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【100分de名著を語ろう】2021年を振り返る

こんにちは。

これからの「100分de名著を語ろう」ルームは、以下の通り開催していく予定です。

12月16日(木)『資本論』第2回放送分について
12月23日(木)2021年放送分の「ベスト」回を決めよう
12月30日(木)お休み
01月06日(木)100分deパンデミック論(1月3日放送分)について
01月13日(木)~ 『金子みすゞ詩集』について

そこで今回のnoteでは、23日の回に備えて、2021年に放送された回のリストをご用意いたしました。16日の回でも掲示いたしますので、ご参照の上、各位の「ベスト」を決めるご参考となさってくださいませ。

なお、各月について、テキストへのコメント(読書メーターへの投稿当時のもの)を付しておきました。お目汚しとなったかと思いますが、ご参考になるようでしたら幸いです。

【01月度】マルクス『資本論』(斎藤幸平)


これは「圧倒的」な本だ。斎藤さんはもはや、マルクスの研究者であるだけではなく、一人の自律的な思想家として在るのだと思う。生産や商品、疎外、労働といった、いわば「日常語」を梃子の支点として、暴走し、暴力化している資本主義に対する、いわばワクチンのような作用を及ぼそうとしている。しかしそれらは、大塚久雄や内田義彦のような先人から綿々と続く水脈を汲んだ清らかな水でもあったと思う。番組はまもなく放送が開始される。放送のあとで、再度読み返してみたいと思っている。

【02月度】ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(小野正嗣)


幾重にも「むずかしい」本であったと思う。そのむずかしさを、筆者の小野さんは真っ正面から引き受けて、番組でも「吐露」なさっていると思った。差別の問題は、誰も「している側」には与したいとは考えないだろうが、それでもなお、差別はある。ファノンは、次の句で著作を結んでいるという。「私の最後の祈り、/おお、私の身体よ、いつまでも私を、問い続ける人間たらしめよ!」。何とも苦く、かつ人をして鼓舞する言葉である。

【03月度】災害を考える(若松英輔)


①『天災と日本人』(寺田寅彦)
②『先祖の話』(柳田國男)
③『生の短さについて』(セネカ)
④『14歳からの哲学』(池田晶子)

寺田寅彦(自然とのつながり)、柳田國男(死者とのつながり)、セネカ(時とのつながり)、池田晶子(自分とのつながり)の4人の著書を、「つながり」を共通項として取り上げていた。しかし、いかに若松さんとは言え、この4人の著書を、各25分で紹介するのはいささか無理があるように思う。放送では一か月ずつを使ってほしかった。垣間見えたのは、生命(いのち)ないし、魂の不滅であるということだろうか。

【04月度】渋沢栄一『論語と算盤』(守谷淳)


守屋氏の解説がすばらしい。論語を蘇らせた渋沢、その渋沢を通してさらに21世紀に展開しようとしたのが守屋氏という印象をもった。西洋近代を突き動かしたのが、プロテスタントの職業倫理(ウェーバー)であり、それに遅れたものではあるが、明治期の産業人を動かすべきなのが「論語」であるのだろうか。ただし、その後の歴史の推移を見ると、論語の精神をインストールすることは、成功していなかったと考えざるを得ない。しかし渋沢によって再興された論語の精神は、今も時代を動かしうるのではないか。

【05月度】三島由紀夫『金閣寺』(平野啓一郎)


戦後社会に放り出され、宙ぶらりんになってしまった三島の姿と重ね合わせた平野氏の読解は説得力を持ち、原著の鑑賞の手引きとなると言える。ただ、私は本作を先に読むという「禁じ手」と使ってしまったので、「平野説」からどれくらい自由に読めるかが心許ない。一貫して平野氏が述べているのは、現実と理念(または観念)の乖離・分裂。戦後社会の到来が、必ずしも解放を意味したわけではないことを、念頭においておくべきだとする解説は、優れていると思った。

【06月度】ブラッドベリ『華氏451度』(戸田山和久)


100分de名著テキスト中でも、出色の出来と思う。戸田山氏の解説は平明で、かといってくどくもなく、かつ読みの深さに圧倒される。ディストピア小説として知られるので、最後に主人公は死ぬものと思っていたが、大規模な戦争が起こった後でも(何と、たった1行で表現される!)生き延びる。以下、引用。「本好きであるだけで、知的だったり倫理的だったり人間的だったりするわけではなく、大事なのは『本をどのように使うか』ということです」。※『』内、本文では傍点。

【07月度】ボーヴォワール『老い』(上野千鶴子)


年齢や性にまつわる様々な規範が、社会的・歴史的な文脈の中で生まれてくると指摘している点は、特に新しさも面白さも感じなかったが、今も重要であることには変わりはない。一回限りのこの生をどう生きるのか。その場、その時点での生のあり様を首肯する哲学が求められるのだろうが、本当にそうか? 考え直したい。

【08月度】アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(沼野恭子)


この重要な作品の存在を、知らずに過ごしていたことを不思議に感じた。番組で取り上がられることで目に止まったのは、幸いだったと思う。様々なキーワードが去来するが、ここで一つ挙げるなら「記憶」にしておこうか。つまり、人が「生きてきた」という事実に、どう向き合うのかということを問うているのではないかと感じている。戦争のような簡単には共有できない体験を、体験したがゆえに生きていけるのか、体験してもなお生きていけるのか。男性性がつきまとう「大きな物語」を突き抜けて語り、聴くということの試みがそこにあった。

【09月度】ル・ボン『群集心理』(武田砂鉄)


群衆へと堕してしまう危険性と、高邁さを持つ可能性のどちらとも持っているのが人間であり、片方のみを強調するのは、フェアでないし、賢いとも言えない。この本は、そのうちの、愚かさへと堕してしまう危険性を強く訴えていて、善性を発揮しなければならないとして済ませようとしているかと思っていたが、そうではなかったのがよかった。わかりやすさに身を委ねないことが、抗う拠点になるのではないかという意見を尊重したい。

【10月度】ヘミングウェイ・スペシャル(都甲幸治)


①『老人と海』
②『敗れざる者』
③『移動祝祭日』

取り上げられていた『老人と海』は読了。オンエアは、『敗れざる者』『移動祝祭日』の分については未見の状態での読了。予想していた以上におもしろく読めた。録画を視聴すると、より理解が深まるだろうと期待している。ステレオタイプ化されていたヘミングウェイ像の転換には、大きく寄与するものではなかろうか。

【11月度】ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫):再放送


積ん読していたものを、再放送にあたって講読したもの。堅牢にして、緻密な構築物を目の当たりにした感じがした。多層的で重厚に練り上げられた作品であることがわかる。2021年に読んだ本でも、トップクラスの収穫であった。この著者が、既読の原テキストの翻訳者であったことは、幸いであったとしか言いようがない。

【12月度】マルクス『資本論』(斎藤幸平):再放送

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