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クリスティ 短編集・戯曲3選

さて、以前何かの記事でハヤカワでアガサ・クリスティ全巻揃えたと書きましたが、その中でもちょっとマイナー系といいますか、あんまり取り上げられることがないんだけど、これむっちゃ面白いよ、っていうやつを取り上げたくなってしまいました。
なので今回のはポワロやミス・マープルは意図的に外しております。

それではまず1冊目はこちら!

街中で知り合い、親しくなってゆく金持ちのオールドミスと青年レナード。ある夜そのオールドミスが撲殺された。状況証拠は容疑者の青年に不利なものばかり。金が目当てだとすれば動機も充分。しかも、彼を救えるはずの妻が、あろうことか夫の犯行を裏付ける証言を…展開の見事さと驚愕の結末。法廷劇の代表作。

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短編集だけにしても良かったんですが、どうしてもこれを入れたくて戯曲込みにしてしまいました💦
この作品は元は短編ですので、短編集にも入っているんですが、やはりこれは戯曲の方で読んでいただきたい作品なので戯曲の方を。
ちなみに戯曲形式で書かれたものが苦手という方は、多少の違いはありますが短編の方も十分面白いのでこちらでどうぞ。

どんでん返しもので、結末の鮮やかさが素晴らしいこの戯曲。あー、ネタバレせずに紹介するのが難しい!レナードの妻、ローマインがとにかくかっこいいんですよね。クリスティの作品は、第一次大戦から第二次大戦の間の時代ですので、ローマインがドイツ出身というイギリスではちょっと微妙な立場、というのを上手く使っています。女心の機微というか、ローマインの献身と裏切りへの激情がただ切ない。
そして幕切れの鮮やかさ!
ビリー・ワイルダーの映画『情婦』の原作で、映画もすっごくいいのでオススメです。
なんたってマレーネ・ディートリッヒが素晴らしい!あのキッとした顔がローマインって感じなんですよねえ(映画ではクリスチーネという名前になってます)。
このまま書くとネタバレ書きそうなので、この辺にしときます💦

お次はこちらです!

冒険好きな若夫婦のトミーとタペンスが、国際探偵事務所を開設した。平和で退屈な日々は、続々と持ちこまれる事件でたちまち慌ただしい毎日へと一変する。だが、二人は持ち前の旺盛な好奇心と若さとで、猟犬のごとく事件を追いかける!おしどり探偵が繰りひろげるスリリングな冒険を描いた短篇集。新訳で登場。

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『秘密機関』や『NかMか』で活躍するトミー&タペンスが活躍するこの短編。
この夫婦のお茶目具合やドタバタも楽しいんですが、探偵事務所をやるにあたって、彼らが参考にするのは推理小説に出てくる名探偵たちなんです。
各話が当時有名だった名探偵のパロディになっていて、シャーロック・ホームズはもちろん、ブラウン神父やクロフツのフレンチ警部、そして自身の作品、巨大な犯罪組織を追うポワロを描いた『ビッグ4』のパロディもあります。
元ネタを知らなくても楽しめますし(私も知らないものの方が多かった)、知っているものはより面白いです。
推理の方法ももちろん小説を参考にするんですが、とりあえず形から入ろうとする2人がめっちゃくちゃ面白い。形から入ろうとして結果それが不利に働くというか、上手くいくわけなかったりするところがもうなんともお茶目で楽しいんです。ノリはもはや夫婦漫才(笑)。
扱う事件はそれなりに深刻だったりバイオレンスだったりするんですけど、コージーミステリ感覚で読めるので、気楽な面白ミステリが読みたい気分の時にオススメです!

そして最後はこちら。

「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を」こんな奇妙な新聞広告に誘われて、依頼人が次々とパイン氏の事務所を訪れる。夫の浮気に悩む人妻、人生に退屈した退役軍人、平凡な生活を送るサラリーマン、大金を使いたがる大金持ちの婦人―人々の悩みに答える、パイン氏の奇想天外なサービスとは。

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こちらも気楽に楽しく読める1冊。後半は殺人事件など不穏の事件もありますが、基本的にはコージーミステリの類ですね。
夫が若い女にうつつを抜かしているというご婦人の相談を、予想外の方法で解決したり、スリルのない日常に退屈している退役軍人と、ロマンス小説のような出会いに憧れている女性の相談をいっぺんに解決したりとなかなか敏腕なパーカー・パイン氏。彼が駆使するのは統計データというところもまた面白い。
どう解決するのかめっちゃ書きたいところですが、さすがにネタバレが過ぎるのでやめておきますが、パーカー・パイン氏は人脈も広く、推理小説作家に助力を求めたり、とんでもない美女と美男子を雇っていたりしているということぐらいは書いても大丈夫かな?相談者の悩みを解決するために、彼ら彼女らに一肌脱いでもらいます。
いやあ、こんな解決方法があるとは、というか、そんなことを体験させてくれるんならパーカー・パイン氏の事務所を訪ねてみたくなります!

ちょっとはみだし番外編。
『リスタデール卿の謎』という短編集に収録されている『白鳥の歌』という短編が大好きなのでこれだけ紹介させて欲しいです!

マネージャーのコウアンはオペラ歌手のポーラ・ナツォルコッフにラストンベリー夫人という女性がラストンベリーにあるラストンベリー城の個人劇場で『蝶々夫人』の公演をしてほしいと依頼していたと伝える。宣伝になるからと公演を勧めるコウエン。「ラストンベリー」の名を聞いたナツォルコッフは演目を『トスカ』にすることを条件に依頼を受諾する。

Wikipediaより

もちろんこの短編集も面白いんですが、その中でも暗く美しいこの短編はクリスティの短編の中でも1番好きかもしれません。それなら短編集ごと入れろよという話ですが、短編集という1冊でみた時には上に挙げた物の方が好きなので外してしまいました💦
スカルピオ役として呼ばれたベテランのバリトン歌手、彼が語るかつて出会った才能の片鱗は見えるが大成しそうにないと思った若く可憐なソプラノ歌手の思い出、それを聞くナツォルコッフはどこかいつもと様子が違う。そして『トスカ』の幕が開き、劇中の惨劇が現実となるのです。
全体を覆う暗い不穏な空気、そしてナツォルコッフが歌う『歌に生き、愛に生き』。
『トスカ』を知らないと、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、別に全幕何かで見ないといけないってことはなくて、あらすじ知ってたら十分わかる内容になってます。
これも戯曲にしてほしかったなあ。それぐらいドラマチックで美しい短編なんですよねえ。

といいうわけで、ちょっとはみ出してしまいましたが💦とっつきやすいクリスティの短編集・戯曲3選でした!

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