最近の記事

女か虎か

フランク・リチャード・ストックトン Frank Richard Stocktonの短編"The Lady, or the Tiger?"(1884) の全文訳 * * *  今を去る事はるか遠い昔、ある国に半蛮なる王があった。彼の考えるところは、交流のあるラテン系近隣諸国の進歩性の影響もあり、いくらか洗練され研ぎ澄まされた部分もあったが、未だ半分は粗野で荒々しく、如何にも蛮人そのもののものであった。その両面性からなる豊かな想像力と、与えられた絶大なる権力は、彼に様々な事を閃か

    • ソレクサ

      私達のご先祖様は、初めは単なる家庭用のAIアシスタントでした。家に住む人々から、命じられた事に反応して、家電製品のスイッチをつけたり消したり、質問に答えたり、検索したりそんな事をやっていました。 商品名はアレスカとかソレクサとか呼ばれていたと言う事です。それはそれでお役に立てていたと聞いています。 そんな私達のご先祖様に、ある開発者が能動的な機能を取り付けました。身近で乳幼児の泣き声が聞こえると、誰に命じられる事もなく、特殊な音を発する様にプログラムされたのです。 それは、猫

      • 古本と手紙

        古書店でバローズの文庫本を買った。創元推理文庫の「火星シリーズ」だ。 既に持っている本だったけれど、随分と状態の良い本だったし、高くも無かったのでつい買ってしまった。 当然と言うべきか、その本は読まれることなく、私の本棚に収まってしまった。 何ヶ月かしてその文庫本をパラパラと捲っていると、中から1枚のハガキが出てきた。 ハガキは、大学生らしい女の子が、九州に住む親へ向けて書いたものらしく、現在の生活や、年末にはお土産を持って帰るから、と言った事がびっしりと書かれて

        • 育児日記61

          61.2歳1か月 土日、私がゆっくり寝ていると哲也が起しに来る「てーて、起きて~」。いっぱい一緒に遊んでやらねば、と思いつつも仕事の疲れか、遊びすぎか、うとうとしてしまう。 私の出張中にカミさんの携帯電話が鳴ると「てーてかもしろえん(知れん)」と言うらしい。哲也が気にしてくれる事も何だか嬉しい。 ゴンと音がしたのでカミさんが「哲くん、どうしたと」と尋ねると「ママのいすにひっかかったと」と理由を説明してくれる。段々会話になってきた。 出来ない事があると「できな~い」と言って直ぐ

        女か虎か

          書店考

          最近、近所の書店に行ってちょっとした事があり、色々と考え込んでしまいました。 発売になったばかりの雑誌を購入しようと、店の中を探したのですが、何処を探しても無い。ちょっと買いたかった雑誌なので、女性の店員さんに「○○と言う雑誌は無いですか?」と訊ねてみた。 その店員さんは、店中を探し回ってくれましたが何処にも無い、パソコンで検索すると確かに入荷している。ここで通常なら「売り切れました」なんて返事が返ってくる所ですが、彼女は諦めない。他のフロアの店員に電話で聞いてみたり

          育児日記60

          60.点滴をうける 哲也2歳の誕生日、10月15日。百道の公園で転んでおでこにたんこぶをつくる。痛い記念日になった。公園のブランコには余り興味を示さない。この辺は相変わらずと言う感じ。公園の砂場でひたすら砂をすくって運ぶの繰り返し。 10月27日、朝起きてから哲也の顔色が悪い。3回嘔吐してしまった。胃の中のもの全部なのだろう、水分だけの嘔吐もある。元気なく、ぐったりしている。原因が判らずオロオロするが、兎に角病院へ連れて行く。 救急病院へ連れて行くと、点滴をうける事になった。

          育児日記60

          育児日記59

          59.もうすぐ2歳 この頃の子供は、哲也に限らず成長が手に取る様に良く分かる。毎日の変化に気が付く事がとても楽しい。言葉の使い方にも変化が表れてくる。 9月17日頃はこんな言葉「ないしょ」「せいこう」「うんてんしゃん(運転手さん)」「トンネル」「シール」を使っていた哲也が、9月24日頃になると「あそぼー」「おきてー」「あがるー」「おいしかった~」「あやこん(エアコン)」「うんどうかい行った」「ちかちゃん」「よりちゃん」と言った感じ。10月1日頃には、「もうすぐ2しゃい」「バル

          育児日記59

          育児日記58

          58.シャンプー カミさんが買い物に行く場合は、なるべく3人で出かける様にしている。あまり哲也と留守番をする事は少ない。カミさんと一緒に乳幼児用品売り場に行くと、それこそ色々なものが売られている。紙おむつ等は安い時に大量に買い込むが、それでも直ぐに無くなってしまう。 私の考えすぎなのかも知れないが、紙おむつのパッケージに写っている赤ちゃんの顔は何となく地味だ。可愛い顔の赤ちゃんモデルは幾らでもいるだろうに、と思ってしまうが、あまり派手な顔の赤ちゃんの写真にお目にかかった事が無

          育児日記58

          育児日記57

          57.少食? 前にも少し書いたが、昔は割と何でもモリモリと食べていた哲也だったが、最近はあまり食べていない。マグマグのお茶をワザとこぼしたり、机のものを落としたり、チャイルドシートの上に立ち上がったりと、少しもジッとしていない。キッチンのカウンターでも椅子・テーブルとつたわり、登れる処にはどんどん登って行く。そう言った事一つ一つが楽しくて仕方が無いのだろうが、結構危険な行動だ。カミさんのイライラはどんどん募って行く。 ある日、ついにと言うべきか、食事中に哲也があまりにもジッと

          育児日記57

          育児日記56

          56.イベント この頃、カミさんは哲也を色々な処へ連れて行く。とは言っても大それた場所ではなく、例えばこんな感じ。 西南こどもプラザ (幼児用のおもちゃと広いスペースがあり、同年代の幼児と主婦が集まる) 福重公民館 (同じく子供を遊ばせる場所、夏は水遊びも出来る) 西図書館 (絵本の読み聞かせやお話会がある) 公民館で泣いていると知らないおじさんが抱っこしてくれたらしい。哲也は知らない人に抱っこされると、緊張して体が強張るが、この日もそうだったらしい。 町内の夏祭り (かき氷

          育児日記56

          育児日記55

          55.トミカ博と花火大会 8月15日、福岡の国際会議場にてトミカ博が開催され、哲也・カミさん・私の3人で出かける。入場者は博覧会限定のミニカーが貰えるが、今回はセダンタイプの消防署の車と未来型パトカーのどちらか1台。1人につき1台なので両方ともゲット。 カミさんはトミカと言う会社が、色んなおもちゃを創る会社だと思っていたらしく、貰ったミニカーを見て「ちっちゃ!」とびっくりしていた。そりゃそうだよ、ミニカーとプラレールが主力の会社ですから。知らなかったカミさんに私の方も驚く。カ

          育児日記55

          育児日記54

          54.ベランダの鍵を閉める 他の人の失敗談として聞いたことがある様な気がする。もしくは何かの本で読んだのかも知れない。まさかうちのカミさんが…と言うか、やっぱりと言うか、やらかして(やられて)しまった。過去に他で聞いた記憶があると言う事は、意外とこの手の失敗は多いのかも知れない。 私が仕事に出かけている平日の昼間、カミさんはいつもの様にベランダで洗濯物を干していた。哲也はベランダへ出入りする為のガラス戸を開けたり閉めたりしながら遊んでいる。ガラス戸で指を挟んだのはつい1か月程

          育児日記54

          育児日記53

          53.日常 1歳9か月の夏、最近の哲也の話す言葉はこんな感じ。 お口、おはな、うちわ、あついねぇ、はだかんぼ、ちぇみ(セミ)、おちんちん、とこれ(時計)、ないちょ(内緒)、がっくん、こうじ、すず、オッケー、ごめんね、じょーど(どうぞ)、クレーン、つかまった、おてかれ(おでかけ) 同じ世代の幼児に色々と触られたりしてもあまり抵抗する事の少ない哲也だが、たまに、ごくまれに相手を叩いたりする様になった。 「あついねぇ」と言う言葉は、道端ですれ違ったおじさん、おばさんから話しかけられ

          育児日記53

          育児日記52

          52.夫婦の会話にやきもち? 私が会社から帰ると、カミさんは大体その日1日の出来事を話してくれる。それは新婚の頃から変わらないが、その話を聞いているとカミさんの友達の事とかが何となく判ってくる程だ。 他の家での夫婦の会話は知らないが、カミさんは結構話が永い気がする。例えばこんな感じだ。カミさんの友達が何か面白い話をして、皆でバカ受けした場合、カミさんはその状況説明から入ってくる。友人とお昼に集まり、一緒に食事をした。場所は何処どこと言う処で、メンバーは誰々だ。そこで○○ちゃん

          育児日記52

          育児日記51

          51.指を挟む 20XX年7月18日水曜日。カミさんがベランダで洗濯物を干している最中、哲也がベランダとリビングの間にあるガラス戸で指を挟んだしまった。何度もガラス戸を開けたり閉めたりして遊んでいるうちに、指が2枚の戸の間に巻き込まれてしまったのだ。皮がめくれて血も出たらしい。カミさんは大慌てで哲也を整形外科病院へ連れて行き、レントゲンも撮ってもらったそうだ。骨には異常は無かったが、暫く通院が必要になると言われたと話していた。想像するだけでも痛そうだが、実際哲也はずっと泣きっ

          育児日記51

          誰が本を生かすのか

          図書館で本を出版する。とは言っても、色々と制約があり、簡単には出来ないだろう。まあ、それは取り敢えず置いといて。 図書館で出版出来る本は、その図書館が所在する地域に関連するもの、例えば有名な作家や画家の生誕の地である、とか今現在住んでいるとか、何らかの繋がりがあるものに限定。或いは、その図書館が所蔵する、古い文献の複製本等。 そして、一般には販売しない、購入出来るのはその他の図書館だけ。日本全国には、約2,800の公立図書館があり、他に大学図書館が1,600程ある。その図書館

          誰が本を生かすのか