【映画感想文】溺愛人形は親友アンディの夢を見るか?~トイ・ストーリー4とリブート版チャイルド・プレイをみて考えたこと~
――みたいな事を2019年に書いてましてね。
他のアカウントを整理しているうちに発見してしまったこの記事。
ディズニーもB級ホラー映画も大好物なんですよ……大好きな2シリーズの作品が同じ時期に公開されてこれを書いた時はボルテージが最高潮でした。
私にしては珍しくテンションと熱量が高く、5年前も基本的に好きな作品の傾向は変わっていないな……と思いましたので、手を加えてこっちの方で再掲してみました。
※ここから先は『トイ・ストーリーシリーズ』『チャイルド・プレイシリーズ』の核心に触れるネタバレになります。あと私の超絶個人的な感想です※
2019年初夏。
こんな広告が話題になったのを覚えてるだろうか。
ネット上で少々話題になったこのポスター。
まあ、比較広告っていう海外企業のよくある広告手法なので、ディズニーにケンカを売ってるわけでも訴訟問題に発展するわけでもなかった。
公開日が近い「トイ・ストーリー4」を絡めたブラックジョーク的なポスターだったわけだ。
※比較広告(ひかくこうこく)は、競合する他社の商品と自社商品を比較して優位性をアピールする広告の手法。要はワザと煽ってディスるプロレス的宣伝。
有名なものだと、バーガーキングとマクドナルドのアレですね。
だがチャイルド・プレイを見終えた今、我思う。
これ、かなり意味深なポスターだったんじゃね? と。
トイ・ストーリーのウッディとチャイルド・プレイのチャッキー 。
実はこの2体、共通する事が多いのだ。
■トイ・ストーリーとは
『トイ・ストーリーシリーズ』は、ディズニー・ピクサーが1995年に製作した『トイ・ストーリー』から始まる作品シリーズ。
https://www.disney.co.jp/fc/toystory
ウッディはこのシリーズの主要キャラクターで、かつてはアンディ少年の一番のお気に入りだった保安官のカウボーイ人形。
常に持ち主の幸せを願い、仲間のことは絶対に見捨てないヒーローだ。
映画のトイ・ストーリーシリーズは全編でウッディと仲間たちの冒険が描かれ、後半には必要とされなくなり、遊ばれなくなっていくおもちゃたちの悲しみと、アンディ少年や持ち主との別れが描かれている。
■チャイルド・プレイとは
一方「チャイルド・プレイ」は……あれ?
あらすじやキャラを調べようと思ったら……日本の公式サイトがなくなってる……。
世知辛い……でも、気を取り直そう……。
『チャイルド・プレイシリーズ』は1988年に製作したオリジナルから始まるホラー映画の作品シリーズ。
殺人鬼の魂が憑依した人形・チャッキーと少年アンディと因縁の対決が繰り広げられるのが『チャイルドプレイ』シリーズの基本プロット。
で、その原点と言うべきオリジナルのリブート版が、今回公開された『チャイルド・プレイ』なのだ。
■オリジナル版とリブート版の違い
チャッキーは母親が息子のアンディに与えたおもちゃの人形。
この基本的な設定は一緒だが、オリジナル版と根本的に違う部分がある。
本作のチャッキーは、ネットワーク機能に加え学習能力も備えているAI搭載のバディ人形なのだ。
しかし、アンディに与えられだバディ人形には安全対策に施された機能が無効化されているという欠陥があった。
アンディを所有者と認識したバディは、何故か自分を勝手にチャッキーと命名。
アンディに「死ぬまでまで君が親友」と歌い「僕たちは友達だよ」とささやくチャッキー。
孤独なアンディはチャッキーに夢中になる。
――ここまでがリブート版のチャイルド・プレイの冒頭なのだが……お分かり頂けただろうか。
80年代から本作までのオリジナル版では殺人鬼チャールズ・レイの魂がブードゥ教の呪術によって人形に魂を移し、復活するための体を手に入るためにアンディを執拗に狙う。
そのため、邪悪な大人というのがオリジナル版のチャッキーの正体だった。だが、リブート版のチャッキーは正真正銘「本物の人形」。しかも安全機能が無効化されている「善悪の判断がつかない人形」なのだ。
オリジナル版チャイルド・プレイ
四作目の「チャッキーの花嫁」では生前の殺人鬼チャールズ・レイの恋人のティファニーも人形に。
リブート版チャイルド・プレイ
■ウッディとチャッキーの共通点
ウッディとチャッキー。どちらも子供のおもちゃで、持ち主をこよなく愛しているという人形という点は変わりない。そして奇しくもこの人形たちは「アンディ」と言う名の少年の最愛のおもちゃ。
次第にアンディに必要とされなくなり、おもちゃとしての役目を全うする事無く、最終的にはアンディと決別する事になる。
この決別をどう乗り越えるかで、2体の明暗をはっきり分けた。
ウッディはアンディとの別れを前向きに受け入れ、新しい世界に踏み出す。しかしチャッキーは拒絶。アンディの周りの人間だけでなく、アンディ本人も殺して2人だけの世界を作ろうとする。
ウッディは光の世界へ。
チャッキーは闇の世界へ。
途中までは同じだったはずのウッディとチャッキーのルート。
ウッディはどうやってヤンデレ殺人人形の未来を回避出来たのか?
私的に考えた仮説はこうだ。
【THEヤンデレ回避!その①】
■ウッディは自分がおもちゃである事を自覚していたから回避出来た。
ウッディはアンディを愛している部分もあったが、おもちゃとしての誇りを忘れなかった。つまりアンディの親友を自負しながらも、おもちゃとしての自分の現状を受け入れていたのだ。
一方チャッキーはまっさらゆえ、自身がおもちゃという自覚が無い。
初期化された状態に近いチャッキーにあるのは「アンディのたった1人の親友」というたった一つのアイデンティティ。
アンディこそチャッキーのすべて。
ウッディはおもちゃとしての自分を自覚している事に対して、チャッキーはアンディと対等な存在であると信じ込んでいた。
自分と対等だから自分と同じ感情をアンディに要求するし、自分と同じ感情をアンディに他者が持つ事は許さない。
だからこそ、チャッキーは近所のおばあちゃんがアンディに冗談で言った「私とアンディは親友よ」というひと言にすら激しく嫉妬し「アンディの親友はボクだけだ!」と憎しみを込めておばあちゃんを殺したのだ。
強火同担拒否のガチ粘着ヤンデレ、アンディ担チャッキー 。
字面のパワーが強過ぎる。
でも、ウッディだって嫉妬しなかったわけではない。
当初、アンディの新たなお気に入りになったバズ・ライトイヤーに対して嫉妬し、追い出そうとする。
しかし共にアンディを楽しませたいという気持ちを理解し合い、最終的にはかけがえのない親友となった。
そう、アンディとは違う、もう1人の親友。
ここに2つめの違いがある。
【THEヤンデレ回避!その②】
■ウッディには仲間がいたから回避出来た
「アンディしかいない、アンディしかいらない」と世界の中心でアンディへの愛を叫ぶチャッキーと違い、ウッディにはバズを始め、ボー・ピープやハム、Mrポテトヘッドなど自分の事を頼りにし、時には叱責してくれるおもちゃの仲間がいた。
ウッディもアンディを盲目的に愛している時代もあったが、仲間たちがいたおかげでチャッキーの様な強火なヤンデレにならずに済んだのだろう。
【THEヤンデレ回避!その③】
■ウッディはちょっと大人だったから回避出来た
なんと言っても20年以上おもちゃをしているウッディと作られて1年も経っていないチャッキーじゃ、倫理も感情も成熟の差があり過ぎる。
しかもチャッキーは倫理観のリミットを外された欠陥品。
スプラッタ映画を観てアンディが喜んでいればそれが良い事だと思うさ。
ママの彼氏にアンディが虐められてれば、彼氏を排除しようと殺すさ。
アンディを独り占めしたいあまり、アンディに関わる人間全てを皆殺しようとするさ。
しょーがないよね~、赤ちゃんなんだし。
アンディのためなら頼まれてなくても見守るし、アンディを傷つける奴は懲らしめるし、アンディを大切にする奴も大切にするウッディ。
それに対してアンディのためなら頼まれてなくても何でもするし、アンディを傷つける奴は殺すし、アンディを大切にする奴は自分以外許せないからやっぱり殺すチャッキー 。
いや、これはチャッキーが悪いワケじゃない。
もしも、チャッキーに善悪を教えてくれる大人が身近にいれば……もしかしたら……。
【THEヤンデレ回避!その④】
■まともな人間の大人がいた
ざっとアンディ&チャッキーの周りにいる大人を思い浮かべてみた。
チャッキーを返品せずにちょろまかしたアンディのママに実は妻子持ちだったママの彼氏、アパート全室に盗撮カメラを仕掛けてる管理人。
……だめだ、アンディの周りには基本クズの大人しかいなかった。
数少ないまともな大人だった近所のおばあちゃんはチャッキーに殺されてしまう始末。
その点、アンディ&ウッディの周りの大人達は善良と言い難い人達も多いけど、一般的な感覚を持ち合わせている大人も多い。
こっちのアンディのママは幼稚園におもちゃを寄付したり、良好なご近所づきあいをしていたり、子供の心に寄り添ってくれたりと良きママに思える。環境も運命だと考えると、チャッキーはなるべくして殺人人形になったのかも知れない。
悲しいけれど、これがB級ホラー映画なのよね。
■最後に
もしかしたらチャッキーは、ちょっと運命が変わっていればウッディの様に子供たちの憧れのヒーローになっていたかも知れない。
そして逆にウッディだって、ちょっと運命が変わってしまったら殺人人形になっていたかも知れない。
トイストーリーではウッディがアンディに別れを告げた。
チャイルドプレイではアンディがチャッキーに別れを告げた。
『トイ・ストーリー』と『チャイルド・プレイ』。
この2作品は視点を変えたら「子供とおもちゃが冒険を経て大人になるジュブナイル映画」なのかも知れません。
……と感傷的な気持ちに浸りつつ、言いたい事を書き散らかせたので、サイコーにキュートな強火同担拒否のガチ粘着ヤンデレ殺人人形チャッキーにまた逢える日を夢見て、大変満足して今夜は寝ます。
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