依存症の人の言動を褒めることについて
依存症の患者さんから新たな考えかたや行動について聞けると胸を打たれ、素直に「それは素晴らしいですね」という言葉が出る。
しかし、「やめていること」自体を褒めることはあまりない。
「やめている=素晴らしい。スリップ=素晴らしくない」ではないから。
依存症からの回復とは、ただ単に「やめること」ではなく、新たな考え方や価値観、行動を身につけること。
たとえば、
「家族から信じてもらえないことに腹が立って、いっそ飲もう(やろう)としたけど、それって単なる言い訳だと気づいたんで……」
みたいな話が聞けたら、「素晴らしい!」と思う。これも「飲まなかったこと」に対してではなく、その気づきに対してだ。
もちろん、「やめている」ことをまったく褒めないわけではない。特に、回復に取り組み始めた時期には「褒める」応援が必要なことも多い。
それから、自分の中に芽生えた良い変化をうまく言葉にできない人たちもいる。彼らは、いろいろな想いや気持ちをひっくるめて「やめてます」と語る。こういう人たちには、いったん「すごいですね」と褒める。そして、「欲求はなかったか」「どうやってやりすごしたのか」と尋ねることで、彼らの中に隠れている言葉を掘り起こす。
「欲求は?」
「少しありました」
「どうやってやりすごしたんです?」
「飯食いました(笑)」
「それでおさまった?」
「はい」
「ということは、空腹が危なくて、逆に満腹が防御策になりそうですね」
「そうですね」
「それ、素晴らしい発見ですね!」
毎回そんなにうまくいくわけでもないが、大切なのは「この病院にまた来よう」と思ってもらうこと。
そのためにできることは、きっとまだまだたくさんある。
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