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レティシア書房店長日記

「きみは、ぼうけんか」
シャフルザード・シャフルジェルディー(文)
ガザル・ファットラヒー(絵)

 2021年のブラチスラバ世界絵本原画展で金牌受賞した、イラン発の絵本が翻訳されて国内でも発売されることになりました。(新刊 1540円)
 「どんな国の子にもこんな体験はしてほしくない」と「こどもの本のみせ ともだち」の湯阪美智子さんが、帯に書かれていますが、これは戦争に巻き込まれたこどもたちの姿を描いた絵本です。

 爆撃でメチャクチャになった家の中に、小さい女の子とお兄ちゃんがいます。これからどうするの?と泣き顔の女の子に向かってお兄ちゃんは、
「ぼうけんかになりたくない?」と問います。女の子が「ぼうけんか?
うーん、いいけどさ、どうやってなるの?」と尋ねると、お兄ちゃんが、本に書いてあるので、僕が読んであげるからその通りにしなさいと言いつけます。女の子は、「する!やくそく!やくそくする」と答えます。

 お兄ちゃんは何もわからない妹を、なんとか安全な場所へ連れていくために、「ぼうけん」に誘ったのです。悲惨な現状をモノクロームで、兄妹をカラーで描いてあります。旅立ちの時に、お兄ちゃんが被せた黄色い色の帽子は勇気のしるしです。
 二人は本を片手に、家を捨て、いたるところに爆撃や銃撃の跡の残る市街地を抜け、山道を登り、野宿をして海へと出ます。多くの人で溢れそうなボートに二人も乗り込み、知らないところに到着します。入国管理らしい場所には、疲れ切った人々が列を作っています。もう前に進めない女の子にお兄ちゃんは「もう、ぼうけんは終わったんだ」と呟きます。ここまで妹を宥め、元気を出す様に努力してきたお兄ちゃんは、疲労困憊していたのでした。
 その時、女の子が「でもさ、本に書いてあったでしょ。ぼうけんのまちを みつけなくちゃいけないって。まだ そこに たどりついていないよ。そこに つくまで ぼうけんかでいなくっちゃ」と、お兄ちゃんを励まします。
メソメソして、お兄ちゃんのそばを離れられなかった女の子が、今度はお兄ちゃんを引っ張ります。そして、自分がかぶっていた黄色い帽子をお兄ちゃんに被せるのです。

 最後のページ。天井から折り鶴が吊って吊られて、赤い机がある教室に、女の子や彼女の友達が集まっています。「いまね、がっこうで 本を作ってるんだ。じぶんの ぼうけんのことを かいてるの。えも じぶんで かいてるんだよ。『きみは ぼうけんか』っていうなまえにした。わたしは この本を せかいいちの ぼうけんか、おにいちゃんに プレゼントしたいと おもってる。」戦争で故郷を追われて、難民になったこどもの世界を描き、こどもたちが幸せに生きる権利を伝える傑作絵本です。


●レティシア書房ギャラリー案内
2/28(水)〜3/10(日) 水口日和個展(植物画)
3/13(水)〜3/24(日)北岡広子銅版画展
3/27(水)~4/7(日)tataguti作品展「手描友禅と微生物」



⭐️入荷ご案内
モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
最相葉月「母の最終講義」
青木新兵&海青子「山學ノオトvol4」(2200円)
蟹の親子「脳のお休み」(1980円)
古賀及子「おくれ毛で風を切れ」(1980円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
「古本屋台2」(サイン入り/1650円)
RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」
(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)


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