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今週のおすすめ本 vol.20

店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。

今回は、雑誌SPECTATORの特集記事を再編した初の書籍「ヒッピーの教科書」をご紹介します。

ハードカバーに箔押しされたピースサインがインパクト大な本書。1960年代に生まれたヒッピームーブメントの歴史と、現代社会に及ぼす影響について、まんが形式で分かりやすく知ることができる1冊になっています。


ヒッピーとはなにか?

ヒッピーと聞いた時に思い浮かぶのは、長髪にサイケデリックなファッション、大麻を吸いながら世捨て人のような暮しをしている人、といった感じでしょうか。
どうしてもビジュアルのイメージに引っ張られがちなヒッピーという言葉ですが、その運動の発端は、1955年に始まったベトナム戦争にあります。

急激な経済成長とともに、物質的な豊かさを追い求めていったアメリカ。良い家、新しい車や家電が幸せをもたらしてくれると信じられていた一方で、加速化する競争社会や、冷戦などの不安定な社会情勢から、多くの人が不安を抱えながら生きている時代でした。

ケネディ大統領の暗殺、ベトナム戦争の勃発などをきっかけに、当時のアメリカ社会に「NO」を叩きつけ、若者によって新しい価値観を持つ社会を作り出そうというのが、ヒッピームーブメントの始まりです。


テキスト多めのまんが形式で、分かりやすくヒッピーの歴史を学ぶ

ヒッピーの前身となるビート・ジェネレーションから始まり、1960年代から70年代のヒッピームーブメントの全容、そして現在まで続くその影響について、本書では時系列を追いながらまとめられています。

政治や社会的な背景だけでなく、文学や音楽、映画など様々な分野とも深いつながりを持つヒッピームーブメント。その複雑な内容への理解を深めてくれるのが、関根美有さんのポップな作画によるまんが。全編がまんが形式で構成されていることで、とっつきやすく読み進めることができるようになっています。しかしながら、まんが内でのテキスト量も充分にあり、視覚的な分かりやすさと情報量のバランスがしっかり保たれています。


ヒッピーを深く知るための資料も充実

まんがを補完するための、地図や年表、用語解説や人物名鑑、ブックガイドなどの資料も充実しており、112ページと比較的短いページ数でありながら、ヒッピーの歴史について本格的に学べる内容になっています。


現代社会を生き抜くためのエッセンスを学ぶ

ヒッピームーブメントは、当時の世の中へのカウンターとして、「愛と平和あふれる理想の社会」を追い求める運動でした。
時は流れ、現代社会はどういった様相を呈しているでしょうか。世の中のあらゆるものが金銭価値に変換される資本主義的な考えはさらに加速し、多様性の時代と言われながらも差別はなくならず、世界各地で戦争や紛争も絶えることはありません。
世の中に、すべての人が幸せになれる理想郷のような場所はない。そう言われてしまうと、残念ながら今の世に生きる多くの人が、肩を落としながら納得してしまうのではないかと思います。
今となっては、ヒッピーたちが夢見た「理想の社会」はあまりに純粋で、ロマンティックすぎるように感じられるかもしれません。しかしながら、ヒッピーたちが掲げた価値観は、形を変えて現代を生きる人々にも息づいているし、どんなに絶望的な世の中でも、人は理想や夢を持たずに生きていくことはできません。

ヒッピーたちの歴史とその思想のなかには、私たちが現代社会を生きるためのヒントが詰まっているのではないかと思います。


今回は、「ヒッピーの教科書」をご紹介しました。

取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。在庫数は限られているため、売り切れの際はご容赦ください。
本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。


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