衝動買い書店①山陽堂書店(東京表参道)

 大型書店よりも街の書店が好きだけど、一番はやはりここだね。

 一階は主に雑誌と旅行ガイド、絵本、新書など。階段を上りつつ横を見ると、アート及びデザイン系の大判。中二階は文庫と単行本。小説だけではなく哲学書やエッセイ、詩集など。二階にはギャラリーがある。品揃えはそこまで凝っているわけではない。特に文庫に関しては王道のロングセラーで固めている印象。いつ訪れても大きな変化は感じない。若い人よりは中高年向けの選書かもしれない。

 ただ単行本に関しては侮れない。この規模のお店でそれを置くの、という意外性が抜群。むしろ斬新。ここに来ると高確率で単行本を衝動買いしてしまう。最近だと「村上春樹と私」(ジェイ・ルービン)「13坪の本屋の奇跡」(木村元彦)を購入した。どちらも大型書店では、まず目に留まらない。そもそも置いていないかもしれないし、在庫ありでもすぐには見つからない。アマゾンでオススメされることも無いだろう。小さな規模で人の少ない街の書店だからこそスピーディーに出会えるのだ。

 あといい意味での静けさ。大型書店は大概商業施設のテナントだから雑音の宝庫だし、そうじゃなくても人が多いとどこか空気が忙しない。棚に集中し切れない。図書館みたいに静かすぎても逆に落ち着かないけど、ここは大通りに面しているから街の生活音が絶妙のBGMになる。これは表参道という、ある意味日本で最もオシャレな立地のおかげだろう。本屋はその街の顔であり象徴なのだ。

 散歩や他の買い物の延長線上でふわっと立ち寄れるし、ただ中を歩くだけでもエレガントで知的な自分に浸れて気分が高まる(笑)それで気が向いたら興味を惹かれた雑誌や話題の新刊、前から気になっていた古典の文庫なんかを一冊買ってみればいい。ここは欲しい本を買う場所というよりも、油断も隙も無い大都会の真ん中に設けられたちょっとした心の安息所なのだ。座れるスペースこそ無いけどカジュアルに気分転換ができて、ついでに本も買えると。

 これからのリアル書店はこういう「用は無いけど気持ちが落ち着くから、近くに行った時は何となく足を運んでしまう」「仕事や育児で疲れたからちょっと立ち読みでもしてリラックスしたい」という人たちが気軽に遊びに来られる場所であって欲しい。まずそこで信頼を築けば、利益はその後からきっとついてくる。長年生き残っている山陽堂書店は、まさにそのお手本のようなお店だと思う。感謝。

 


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