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散文とか短編小説とか

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僕の回りくどい手紙のような散文
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#ショートショート

雨が降り

 つめたくもあたたかくもない雨がそぼふる中、ふいに、いつも通る苔の生えかけた階段に目をと…

卍丸の本棚
3か月前
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掌握小説 惣菜

惣菜コーナーのアルバイトが休みの日だった。アルバイトは多分十五年ぶりだろう。大学を出て、…

卍丸の本棚
4か月前
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蜘蛛の庭 #シロクマ文芸部

珈琲と、突き抜けた青に舞う落ち葉と、揺れる秋桜。 黒ずんだ褐色の滲み、遠くの瓦礫、聴こえ…

卍丸の本棚
7か月前
12

絵葉書 #シロクマ文芸部

 読む時間がなかったわけでも、気にしないようにしていたわけでもなかった。磨きあげたように…

卍丸の本棚
9か月前
12

消費し合う

九月も半ばを過ぎ、いい加減、《秋》を感じはじめたかった。30歳を目前にすると、さすがに両…

卍丸の本棚
9か月前
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朝には消える薄い霧のように #シロクマ文芸部

秋が好きなのか、泣きたいのか、笑いたいのか、怒りたいのか、寂しいのか……。よくわからない…

卍丸の本棚
9か月前
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『秘密、名を呼ぶこと』を載せて頂きました

我妻さんの素敵なwebサイト(詩)的ライナーノーツに久しぶりのエログロショートショートを載せて頂きました。 ありがとうございます。 シマノフスキを聴きながら読んで頂けたら嬉しいです。

沈丁花の季節

この物語はフィクションです 僕は激流のような数年、あるいはなるようになっている流れ、に身…

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逗子マリーナの女

愛に区別はなく、また、愛は無限であるが人間の奢りによって有限と錯覚されている、そのように…

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『クリムトの接吻 断章』を書きました。

バレンタインは処刑された聖ウァレンティヌス(カトリックでは第二バチカン公会議で祝祭日を削…

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とりとめのないこと2022/10/30-11/05

明後日の11/08は皆既月食らしい。 満月になると月の重力によって、妻も僕もデネブに行くロケッ…

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落下する世界線

よく晴れた日曜の朝。 B29が迫撃砲によって撃破され、パイロットの男はパラシュートで宙を舞う…

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彼岸花

僕が宮本さん一家の事件を知ったのは日曜のことだった。 前日、宮本さんのお宅のテラス修繕工…

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ケーキ

あの女ほど思い出したくない女はいなかった。 俺のことを始終馬鹿にしてきた女。 学生の頃はまだ良かった。 始終良いことか父親の自慢話。 それでも見てくれの良かったあの女のドラマな作り話にずっと付き合った。 憂いを称えながら、時には涙で言葉を詰まらせながら俺に苦労話や悲劇話をする。 俺の誕生日にはルイジャド、エシェゾーのグランクリュを持ち込んで南青山のフランス料理店のテラスで食事をした。 「あたしにとって、ワインは命なの」 そう言いながらシャトー・ラギヨールのソムリエナイフ