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レティシア書房店長日誌

ユ・ジェソン監督「スリープ」
 
 韓国発のホラー映画。積極的にホラーは見ない方ですが、これは予告編がスタイリッシュでクールだったので映画館に足を運びました。怖かった!
しかし、その舞台設定もプロットのひねりも、サスペンスを恐ろしく高めるカメラワーク等々、とても楽しい?のも事実でした。第76回カンヌ映画祭の新進監督発掘部門の「批評家週間」にエントリーされたもので、一筋縄でいくようなホラー作品ではありませんでした。
 

ホラー映画らしくないポスター

 あるマンションで暮らす妊娠中の会社員スジンが、夜中に目を覚まします。すると、隣で寝ていた売れない俳優の夫ヒョンス(この設定がどこか可笑しい)が突然起き上がり、「誰かが入ってきた」と意味不明の言葉を発します。その後、彼は夜な夜な夢遊病者のごとく寝室を抜け出して、異常な行動を重ねていきます。
 病院に行って相談したり、薬を飲んだり、はたまたスジンの母の知り合いの巫女による祈祷までしてもらうのですが、全く回復しません。舞台を、二人が住むマンション内にほぼ限定して物語を進行してゆく演出が、鮮やかでした。
 

 その一方で、二人の住む部屋に掲げられている「二人一緒なんら何でも克服できる」というスローガンが、なんとも皮肉。夫の危機を乗り越えようとする二人の奮闘努力は、スローガン通りにならずに、スジンをとんでもない狂気へと追い詰めていきます。シリアスな心理サスペンスと、ユーモアが絶妙にブレンドされていて、なんだかヒッチコックの映画のような感じで楽しめました。この夫婦の日常生活の中にふわりふわりとながれ込んでくる恐怖。え?どうなるの?どうやって終わらせるの?と思いながらスクリーンを凝視していると、やや強引とはいえ見事な幕切れが用意されていました。
 生まれたばかりの赤ん坊とお風呂に立てこもるスジン。居間から不気味な夫の足音が近づき、お風呂のドアノブをガタガタ揺らす、というよくあるホラー映画の常套演出も、鮮度抜群でテンポも良く、新人監督ユ・ジェソンの次回作に期待したくなりました。

●レティシア書房ギャラリー案内
7/10(水)〜7/21(日)切り絵展「図鑑と地図」 後藤郁子作品展
7/24(水)〜8/4(日)「夏の本たち」croixille &レティシア 書房の古本市

⭐️入荷ご案内
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つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
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