[本026]『月まで三キロ』
著者:伊代原新、出版社:新潮社
知り合いの天文学者がTwitterで紹介してて、興味を持ち手にしました。「月まで3キロ」?、月が大好きな私にとってはとても惹かれるタイトルでした。
主人公は死ぬことを考えて、自殺前にと鰻を食べに出かけます。しかし、どうにも気分が悪くなりタクシーへ。自殺をしようとする乗客と、息子を亡くしたタクシー運転手。運転手は、乗客に月の話、息子の話をゆっくりと始めます。
月は、地球からは絶対に裏側を見せない。いつも同じ面だけを地球に見せて回っている。そんな様子を息子に擬え、運転手はこう語ります。
「親には見せてくれない一面っていうのかな。月の裏側みたいに。」
月まで3キロ。なぜ、運転手はこの地に足を運ぶのか、ぜひ、読んで欲しいと思います。
『月まで三キロ』は「星六花」「アンモナイトの探し方」「エイリアンの食堂」など、全部で6篇からなる短編集です。著者の伊代原さんは、地球惑星物理学の専門家。宇宙、天気、化石など科学を絡めながら、立ち止まった人々の心に寄り添います。科学は、宇宙や地球の鼓動を紐解く学問。宇宙や地球に抱かれ、人々はゆっくりと前をむき始めます。
どの短編も涙なくしては読めないお話です。
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