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いのっちの電話のすごさ

母親が目の前で飛び降り自殺をしたという20代の女性。
自分も首をつって死のうとして、いのっちの電話にかけてきた。この女性への対応がすごい。

死んだお母さんに会いにいく、だから自殺するという女性には、地声ではなく囁き声を出して「お母さんよ」とお母さんの演技をしました。その子は「お母さんのところに行くね」と言うので「あなた馬鹿じゃないの、お母さんはずっと横にいるのに、何で気付いてくれないの? お母さんのところってどこにいくつもり? あなたが私の存在に気づけば済む話なのに」とささやきました。彼女は信じているのか信じていないのかわかりませんが、泣き出して、「ごめん、わかった。お母さん家に帰るね」と言いました。電話では顔が見えないためにこのような演技が可能になります。それがいいのか悪いのかはわかりませんが、僕は自死で死んだ家族のフリをすることが時々あります。それは憑依というよりも、治療のための演劇だと思ってます。

すごい。
こんなこと、どうやったら思いつくんだろう。
決して悪ふざけではなく、坂口さんは本気でやって、それがどんなふうにかは分からないけれど電話の彼女に伝わり、自殺を思いとどまらせる。

その後、彼女はどうなったのかというと。

1ヶ月後、坂口さんのパステル画に出会う。それまでずっと死ぬことを考えていたのに、そのパステル画を欲しい気持ちのほうが上になった。そしてとうとう職場復帰して、ボーナスでパステル画を購入したそうだ。

坂口さん、おもしろい人だなぁ、と思う。
すごい人だなぁ、とも思う。
ちょっと危うさもあるのかなぁ、なんて心配も……。
でも、この本を読む限りでは、きっと大丈夫なんだろう。


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