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勝手にマイベスト 宮部みゆき編

感想文の下書きが尽きてしまったと昨日情けないつぶやきをあげましたが、やっぱり一応本の虫なので本がらみのなにか違う切り口の記事を書けないものかと考えまして。
せっかくハマった作家さんを続けて読む癖があるので、そこを活用してたくさん読んだ作家さんの作品の中から、3つという縛りをつけてお気に入りを選んでみようかと思います。
本当に私の独断と偏見で選ぶ3冊ですので、ド直球にメジャーなのが入ることもあれば、小品だったりと色々になりますが、お付き合いいただければ幸いです。
こっちよりこっちを読んだことを書いた方が通っぽいとかかっこいいとかそういうの抜きで、ガチで何度も読み返したお気に入りだけピックアップするので、超主観的なラインナップになりますが💦

さて。
お1人目をどうしようか迷いましたが、王道でいこうと思います。
宮部みゆきさん!
最初に何を読んだかもう覚えてないぐらい、ほとんど読んでます。ただファンタジー系は読んでいないものもありますし、全部読んだとは言えないんですが。どれもいいので、3つとなるとめっちゃくちゃ悩むんですが、なんとか絞ってみようと思います。

まずは名刺がわりの10冊にも入れている『火車』。

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

Amazon商品ページより

一気読み必至のこの1冊。緻密に彰子の足取りを追っていくのですが、読者をぐいぐいと引っ張っていく筆致は圧巻です。掴めるようで掴めない、彰子の実像。こんなにも完全に人1人消えることができるのか、彼女は実在していたのか?そしてこれは追いかけていい謎なのか。そんなことを考えながら、本間と共に彰子の影を追いかけていく、そんな感覚になってきます。
何がすごいって、余計なものも足りないものも無いんですよ。読み終わった時の充足感がすごい。これだけのボリュームがある作品だと、ダレるところがありそうなものですが、無いです!全然ダレない!すごすぎる!(語彙力低下💦)
名刺がわりの10冊の時にも書きましたが、普通ならエピローグでなんか書きたくなりそうなものなんですが、なんとも鮮やかな潔いラストが用意されていて、読み終わった直後は「すごいものを読んだ」という感覚になります。
長編ではありますが、結構な回数読み返してまして、それでも毎回ちゃんと面白いんですよねえ。いやあ、すごいしか言えない。
宮部みゆき作品の中からベストを選ぶとしたら外せない1冊です。

そして悩みに悩みましたが、次はこちらの短編集。

ある雨の日、殺人事件が起きる。遺体の手には38と刻まれて、心臓を刺されていた。その後も同じ手口の事件が続く。

そんな折、下町の小さな古本屋「田辺書店」に安達明子が父親が書いた小説を持って訪れる。事件の内容が父の書いた未完の小説「淋しい狩人」小説の内容に酷似していたので、父の旧友であった店主の岩永幸吉(イワさん)に相談にきたのだった。その手紙は、その小説を心酔し物語の結末をよく理解している自分こそが小説に描かれていることを現実の世界で表現するという内容だった。

幸吉は亡き息子の友人の刑事である樺野俊明に小説と手紙の存在を伝える。すると捜査は新たな局面を迎えることとなるのだった。

Wikipediaより

私は見てないんですが、ドラマ化もされたようですね。古書店を舞台にした連作短編集です。
上で引用したあらすじは、表題作の『淋しい狩人』のものです。店主のイワさんと孫の稔のコンビがいい味を出しているこの作品ですが、大人の弱さ、醜さ、臆病さが、そんなもの見せないでよ、と言いたくなるほどぐりっとえぐって書かれているところが好きです。どの物語もやりきれなさが漂います。
この中では『うそつき喇叭』と『歪んだ鏡』が好きなんですが、『うそつき喇叭』はもうもうもう!(言葉にならない)。こんな醜い大人がいていいものかと本当に怒りを覚える展開です。イワさんがいてくれてよかった、イワさんがいなかったらどうなっていただろう、そう思うと同時に、稔が少年らしい怒りをぶつけてくれるので、読後感はそれほど悪くありません。
『歪んだ鏡』はミステリというよりは、1人の女性の心の動きを追っていくような物語なんですが、こちらは爽やかな読後感。1人の女性が生き方を一冊の本から考えていくのですが、その本が山本周五郎の『赤ひげ診療譚』というのも山本周五郎ファンとしては嬉しいところ。
愚直に、その環境を受け入れながらたくましく生きる市井の女に触発される彼女が、凛と背筋を伸ばす姿が美しいです。
途中、稔とイワさんがギクシャクする展開もあったりしますが、稔の少年らしい一本気なところやイワさんがそこに正面からぶつかってやるところや、年の功を見せるところなんかがすごくいいんですよねえ。短編集で読みやすいということもありますが、こちらも何度も読んだ1冊です。宮部みゆきさんの、うわあぁと言いたくなるような人の嫌な部分を描く上手さを堪能できます!

そしてこれまた迷いに迷いましたが、これにします!

新作3篇をひっさげて、茂七親分が帰ってきた! 茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。
謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。鰹、白魚、柿、菜の花など、季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。

Amazon商品ページより

『本所深川ふしぎ草子』から続く、回向院の茂七親分が活躍する時代もの連作短編集なんですが、謎の稲荷寿司屋台で出てくる食べ物がどれも美味しそうでそこも楽しめます。
この屋台の親父の出す料理と親父との会話から、茂七親分が事件の糸口を掴むのですが、やりきれないようなお話もあり、切なくなったりもします。
私は新潮文庫で最初持っていたんですが、シリーズ化するかと思いきやそうならず……。屋台の親父の正体もわからずじまいです。その後こちらのPHP出版に移って未刊行の2篇を加えてこの『完本初ものがたり』となりました。こちらでも屋台の親父の謎は解決されないんですが、どうやら『きたきた捕物帖』シリーズがこの『初ものがたり』から続いていったお話のようなので、もしかしたら屋台の親父の正体もわかるのかな?と期待しています。
時代物の名手でもある宮部みゆきさんですが、この『初ものがたり』はその魅力がギュギュッと詰まっています。市井の人たちの生き生きとした暮らし、そしてその反面、まだまだ生きることが困難な人たちもいるし、命がまだ今よりも軽かった時代だということも感じさせられ。
そしてここでもやはり宮部さんの人の汚さをさらりと書きながら確実にこちらの胸をえぐってくる書き様もあり。これもまた何度も何度も繰り返し読んだ本です。

死ぬほど悩んだ3選ですが、ほんとはもっと書きたい(笑)。
初期の頃の長編もハズレなしだし、もちろん『模倣犯』や続編の『楽園』も面白いですし、杉村三郎シリーズもどれもゴリっと日常の隣にある悪意が描かれていて薄寒くなるような思いができますし、『ぼんくら』と『ひぐらし』もめっちゃおすすめしたいです。『孤宿の人』泣けます。
『初ものがたり』にするか霊験お初捕物帖の『天狗風』にするかは最後まで迷いました。『天狗風』、女のどろどろしたところがこれでもかと書いてあって最高です(どういう趣味だ)。霊験お初シリーズ、再会してくれないかしら。
なんなら読んだやつ全部おすすめしたいぐらいなんですが(笑)、自分で3つと縛りを入れたので涙を飲んで3冊。
いや、はみでとるやろ、というツッコミはなしでお願いします😁
書いてたら楽しかったので、これ、ちょっと続けてみようと思いますので、よろしくお願いします!

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