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本屋発注百景vol.2 今野書店
街の本屋のひとつの究極のかたち
今野書店はいわゆる独立書店、といった言葉から想像される店とは違うかもしれない。どちらかというと「街の本屋」という表現がぴったり来る店だろう。店頭からレジ前まで続く雑誌棚、奥にある絵本やコミック(※)のコーナー、そして「こんな本があったのか!」と思わず手に取りたくなる文芸・人文の棚など、オールジャンル万遍なく揃える。
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老若男女、ちょっとした困りごと解決の人から本を純粋に愛する人まで。街のすべての人々に向けた店づくりは「自分の街にもこんな店があったらいいな」と思わずにいられない。2018年には50周年を迎え、いまでは西荻窪で唯一の総合書店として街の人々に愛されている。筆者にとっての街の本屋のひとつの究極のかたちが今野書店だ。
さて、今回、話を聞いたのは文芸・人文コーナーを担当する水越麻由子さんだ。今野書店の前にはジュンク堂書店池袋本店や渋谷ブックファーストでも働いていたという水越さん。いち書店主として筆者も大いに参考にする棚はどうやって作られているのか聞いてみた。
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書店名 今野書店
創業 1968年
店舗面積 60坪 約200㎡
住所 〒167-0042 東京都杉並区西荻北3丁目1−8
最寄り駅 JR中央線 西荻窪駅北口より徒歩1分
定休日 無
営業時間 平日・土曜 10時~22時
日曜・祝日 10時~21時
HP http://www.konnoshoten.com/
街の本屋に聞く「発注、どうしてる?」
水越 今回、私が話をしていいか迷っていて……。
―――え? どうしてですか?
水越 実はBookCellarはトランスビュー扱い(※)の本の注文でしか使っていないんですよ。
トランスビュー扱い
本屋に利益を確保してほしいという想いから出版社トランスビューが考案した注文出荷制システム。トランスビュー扱いとは、同社のシステムに賛同する中小出版社を指す。トランスビューが窓口となり、本屋からの受注・納品・請求まで取引を代行する。本屋側はトランスビューと取引を開始することで、トランスビュー扱いの出版社への発注が可能。参加する出版社は2023年6月時点で198社。
―――サービス開始当初はトランスビュー扱いの本だけしか発注できませんでしたからね。
水越 そうなんです。でもエトセトラブックスさんやいきのびるブックスさんなどトランスビュー経由でしか注文できない出版社の本で必ず仕入れないといけないものもあって、それで使っていました。
中でもよく売れたのは雑誌『エトセトラ』(エトセトラブックス)の創刊号が何十冊も動きましたね。ほかにも雑誌『ゲンロン』(ゲンロン)も創刊号が10冊程度動きましたし、そのほかにもブルーシープさんの『コジコジにきいてみた。』や『ちいさな ぬくもり 66のおはなし』もよく売れました。
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今野書店の一日
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―――普段の発注はやはり大取次さんなのでしょうか?
水越 主に日販さんから仕入れています。
―――実は書店員をしたことがないので、一日の仕事の流れを教えていただいてもいいですか?
水越 まず8時半ごろに店に来て前日の担当ジャンルの売上をブックソリューション(NET21(※)の独自システム)で確認しつつ既刊の(再)発注をします。9時頃に他のスタッフが店に来るのでそこからは雑誌の荷分け(本を棚に並べる前に大きく分けること)して品出ししていきます。9時50分に朝礼。10時に開店です。
NET21
全国各地の中小書店が加盟する有限会社。POSデータの配信を第一義として、売れ筋書籍の仕入れ交渉などを行う。
そのあとは問い合わせなど接客をしつつ書籍の荷分けを2,3人で行っていきます。12時頃から品出しをして、お昼休みを挟んで、品出しの続きです。もちろんそれだけをしているわけではなくて、接客のほか、POPなど拡材の整理、さらには版元さんに注文の電話をしたりなど色々なことを同時進行でしています。コロナ禍からの時短営業で16時までで電話を受けなくなる版元さんもあるので注意しています。
最近ではここにイベントに関わる業務も加わるので残業になってしまうこともあります。イベントは日程調整など大変な部分も多いのですがその分、著者さんと直接やりとりできるなど、ならではの醍醐味がありますね。
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今野書店 水越さんの一日
8:30 お店に来る
担当ジャンルの売上をチェック
9:00 雑誌の荷分け、品出し
9:50 朝礼
10:00 開店
12:00頃~ 品出し(接客、拡材の整理、電話注文などを並行しつつ)
13:00~14:00 お昼休み(手作りのお弁当を食べる)
14:00~ 品出し(接客、拡材の整理、電話注文などを並行しつつ)
16:00~19:00 イベント対応
―――大変ですね。一日のほとんどが品出しで終わっているというのは驚きです。困っていることはありますか?
水越 新刊の(予約)発注ですね。今でも新刊の注文書がFAXで届くんですよ。それに加えて拡材やチラシも送られてくるので紙がたくさん溜まってしまいます。メールで送っていただける版元さんもありますがフォーマットが違うので読むのに時間がかかります。注文するときにFAX用紙を探すのもひと手間なんです。そんな些細なことと思われるかもしれないですが、先程も話したような時間のない中で、その些細なことが大変な手間になってくるんです。
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―――ウェブでは注文できないんですか?
水越 s-book.netやBookインタラクティブ、ウェブまるこなど、各版元共同受注サイトは既刊の注文を主に考えられていて新刊の注文はいまだにFAXが中心なんです。
※各版元共同受注サイトについてはこちらが詳しい https://www.bunkanews.jp/article/244205/
今野書店の新刊チェック・発注利用ツール
売上チェック
・ブックソリューション(NET21独自サービス)
新刊チェック
・出版社からのFAX・メール
・NET21の予約注文
発注
(利用サービス:用途)
・FAX:新刊の発注
・NET21:新刊の発注
・s-book.net:既刊本の発注
・Bookインタラクティブ:既刊本の発注
・ウェブまるこ:既刊本の発注
・BookCellar:トランスビュー扱いの発注
既刊は毎日そういったウェブサービスで発注しますが、新刊の予約注文の場合は数週間先の入荷になるので毎週土曜日、休配日にまとめて発注しています。品出しの時間が空く分、一週間分のFAXやメール、NET21での予約注文をチェックして発注しています。ひとつのジャンルに収まりきらない本があった場合は担当者間で回覧することもあります。
―――実は……BookCellarで日販さんに注文できます!
水越 知っていますが、本当に発注した分、ちゃんと届くのか確信が持てないので使っていませんでした。
―――FAXと仕組みは同じなので安心して使ってみてください!
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トー日販他指定の取次会社へ搬入が可能だ
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水越 本当に今までFAXでしていたことがそのままBookCellarでできるならとても嬉しいです。
―――ちなみに、BookCellarでよく使う機能はなんですか?
水越 先程も申し上げたようにトランスビュー扱いの本でしか利用していませんでしたので、それらの予約注文や追加注文ですね。発注履歴もよく観ています。前回注文時の日付や冊数が注文のときに分かるともっと嬉しいですね。
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BookCellarでこの本発注しました
―――BookCellarで発注した本の中で印象的だった本を挙げていただけませんでしょうか?
水越 『国籍と遺書、兄への手紙』(ヘウレーカ)、『植物考』(生きのびるブックス)の2冊は発売当初から良く売れて、何度か追加注文しました。『コジコジにきいてみた。』(ブルーシープ)いまデータを見みてみたらすでに50冊以上売っていて、びっくりしました。『未来の男性へーIWAKAN書簡集』(Creative Studio REING)も印象的ですが、こちらの版元とは当初直取引でしたが最近トランスビュー扱いになり、とても助かってます。『大邱の夜、ソウルの夜』(ころから)はコミックなので私の担当ではないですが、発売以降ロングで売れているようです。
―――最後に、お知らせしたいイベントなどありましたらお知らせください。
水越 「『うたわない女はいない』出版記念トークイベント 飯田有子×十和田有(ひらりさ) 働く女たちの短歌が燃える」を8/19(土)16時から開催しますのでぜひご参加ください。
―――ありがとうございます。それにしても、書店員の一日が本当に忙しいものだということが分かり、BookCellarをはじめウェブサービスにできることはまだまだあるなと感じました。ありがとうございました。
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取材日:2023年7月7日
取材・文・写真 和氣正幸
今野書店で売れた本
『エトセトラ』(エトセトラブックス)
『ゲンロン』(ゲンロン)
『ちいさな ぬくもり 66のおはなし』(ブルーシープ)
『国籍と遺書、兄への手紙』(ヘウレーカ)
『植物考』(生きのびるブックス)
『コジコジにきいてみた。』(ブルーシープ)
『未来の男性へーIWAKAN書簡集』(Creative Studio REING)
『大邱の夜、ソウルの夜』(ころから)
BookCellarをご利用いただくと、今野書店さんが記事内にて紹介した本を仕入れることができます。
注文書はこちら。
https://www.bookcellar.jp/orderlist/965203/
本屋発注百景とは
本屋さんはどんなふうに仕入れを行い、お店を運営しているのか。本屋発注百景は、独立書店、まちの本屋、本屋+αの業態、チェーン系書店まで、様々なお店の「発注」にクローズアップする連載企画です。取材は、独立書店ウォッチャーであり、ライター・書店主の顔をもつ、和氣正幸さんにお願いしました。「本を仕入れる」という単純なようで奥の深い営みを続ける6つの書店の風景をお伝えできますと幸いです。