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アングレーム国際漫画祭2022グランプリ&優秀作品が発表されました!

こんにちは!海外コミックスのブックカフェ書肆喫茶moriの店主です!

2022年3月17日から20日にかけて、ヨーロッパ最大級のマンガのフェスティバル、アングレーム国際漫画祭が開催されました!!

新型コロナウィルスの影響で従来の1月末開催が延期になりましたが、無事に開催されてよかった!公式SNS、アーティストや出版社のSNSを見ていると、サイン会やら展示やら講演イベントやら楽しそうで「行きたいッ!!」とうずうずしてしまいました!

さてアングレーム国際漫画祭では、優れたアーティスト一人を選ぶグランプリが発表されるとともに、事前に選ばれた公式セレクションと各カテゴリのノミネート作品の中から最優秀賞が表彰されます!

今回の記事では、2022年アングレーム国際漫画祭のグランプリと受賞作品を紹介します。

ちなみに公式セレクションと各カテゴリのノミネート作品について海外マンガ好き4人がやいやい語ってる動画を2021年末に公開しています!

受賞作品についてはYoutubeライブでもご紹介していますので、こちらもどうぞ!

では、さっそく見ていきましょう!

SNCFミステリー賞(Fauve Polar SNCF)

『L‘ENTAILLE』(くぼみ)
作:ANTOINE MAILLARD(アントワーヌ・メイラード)、発行:CORNÉLIUS

まずは各カテゴリの優秀賞を見ていきます!

最初は、フランスの国鉄が協賛する、ミステリージャンルの作品を表彰する賞です!
ノミネート7作品の中から1作品に選ばれたのがこちらの作品!

海辺の小さな町で少女二人が野球バットを持った男に残虐に殺されるという事件が起きた。その町で暮らす10代の若者たちの生活が一変する……。

表紙からしてなんとも不気味な雰囲気。鉛筆の濃淡で描かれたモノトーンの世界で恐怖がいや増しに増します!

オルタナティブBD賞
(Prix de la BD alternative)

『BENTO』(ベントー)
発行:RADIO AS PAPER

オルタナティブ・コミックを表彰する賞では、2017年に創刊されたアンソロジー『BENTO』が受賞しました!
現在のところ6巻まで刊行されているようです。

環境賞(Prix Éco-fauve)

『MÉGANTIC - UN TRAIN DANS LA NUIT』(メガンティック-夜の列車)画:CHRISTIAN QUESNEL(クリスチャン・ケスネル)、作:ANNE-MARIE SAINT-CERNY(アン=マリー・サン・セルニー)、発行:ÉCOSOCIÉTÉ

2022年に新設された環境賞。ノミネート作品7作品のうち3作品が棄権するというハプニングもありましたが、受賞作品はこちらのケベック・バンド・デシネ!

2013年にカナダ・ケベック州で実際に起きたラック・メガンティック鉄道事故。可燃性の原油を運んだ列車がラック・メガンティックの市街で脱線し、爆発・火災によって47人が犠牲になった悲劇を老婦人が小さな女の子に語るという形式で物語が進みます。

遺産賞(Prix du Patrimoine)

『STUCK RUBBER BABY』(スタック・ラバー・ベイビー)
作:HOWARD CRUSE(ハワード・クルーズ)、発行:Casterman

復刊された過去の名作を表彰するこの賞。ノミネート7作品の中から最優秀賞を受賞したはこちらのアメコミ!

アメリカのゲイコミックの代表的な漫画家ハワード・クルーズが1995年に発表した作品。
1960年代アメリカ南部の架空の街に暮らす内気な白人男性の物語です。

子ども向け(8-12歳)最優秀賞
(Prix jeunesse 8-12 ans)

『BERGÈRES GUERRIÈRES』(羊飼いの戦士)4巻
画:AMÉLIE FLÉCHAIS(アメリ・フレッチェ)、作:JONATHAN GARNIER (ジョナサン・ガルニエ)、発行:Glenat

8歳から12歳の子ども向け作品7点から最優秀賞に輝いたのはこちら!

ケルト神話にインスパイアされた女の子が主人公の冒険ファンタジーシリーズ!
2017年に第1巻が発売され、今回表彰された第4巻が最終巻!
とにかくめちゃ可愛い!読んでみたい!!

YA向け(12-16歳)最優秀賞
(Prix jeunesse 12-16 ans)

『SNAPDRAGON』(スナップドラゴン)
作:KAT LEYH(キャット・レイ)、発行:KINAYE

12歳から16歳のYA(ヤング・アダルト)向け7作品から選ばれたのは、First Second社から2020年に刊行されたこちらのアメコミ!

近所に住む魔女と噂される老婆。少女スナップは彼女からさまざまなことを教わります。貧困、人種差別、同性愛などをファンタジックに描いた作品。

フランステレビ読者賞
(Prix du public France Télévision)

『LE GRAND VIDE』(大空洞)
作:LÉA MURAWIEC(レア・ムラウィエック)、発行:2024

公式セレクション46作品の中からあらかじめ8作品を選出し、読者によって決定された賞です!
今年の受賞作品の中では唯一私が読んだことがある作品です!!

ひとから名前を忘れられると肉体まで死んでしまうという世界。無職、恋人なし、友達いない主人公。同姓同名の有名人(歌手)が現れて存在の危機に陥る……!
「どんなことをしてでもバズって有名人になればいいのか」といった現代のSNS社会に鋭いメスを入れる作品です。

高校生の賞(Fauve des lycéens)

『YOJIMBOT』(ヨージンボット)1巻
作:SYLVAIN REPOS(シルヴァン・ルポ)、発行:DARGAUD

公式セレクション46作品の中からあらかじめ15作品を選出し、高校生によって決定された賞です!

2241年、未来の日本の遊園地廃墟で追われていた少年ヒロを助けたのは旧世代の武士ロボット・ヨージンボット!
用心棒とロボットを掛け合わせたクールなセンス!
ゲーム感覚?(テキストフォントが8ビット文字だったり…)で、なんちゃってニッポンが楽しめる痛快アクションです!

新人賞(Prix révélation)

『LA VIE SOUTERRAINE』(地下生活)
作:CAMILLE LAVAUD BENITO(カミーユ・ラヴォー・ベニート)、発行:LES REQUINS MARTEAUX

さて、ここから公式セレクションからの各賞発表です!
最初の新人賞は、カミーユ・ラヴォー・ベニートさんの『LA VIE SOUTERRAINE』

1930年代後半、占領下のフランス・ヌヴィックの駅でレジスタンスが列車強盗をしたという実在の事件をもとにドキュメンタリーとフィクションを組み合わせた意欲作です!
表紙もなんともオシャレですが、細かい描線がとても印象的です。

果敢賞(Prix de l’audace)

『UN VISAGE FAMILIER』(お馴染みの顔)
作:MICHAEL DEFORGE(ミシェル・デフォージ)、発行:ATRABILE

果敢賞にはなんとも果敢な作品が受賞しました……!
表紙に描かれているのは、棒のような人間?顔のついた肋骨?ワニ人間の惨殺死体? なんともエキセントリック!

テクノロジーが日常を支配する未来。
都市、道路、そして住民までも定期的に「更新」される。
オーウェル、ハクスリー、カフカを思わせるディストピア世界だそうです!

シリーズ賞(Prix de la série)

『SPIROU - L'ESPOIR MALGRÉ TOUT - TROISIÈME PARTIE』(4巻)
作:ÉMILE BRAVO(エミール・ブラヴォー、発行:Depuis

1938年に連載が開始されたご長寿シリーズ「スピルーとファンタジオ」。
アーティストを変え、描き続けらえてきました。

今回シリーズ賞を受賞したのはエミール・ブラヴォーによって2018年から始まったシリーズの4巻です。
1940年代、ベルギー軍に参加したファンタジオ。スピルーの友人であるユダヤ人画家にナチスの手が迫る……ユーモアとリアリティに満ちた歴史ものです!

審査員特別賞(Prix spécial du jury)

『DES VIVANTS』(生きている)
画:SIMON ROUSSIN(サイモン・ルッサン)、作:RAPHAËL MELTZ(ラファエル・メルツ)、LOUISE MOATY(ルイーズ・モーティ)、発行:2024

審査員特別賞も1940年代の占領下パリを舞台にした歴史マンガです。
人類博物館には民俗学者、弁護士、修道女、ガレージのオーナーなどさまざまな職業のレジスタンスたちが集う。膨大な資料に基づいて、当時の生きた人間を描き出す!

最優秀作品賞
(Fauve d’or prix du meilleur album)

『ÉCOUTE, JOLIE MÁRCIA』(聞いて、かわいいマルシア)
作:MARCELLO QUINTANILHA(マルセロ・キンタニーリャ)、発行:ÇÀ ET LÀ

最優秀賞に輝いたのはブラジル出身マルセロ・キンタニーリャさんの『ÉCOUTE, JOLIE MÁRCIA』

物語の舞台はブラジルの貧困街。
看護師として働くマルシアは恋人と娘と暮らしているが、娘はタチの悪い男と付き合っていて……。
とってもカラフルで色鮮やかでありながら、現代のブラジルのリアルが垣間見られる作品です!

グランプリ(GRAND PRIX) 2022

毎年3人の候補者が選出されて、その中から一人が選ばれるグランプリ!

2022年の候補者は、キュロテ』『キュロテ・ドゥ』など数々の邦訳もあるペネロープ・バジューわたしが「軽さ」を取り戻すまで』のカトリーヌ・ムリスカナダのアンダーグラウンディング・アーティストのジュリー・ドーセという女性3人!

その中からグランプリに選ばれたのはジュリー・ドーセでした!
彼女の『Maxiplotte』は遺産賞でもノミネートされていましたね!
1965年生まれ。同人誌活動からDrawn&Quarterlyで単行本を刊行するようになる彼女の作品は、性や悪夢へのグロテスクさが感じられる作風です。

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さてアングレーム国際漫画祭2022の受賞作品はいかがでしたでしょうか?
歴史ものや実際の事件を取り上げた作品が多かったなという印象です。
SFでも現代社会を風刺するようなテーマであったり、フィクションでもリアリティがあったり……マンガがいまを映す鏡だなとしみじみ感じます!
読みたい作品がまた増えてしまいました~!
みなさまの気になる作品がありましたら幸いです。

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