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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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#ほろ酔い文学

須賀敦子さんのイタリア文学論を読む  第1回 中世詩論編

はじめに二〇二二年九月十七日から、一日一篇須賀敦子 というハッシュタグをつけて、僕は毎日…

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My Foolish Heart

時はあっという間に過ぎ去っていく。 二週間ほど前、出張先の北陸で僕は The Coast of Chicago…

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『時は老いをいそぐ』アントニオ・タブッキ

タブッキは時と空間のねじれを記憶を媒体にした文章を音楽的に建築するかのように記録してきた…

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絵画に閉じ込められた題名──稠密なキューブの集合

色彩──光を十分に受けた物体の反射光を僕たちは赤、青、緑の三種類を組み合わせて目のセンサ…

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周瑜と野ばらと焼き芋と

 午前9時。宿泊中のホテル前で僕はウォンさんを待っていた。あるクライアントとの事業計画を…

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幻影の書

著者 ポールオースター 訳者 柴田元幸 出版 新潮文庫 ポール・オースターは本書で読むのが…

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薪岡シスターズのとるにたらない愛すべき日常

細雪 著者 谷崎潤一郎 初版 1936年 本投稿はネタバレ、グロを含みます。 ネタバレや表現が嫌な方は本投稿を飛ばしてください はじめに本投稿はネタバレ、グロを含みます。 ネタバレや表現が嫌な方は本投稿を飛ばしてください。 有名なこの一文で始まる谷崎潤一郎の『細雪』を読んでみた。 こいさんと呼ばれる妙子 雪子 幸子 これから始まる薪岡シスターズの名前である。 まず、驚いたのは、この流れるような美しい一文で3人の登場人物と様子が手にとるようにわかることだ。 谷崎潤一郎作

偶然と必然、偶然と運命 ① ヤナーチェクの音楽の運命

はじめに読書や映画鑑賞をしていると、心に残る作品の特徴として、偶然と必然あるいは運命、そ…

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インド夜想曲──旅する読書

タブッキの本は日本の気候より、乾いた暑い国で読みたい。 時々、何もかも放り出して、遠い国…

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太陽肛門

著者 ジョルジュ・バタイユ 訳 酒井 健 出版 景文館書店 久しぶりにメチャクチャに感性に…

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シブヤで目覚めて

著者 アンナ・ツィマ 訳 阿部賢一/須藤輝彦 出版 河出書房新社 2021/04/30初版 2021/06/30 …

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痴人の愛

著者 谷崎潤一郎 出版 新潮文庫 再読していると、他人事に思えなかった。 ナオミが妻のシモ…

9

征服されざるもの(ジゴロとジゴレット)

著者 サマセット・モーム 訳 金原 瑞人 モームとの出会い僕にとって、モーム(1874‐1965)…

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裏切られた遺言

著者 ミラン・クンデラ 訳 西永 良成 出版 集英社 1994/9/20 第一刷発行 本書は、訳者あとがきによると、クンデラが長編小説『不滅』を刊行したのちに「ランフィニ」誌にほぼ毎号エッセイをフランス語にて書いていたものを一冊にまとめたものである。 カフカとヤナーチェクを軸にクンデラが芸術批評を展開させていく。 ストラヴィンスキーの祖国への想いを音楽から見出したあたりは何となくクンデラ自身を重ねてしまう。 感傷的な人間ほど無情な者はまたとないからだ。思い出してもらいた