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本屋開業日記 番外編1

開業準備のことを書いてばかりだと、自分がどういう人間で、なぜ本屋をやろうとしているかという話がなかなか出来ないので、今回は自分語りの回にしようと思います。本屋の準備のことが知りたい方は次回をお楽しみに。

僕は1979年生まれで、これを書いている時点で42歳のおっさんなのですが、人生折返しくらいまで来てるわりには語れることなんて全然ないので、今回番外編1と称してますが、多分2回くらいで終わるんじゃないかと思います。


今僕は熊本市東区の健軍というところに住んでいます。わりと熊本市の中心に近いところなんですが、もともとの生まれは熊本県と福岡県の県境あたりです。具体的には熊本県荒尾市、福岡県大牟田市という地域になります。この地域にあるもので多少有名なものと言うと、2015年に世界遺産になった万田坑という炭鉱跡地や、映画「オズランド」の撮影舞台になった三井グリーンランドくらいでしょうか。あと、「りぼんちゃん」というコテハンで一時期2ちゃんねるの人気者だった「ぼっさん」がこの地域在住と言われてます。僕はもちろんぼっさんの知り合いじゃないんですが、いつかどこかですれ違ったことくらいはあるかもしれません。何のことかさっぱりわからない方すみません。インターネット昔ばなしです。


小さい頃は、本当にごく普通のこどもだったと思います。親がガロの愛読者だったとかそういう道を踏み外すフラグが立つこともなく、元気に外を走り回って昆虫を捕まえたり、小学生の頃はコロコロコミックや少年ジャンプを愛読し、ファミコンやミニ四駆などのメジャーなキッズホビーに夢中でした。漫画は好きだったけど、人より多く読むということもなかったと思います。「ズッコケ三人組」シリーズなんかは、図書室でよく読んでたのを覚えてます。小学3年生くらいの時に初めて買ったCDが「機動警察パトレイバー」のサントラだったんですが、そのエピソードはわりとオタクっぽいかもしれない。

中学、高校くらいになってきて、少しずつ好きなものの傾向が今に近づいてきました。電気グルーヴでテクノを知り、90年代半ばのブリットポップムーブメントをきっかけに海外の音楽を聴くようになりました。そこからアメリカのオルナタティブロック、インディーロックへと流れていきました。本はその頃もそんなに読んでなかった気がします。クラスで一時期小説を読むのが流行っていて、原田宗典や村上春樹をおのおの読んでいたのは覚えてるけど。

本屋につながる話が全然出てこないじゃないかとお思いの方、すみません。いちおうここからが本番です。


これまで自分の住んでいる地域のよくある「まちの本屋さん(今ではむしろ希少な存在になってしまいましたが)」にしか行ったことがなかったのですが、19か20歳くらいの時に初めて行ったとある本屋さんに、僕は衝撃を受けました。ヴィレッジ・ヴァンガード・ジークス天神店です。

今では天神ロフトビルと名前を変えてしまった当時のジークスの地下にあったヴィレッジ・ヴァンガード(以下VV)。ここ最近のショッピングモールに出店しているVVしかご存じない方にはイメージできないかもしれませんが、僕が初めて行ったVVは、薄暗い照明に渋い商品セレクト、流れているのはジャズという、大人の雰囲気を醸し出している店でした。思い出補正もあると思いますが、入ってすぐに「なんかかっこいい店だな」と思ったのはよく覚えています。

最近は雑貨を売っている店という印象がどんどん強くなっているVVですが、当時は本棚も充実していました。全く知らない作家さんの本が山積みにされている、トリッキーなレイアウトの平台を見て、「この店は、ここで働いている人が好きなものを好きなように並べているんだろうか。だとしたらすごいな。」と驚いたのを覚えています。こんな本屋があるんだという感動とともに店を出た後も、鮮烈に記憶に残り続けた初めての本屋がVVジークス天神でした。

これまでメジャーな商業誌に載っている漫画しか知らなかった僕が、初めてオルタナティブな漫画世界のことを知ったきっかけになったのは、イースト・プレスが発行していた「COMIC CUE」でした。

錚々たる作家陣が並ぶ中でも個人的に印象的だったのが、よしともよしとも氏。特にvol.2に収録されていた「ツイステッド」は忘れられない作品です。
洋楽を聴くようになっていた当時に出会ったこの作品で「こんなインディーロックみたいな漫画もあるんだ」という発見をしたことで、本の世界にも俄然興味が湧いてきました。


書いてみると意外と書けるもんです。VVとCOMIC CUEでサブカル野郎の片鱗を示したところで後半に続きます。


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