています。
ご利用のほど、よろしくお願いいたします。

noteでは毎週「本屋営業日誌」という日記と「今週のおすすめ本」という本の紹介記事も書いています。
よろしければご一読ください。

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