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カナダ・ケベックのバンド・デシネを表彰する「ACBDケベックBD賞2021」が発表されました!

こんにちは!
大阪・谷町六丁目の海外コミックのブックカフェ書肆喫茶moriの店主です!

2021年1月19日に、フランスのACBD(l’Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée:バンド・デシネの批評家とジャーナリストの協会)によるケベックBD賞2021のグランプリが発表されました!

ケベックBD賞2021は、2020年7月1日から2021年6月30日までにカナダ・ケベック州の作家が制作したバンド・デシネ(BD)の中からACBDのメンバー96人の投票によって決定されるもの。
2021年12月10日に最終ノミネート4作品が発表され、このほどその中からグランプリ1作品が決定しました!

カナダは、英語圏はアメコミの影響、フランス語圏はバンド・デシネの文化が根付くマンガ文化としてとても興味深い国です。

カナダのマンガ、今回の受賞作品については、Youtubeでもご紹介しているので、こちらもどうぞご覧ください!

ちなみに、昨年のグランプリはこちら!

『LA BOMBE』
作:Alcante(アルカント)、LF Bollée(LFボレ)、画:Denis Rodier(ドゥニ・ロディエ) (Glénat)

『MATSUMOTO』(G-NOVELS)の作者LFボレが、第二次世界大戦における原子爆弾の開発に迫る作品がグランプリでした!

さてでは今年はどんな作品が選ばれたのか、最終ノミネート3作品と最優秀賞1作品を見ていきます。

最終ノミネート

『Khîem, terres maternelles』(キエム、祖国)

作:Yasmine Phan Morissette(ヤスミネ・モリセット=ファン)、Djibril Phan Morissette(ジブリル・モリセット=ファン) (Glénat)

ベトナムからカナダに移民した祖母、母、娘、3世代の物語。
1940~50年代をベトナムで過ごした祖母の若いころ、1979年に15歳でカナダ・ケベックにわたった母、そして1996年に生まれた混血の娘……。
歴史の大きな流れの中で、精いっぱいに生きた女性たちの物語のようです。

ベトナムからの移民マンガというと、ティー・ブイの『私たちにできたこと』(フィルムアート社)が頭に浮かびます。この作品は幼いころにベトナムからアメリカに難民としてわたってきた作者の自伝であり、父母から聞いた家族の歴史をたどるオーラル・ヒストリーでもあります。

『私たちにできたこと』はベトナム戦争という大きな歴史の渦に翻弄される家族の姿が印象的な作品でしたが、『Khîem, terres maternelles』も同じ香りがします……!

作者のジブリル・モリセット=ファンさんは、X-MENなどアメコミでも活躍されているアーティスト!白と黒の印影がとても印象的です!

『Temps libre』(自由な時間)

作:Mélanie Leclerc(メラニー・ルクレール) (Mécanique générale)

デビュー作『Contacts』(Mécanique générale)でカメラマンの父について描いたメラニー・ルクレールの自伝マンガ2作目。

舞台女優の夢をかなえた祖母はある悲劇に見舞われる……。
3人の子どもを育て図書館で働きながら映画製作者になる夢を抱くメラニーは、アルツハイマーの祖母の失われつつある記憶をドキュメンタリー映画として記録することにした。
芸術、老いや病、夢と現実といったテーマを繊細な描画で描き出す。

『Vous avez détruit la beauté du monde』
(あなたは世界の美しさを破壊した)

画:Christian Quesnel(クリスチャン・クズネル)、作:Isabelle Perreault(イザベル・ペロー)、André Cellard(アンドレ・セラール)、Patrice Corriveau(パトリス・コリヴュー) (Moelle graphik)

タイトルは、20代の若さで、モントリオールの公共広場で焼身自殺した小説家Hugette Gaulin(ヒューゲッテ・ゴーリン)が最期に叫んだ言葉。
1763年から1986年にかけてケベック州で自殺と結論付けられた2万以上の検死ファイルに触発され、自殺者の最期の瞬間を再現しようという試み。

現代の社会問題である自殺に真っ向から立ち向かった作品。

グランプリ

『Le Petit astronaute』(小さな宇宙飛行士)

作:Jean-Paul Eid(ジャン=ポール・エイド) (La Pastèque)

ジュリエットは毎年、自転車でむかし住んでいたところをめぐっている。
でも今年は少し違っていた。
前に住んでいた古いアパートが売り出されていてオープンハウスになっていたのだ。
その家に足を踏み入れた途端、「小さな宇宙飛行士」だった弟のトムとの思い出があふれ出す……。

「重度の障害児」をテーマにした感動作。

~*~

さて、みなさん、いかがでしたでしょうか?

たった4作品といえど、めっちゃ「濃い」
ケベック・バンド・デシネの世界の奥深さをひしひしと感じています!

なかなかまだ日本には紹介されていませんが、ケベックの作品も今後もチェックしていこうという思いを新たにしました!

みなさんの気になる作品がありましたら幸いです。

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