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ACBDケベックBD賞2023が発表されました!
フランスのバンド・デシネの批評家とジャーナリストの協会ACBD(l’Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée)による「ACBDケベックBD賞2023」のグランプリが10月◎日に発表されました。
ACBDケベックBD賞は、フランス語圏であるカナダ・ケベックの作家によるバンド・デシネ作品を表彰するマンガ賞。出版国がケベック以外の作品でも作者がケベック在住のアーティストであれば対象となります。
2021年のグランプリ、ノミネート作品は次の記事で紹介してます。
今回の記事では2023年と、記事にまとめていなかった2022年のグランプリ、ノミネート作品を見ていきます。
ACBDケベックBD賞2023
第9回目のケベックBD賞。2022年7月1日から2023年6月30日までに出版された、ケベック在住作家によるバンド・デシネを対象に、最終ノミネート4作品のうちからグランプリが発表されました。
【グランプリ】
La Méduse(クラゲ)
作:Boum、発行:Pow Pow
小さいながら自分のアパートを持ち、安定した好きな仕事に就き、本屋の客に恋をする。オデットは順調な人生を歩んでいるように見えるかもしれない。しかし彼女の目の前に「クラゲ」が現れ、人生が一変する。オデットにしか見えないクラゲは増殖していく……。
クラゲが見えるという驚きの設定。しかもとても絵が可愛い。クラゲとはいったい何なのか、果たしてオデットは幸せになれるのか。
【最終ノミネート3作品】
La Cité oblique(斜めの都市)
作画:Christian Quesnel、作:Ariane Gélinas、発行:Alto
1930年代初頭、ケベックにやってきた寡黙な訪問者は、壮大なるコズミック・ホラーの生みの親となったHPラヴクラフト。古代の生物が息づくクトゥルフ神話を生み出した人物は「城壁に囲まれた謎の都市」に3回の滞在中に、かつてカナダ西部にフランス植民地として存在したヌーベルフランスの歴史を書き、死後1976年に『ケベックと星へ』という題目の作品として出版されることとなる……。まったく新たなラヴクラフトの神話を、幻覚のような壮大なグラフィックでたどることができる。
ラヴクラフトを描く新たなストーリーとしては、アラン・ムーアの『ネオノミコン』4部作(2023年10月時点で3巻まで邦訳刊行)があるが、ケベックの作家もケベックを舞台にした作品を描いていたのですね!
ちなみに正統派クトゥルフ神話ものはI.N.J.カルバード作による4作品のコミカライズがあります。
Les Rescapés de l’éternité(永遠の生存者)
作:Grégoire Bouchard、発行:Moelle Graphik
はるか遠い過去のアトランティスに始まり、レーシングカーの速度、古い西部劇の暗い舞台裏、50年代のニヒルなロックンロールなど、何世紀にもわたった物語が展開する。それはすべて、人類最大の苦痛のひとつである叶えられない恋愛の影にとらわれた未来のディストピアの幻想的なビジョンで最高潮に達する。
出版社のあらすじを見る限り、いまいち内容がわからないのだが、280ページにわたるかなりな長編作品のよう。
Le Storyboard de Wim Wenders(ヴィム・ヴェンダースの絵コンテ)
作:Stéphane Lemardelé、発行:La Boîte à bulles
2023年ノミネート作の中では唯一、フランスの出版社から刊行。
ヴィム・ヴェンダース監督の映画『誰のせいでもない(原題:Every Thing Will Be Fine)』(2015年)に絵コンテ制作として参加したステファン・ルマルデレがその経験を描いた作品。絵コンテの詳しい仕事と、映画製作における絵コンテの役割に加えて、ヴィム・ヴェンダース監督とのさまざまなやり取りを描いている。
映画ファンにとっても、ヴィム・ヴェンダースのファンにとっても興味深い作品です。
ACBDケベックBD賞2022
第8回目のケベックBD賞。ケベック在住作家によるバンド・デシネを対象に、最終ノミネート4作品のうちからグランプリが発表されました。
【グランプリ】
Football fantaisie(フットボール・ファンタジー)
作:Zviane、発行:Éditions Pow Pow
マッドサイエンティストの研究所から逃げ出したふたりの少女フレデリクとアナベル(12歳と6歳)。彼女たちを捕まえるために殺人ロボットが発射され、ふたりは小さな島の町、フットボール・ファンタジーにたどり着く。しかし島民は理解できない言葉を話す。果たしてふたりは無事に家に帰ることができるのか。SFなのか、ラブストーリーなのか、実験的なマンガなのか。
2021年にカナダ大使館で開催された『9:バンド・デシネとマンガ』にも参加されていたズヴィアンヌさんの作品です。
【最終ノミネート3作品】
Mégantic, un train dans la nuit(メガンティック:夜の列車)
作:Christian Quesnel、Anne-Marie Saint-Cerny、発行:Écosociété
老婦人は少女に語る。2013年7月6日にケベック州のラック・メガンティックで、爆発性の石油を積んだ72両編成の列車が町の真ん中に突っ込み、47人の犠牲者を出した。
この悲劇はどうして起きたのか、犯人は誰なのか、利益優先の資本主義社会の暗部を生き生きと描き出す。
Un Paris pour Dallaire(ダレールのためのパリ)
作:Marc Tessier、Siris、発行:La Pastèque
1916年ケベック出身の画家ジャン・ダレールの伝記。
オタワのドミニコ会の若き天才画家で、奨学金を受けて第二次世界大戦直前のフランスに到着したダレール。ゲシュタポに逮捕され、収容所に4年間閉じ込められた後、カナダに戻った彼は美術教師となり、カナダ国立映画庁で働く。1959年にフランスに戻り、晩年はヴァンスで過ごした。
ジャン・ダレールの生涯とともに、ケベックの芸術の進化の記録。
Wendy – maître ès art(美術修士課程のウェンディ)
作:Walter Scott、発行:La Pastèque
美術の修士課程の学生であるウェンディの日常。芸術家の不安定な立場に焦点を当てながら、性同一性、セックスワーカー、薬物使用など複雑なテーマを盛り込み、パーティー好きなミレニアル世代の芸術家を描き出す。
~*~
さていかがでしたでしょうか?
他の漫画賞ではあまり見かけないような、でもなかなかユニークで面白そうな作品ばかりでした!
2023年のグランプリ『La Méduse』はかなり読んでみたいです…!
バンド・デシネ(フランス語圏マンガ)でもケベックBDはあまり目にする機会が少ないと思いますので、こういった漫画賞は貴重です。
引き続き注目していきたいと思います!
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