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僕のピアノコンチェルト

1人の天才少年の成長と、それを暖かく見守る人達の物語、『僕のピアノコンチェルト』。

ピアノを始め様々な才能を持つ天才少年ヴィトス。両親の期待は日増しに大きくなり、飛び級で入学した高校では浮いてしまい天才ゆえの孤独を感じています。頭脳は天才的でも心はまだまだ幼い少年のままで、その溝が埋められず苦しんでいるヴィトスが唯一子供のままでいられるのがおじいちゃんのもとだけ。おじいちゃんと共に過ごし、ヴィトスが少しずつ成長するにつれ、自分の本当にしたいことを見つけていく姿を描いた映画です。
おじいちゃん役をスイスの名優ブルーノ・ガンツ、ヴィトス役を「若い人のためのフランツ・リストコンクール」で優勝した神童テオ・ゲオルギューが演じているんですが、この2人が素晴らしい!
ヴィトスの才能にとらわれずに孫として普通にかわいがり温かく見守るおじいちゃん。息子夫婦に意見するわけではないけど、ヴィトスが両親の教育方針に息苦しくなると必ず手を広げて待っていてくれる最高のおじいちゃんです。特別なことをしてやるわけではないけれど、いつもそこにいてくれるという安心感をすごく与えてくれています。
愛情に溢れた温かい眼差し、若い頃夢見たパイロットへの憧れを語る少しはしゃいだ姿、ヴィトスの秘密を受け入れ守る優しさ。画面にガンツがいるだけで温かな愛情が流れてくるような感覚になります。
ゲオルギューの吹き替え無しのピアノの演奏シーンの迫力も凄いのですが、少年らしい両親への苛立ちや失恋の甘酸っぱさ、天才ゆえの孤独、大人達には秘密で自分の道を選んでいく成長っぷりなどなど、役者としても素晴らしい演技を見せてくれています。
おじいちゃんにもヴィトスにも両親にも様々な出来事が起こるんですが、無理に劇的な展開にはせずに、ヴィトスの視線を通すように丁寧に地道に描かれているのでじわじわと心に響いてきます。
おじいちゃんの夢を叶え、父親の窮地を救い、母親の望む道が実は自分も望んでいた道だったと気付いたヴィトスは文字通り大きく飛翔するんですが…このシーンは痛快です。
泣いたり大感動したりはしないけど、見終わったあとに微笑みたくなるようなじんわりと温かい映画でした。

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