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秋津温泉

吉田喜重監督、岡田茉莉子主演のメロドラマ、『秋津温泉』。

ちなみにこの映画、岡田茉莉子の映画出演100本の記念作品で、企画、衣装を岡田茉莉子本人が担当しています。それででしょうか、吉田作品ですがわかりやすく、ストーリーもしっかりあります。それでも必要最小限しか語らないあたり、吉田監督らしいといえばらしいですが。
あらすじは、

太平洋戦争中、生きる気力を無くした一人の青年、河本周作は死に場所を求めてふらりと秋津温泉にくる。結核に冒されている河本は、温泉で倒れたところを、温泉宿の女将の娘、新子の介護によって元気を取り戻す。そして、終戦。玉音放送を聞いて涙する純粋な新子に心打たれた河本は、やがて生きる力をとりもどしていく。互いに心惹かれる二人だったが、女将が河本を追い出してしまったために、河本は街に戻る。数年後、秋津に再び現れた河本だが、酒におぼれ、女にだらしない、堕落してしまった河本に、新子はいらだちを覚える。そこで、河本が結婚したことを知った新子は、苦しい河本への思いを捨てきれないまま、河本を送り出す。その後、東京に行くことになった河本は再び秋津を訪れる。一途なまでに河本を思う新子、そして、優柔不断でだらしない河本は再び都会へ。さらに四たび秋津を訪れる河本、そのときには旅館を廃業した新子だったが、河本は新子との肉体の情欲にだけ溺れる。新子は、河本にいっしょに死んでくれと言う。そして最後、河本と別れたあとに、思いつめた新子は手首を剃刀で切るのだった。

Wikipediaより

といったような感じ。
とにかくこれまた岡田茉莉子が美しい!!初々しい少女から情念と虚無を抱えた女から、とても上手く美しく本当に素晴らしいです。哀しくて美しくて。吉田監督は本当に女優をエキセントリックに美しく撮るのが上手い!と改めて思いました。
ただ岡田茉莉子の存在感に比べるとやや相手役の長戸裕之があっさりすぎるきらいはあったかもしれません。軽薄で男の嫌らしさがすごくよく出ていたんですが、そこまで思うほどか?死ぬほどか?という感じがしなくもないという…。
あまり重くなりすぎるのもどうかと思いますが、もうちょっと彼にも暗い空虚さを持ってほしかったようにも思います。
待つことが無駄だとわかっていながら待つ女。男の気まぐれ次第の逢瀬。それでも17年という歳月を一人の男を思い続ける新子。疲れ果てていく彼女が暗い情念を宿らせていく様がとても切なくて悲しいです。
粗筋の類似から成瀬監督の『浮雲』とよく比較されますが、撮り方というか映画というものの捉え方が違うお二方なので比べるのも…という気はしますが、でも私個人としては『浮雲』の方が好きです。
なんというかやはり映画として据わりがいいし、腑に落ちる感じです。あと高峰秀子と岡田茉莉子は甲乙つけ難い熱演ですが、相手役は森雅之がもの凄い名演を見せているので、そのへんちょっと長戸裕之は物足りないかも。
これを言ってしまうと身も蓋も無いんですが、どうも吉田監督っぽさがこういう文芸メロドラマにマッチしない気がしました。
周作のダメさ加減だとか、新子の真剣なくせにどうにも滑稽な所だとか倦んだ感じだとか、とてもリアルに人間くさいんですが、どうもその人間くささが吉田監督のシャープさだとかスタイリッシュさと喧嘩するというか。
そういう人間くささやストーリーを削ぎ落しながらも感じさせる、あるいは極端さやエキセントリックさを取り出して本質を語ろうとするのが吉田監督ではないかと思っているので(←違うかも……)、リアリティに逆に違和感を感じるような……。
なんかまとまらない~。
難しいです、吉田作品。

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