見出し画像

レティシア書房日誌

映画「ファッション・リイマジン」ベッキー・ハトナー監督
 
 
全世界で毎年作られる服の総数、ほぼ千億着。そしてその5分の3 が購入した年に捨てられているそうです。ファッション業界を国に例えると、その二酸化炭素排出量は、中国、アメリカについで世界第3位。そんな状況を、あなたはどう思われますか?
 イギリスにあるブランド”Mother of Pearl"のデザイナー、エイミー・バウニーは、2017年VOUGEの新人賞を受賞します。その賞金を使って、自分が追い求めたかったサステナブルなファッションコレクション”No Frills"を立ち上げます。
 サステナブルなファッションとはどういうものなのか。”Sustainable fashion”は、衣服の生産から着用、 廃棄に至る過程で、どこの生産者がどんな形で原料(ここでは羊)を育て、化学物質を使用せずに加工し、そこで働く人たちが正当な報酬を得て服を作り、生態系を含む地球環境に負荷をかけず消費者に送りだし、また消費者もそのことを理解した上で着用するというものです。少々値段が高くても、オーガニック農業を続ける農家から野菜を購入し、その農家を支えるようなものです。
 エイミーは、適正な環境で動物を酷使することなく育てて、良質の羊毛を生み出す生産者を求めて、南米ウルグアイに飛び、そこで一人の羊毛業者に出会い、その後ペルーに出向き、彼女の思想を理解してくれる紡績工場を探し出します。


 映画は、英国のファションウイークで”No Frills"発表までの18ヶ月を追いかけていきます。エイミーとその仲間たちの行動力にまず驚かされます。ファッション業界の冷めた視線にひるむことなく、突き進んでいきます。猛スピードで新作を発表し大量消費を促進する業界にあっては、エイミーの考え方は異端です。業界の大物からは馬鹿にしたような意見も投げられます。

エイミー・バウニー


 しかし、”No Frills"が高い評価を受けるや否や、サステナブルなファッションへの意識が高まり、多くのブランドが参入してきているのが現状です。
ファッションの流行の中で消費されいつの間にか自然破壊に加わり、地球の環境負荷を増長してきた現代人の意識を、エイミーや彼女の仲間たちは変えてきたのです。そして例によって、ここでも登場するのは女性たちばかりです。他の業界と同じように利益至上主義に、頭がいっぱいの男性たちには見えてこない風景なのです。
 「服が世の中を変えるのではない。それを着る女たちが世の中を変えるのだ」ラストに出てくるセリフですが、名言ですね。
 もっと詳しく知りたい方には、サフィア・ミニー著「リジェネラティブ・フッション」(古書1800円)をお勧めします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?