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レーザーディスクに宿る魅力 : プレミアムビデオディスクの歴史


今回の記事はこちらのPOSTの続編として制作させて頂きました。どうぞ、よろしくお願い致します。

以下「ブックスチャンネルマガジン」に収録させて頂きました。本・レコード他のコレクター商品など興味のある方はご登録頂ければ幸いです。

「ブックスチャンネルマガジン」

はじめに

1978年に登場したレーザーディスク(LD)は、CDやDVD、ブルーレイディスクに先駆けた、家庭用の最初の光学式ビデオディスクでした。当時の一般的なビデオテープに比べて格段に優れた画質と音質を誇り、本格的な家庭シアター体験を実現しました。しかし、高価格と記録できない点から大衆的な普及には至らず、マニア受けするに留まりました。今でも根強い人気を誇るレーザーディスクの魅力に迫ってみましょう。

レーザーディスクの黎明期

レーザーディスクの前身であるディスコビジョン(DiscoVision)は、1978年にMCAが米国で市販化しました。直径30cmの大型光学ディスクに、アナログ映像信号とデジタル/アナログ音声を記録できる当時としては革新的な製品でした。

しかし、高価な料金体系と録画機能の無さから、当初は身近な家庭向け製品とはいえませんでした。それでも、ビデオテープを上回る優れた画質と音質に魅了された映画ファンやオーディオビデオ愛好家から熱い支持を受けることになります。

映画ファン垂涎のハイクオリティ体験

VHSテープが一般に広く普及していった一方、レーザーディスクはオーディオビデオ愛好家の狭い範疇に留まりました。しかし、その恩恵に与れた人々は心行くまで高画質の映画鑑賞を満喫できたのです。

VHSの240本よりもはるかに多い、最大440本の解像度を実現。今でいうHD画質に迫る精細な映像を堪能できました。さらに、デジタル方式のCDと同等のリニアPCMトラックを持ち、高音質な音響空間を醸し出せました。まさに当時の最先端ハイエンド機器と呼ぶにふさわしい出来映えでした。

その上、アナログビデオとデジタル音声が分離した独立トラックになっていたため、音声トラックにはさまざまな付加価値を盛り込めました。映画のコメンタリーを収録したり、DVDのディレクターズカット版に相当する本編以外の映像を加えることも可能になったのです。こうした高い自由度から、いち早く"コレクターズ/スペシャルエディション"の概念を作り上げた功労も評価されています。

こうして、レーザーディスクは家庭でありながら本格的な映画体験を可能にした、文字通りの"プレミアムビデオディスク"だったのです。

操作性の高さも人気の理由

レーザーディスクの魅力は、設計や操作性の良さにも現れています。

希少なCAV(一定角速度)方式のディスクには、簡単な操作で任意のフレーム位置に移動できる機能がありました。スロー再生やリバース再生、フレーム単位のスチル再生など、映画を自在に操れるメリットがあったのです。

再生時の早戻し/早送りで発生する「ノイズ」の問題もありませんでした。瞬時に指定の場所に移動できる利便性は今でも革新的です。

さらに、ディスクの片面で最大60分と現実的な長さを確保しつつ、両面に収録が可能だったため、ほとんどの作品をシームレスに収録可能でした。

このように、ハイエンド指向の機能が満載されていたことも、レーザーディスクを愛好家受けする理由になりました。

絶版の名作も復活

当時としては先進的で規格外の製品だったレーザーディスクには、他の媒体では見られない魅力の作品が収録されていました。

動員不振で製作中止となった映画の完全版や、検閲に合っていた社会派作品の劇場未公開カットなど、市場で絶版扱いの幻の映像が多数収録されています。

一例として、80年代に発売された「市民ケーン」のレーザーディスク版は、劇場未公開シーンはもちろん、スタッフインタビューやドキュメンタリー映像まで収録されていました。こうした充実振りから、最も早い時期の"スペシャルエディション"商品と高く評価されています。

映画業界への影響も大きかった

レーザーディスクは、1980年代後半以降、映画ソフトの付加価値化において先駆的な役割も担いました。

音声解説トラックなどの新機能は、ハイエンドユーザーに受け入れられ、レーザーディスク業界の利益にもなりました。そこから、VHS、LD両規格への展開が進み、現在のDVDやブルーレイの高付加価値ソフトに通じる基盤が生まれました。

また、LD版の製作を通して、技術力の高いディスクオーサリング技術者が育っていきました。その人材が後にDVDやブルーレイに移行する際の原動力になったと言えます。

この意味で、レーザーディスクが家庭用ディスクメディア黎明期の重要な位置を占めていたことは間違いありません。

衰退の理由と限界

一方で、レーザーディスクにはいくつかの大きな欠点がありました。それが普及を阻む最大の要因となってしまったのです。

何よりも指摘されるべきは、メディア価格と再生機器の高価格帯です。当時のビデオテープよりも断然に高額で手が出せない一般消費者が大半を占めていました。

大きなディスク自体も携帯性に乏しく、正しい取り扱いを心がける必要がありました。わずかな傷でノイズが発生したり、劣化すると再生できなくなる可能性もあり、デリケートでした。

さらに、録画機能が無かったため、テレビ番組のタイムシフトが不可能でした。仮に録画機能が付加されていれば、もっと一般家庭に普及したかもしれません。

そのほか、表示可能な画面アスペクト比が4:3に限定されていたのも技術的制約の一つでした。映画を商品化する際に多少の無理が生じていました。

こうしたさまざまな要因が重なり、レーザーディスクは究極の家庭用映像ソフトとしては及ばず、80年代後半にはDVDやデジタル放送の検討が本格化していきました。

それでも誇れるのは、CDやDVDに先駆ける存在だった点です。光ディスクの技術的普及に大きく寄与し、また映画コンテンツの付加価値化を促進するなど、革新的な役割を担いました。

レーザーディスクに残された希少価値

長らく愛好家の間で親しまれてきたレーザーディスクですが、2000年以降はついにDVDに全面的に置き換えられていきます。 それでも、まだ国内外に根強いファンが残っているのは事実です。

DVDが普及したころには、依然として一般発売されていなかったり、未収録の特典映像が存在するレーザー ディスク専用のタイトルがいくつか残されていたためです。また、ディスク生産終了に伴う希少価値の高まりもあり、根強いマニアが細々とコレクターを続けてきました。

今もなお、有名作品のレーザーディスク版が中古で高値で取引されるケースがあります。ディスクそのものの魅力もさることながら、映画を物理媒体で手に取れる価値がコレクターの心をくすぐり続けているのかもしれません。

一般向け商品ではなくなったレーザーディスクですが、昔からのマニアはもちろん、次のディスク世代を担う若者コレクターにも未知なる魅力を発信し続けています。今や"レトロ"の価値を備えた、映画の歴史に残る逸品なのです。

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