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幕間 2 とある寒村にて
村の入り口に放置された荷車に座り、つまらなそうに足を振っていた少年は、遠くから歩いてくる人影を見て、とびきりの笑顔を咲かせた。
「あっ! にいちゃん達だ!」
「え?」
「ケネトにいちゃんとエメリねえちゃん?」
「ほんとだぁ!」
「にいちゃん! ねえちゃーん!」
子供たちは喚きながら走り寄っていく。その声につられ、大人たちもぞろぞろと集まってきた。
スージーもその中の一人だ。遠くで小さな影に纏わりつかれている若者たちの姿に、彼女は肩を竦めた。
「ったく……帰ってくるんなら連絡寄越しなさいっての。バカ息子め」
「いいじゃねえか、予告なしってのもよ」
矢筒を背負った髭の濃い男が隣に並ぶ。狩人のドルフ。エメリの父親である。
「お前さんは昔から口が悪くっていけねぇや。村のために命張って稼いでくれてる息子にバカはないんじゃないか? ケネトくんのお陰で色々助かってるだろ」
「ふん。嫁入り前の娘を連れて冒険者になるなんざ、あたしゃバカのすることだと思うけどね」
「ありゃうちの娘が勝手についてったんだ」
「うちの息子がバカだから、ついてってやらにゃと思ったんだろ」
「はぁ……」
ドルフは苦笑し、愛娘たちへ視線を向ける。
しばらく見ない内にまた大きくなった子供たちの影は、親の姿を認め、手を振った。お互い、遠くからでも分かるものだ。ドルフは振り返したが、スージーはくるりと背を向けてしまった。
「おいおい、ホントに怒ってんのか?」
「ああ、怒ってるよ」スージーは家の扉を開ける。「予告なしに帰ってくるバカ息子のせいで、夕飯の手間が増えちまったからね!」
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