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私は本屋のアルバイトだった。しがない本屋のしがない学生アルバイト。 大学でも地味でぱ…
笛が鳴る。 彼女の手が、足が躍動して、一迅のオレンジの風のように走り抜けていく。その…
男は後ろをやけに気にしながら歩き、ある小路の入り口に立つと、殊更に警戒心を剝き出しにし…
病室の窓から外を眺める。青空に無数の魚影のような雲が泳いでいる。 午後のロードショー…
世界には空に穴の空く場所があって、その穴の中には空色をしたダイヤモンドが眠っている。 …
波打ち際に貝殻が転がっていた。押し寄せては引く波に弄ばれ、ころころ、ころころと転がった…
顧問の黒田しづねが文芸部の部室を覗き込むと、鷺橋美織だけがいて、彼女は机や椅子を雑巾で拭いていた。 「なんだ、鷺橋さん、一人なの」 ああ、黒田先生。と美織は額の汗を腕で拭うと、「そうなんです。でも、部長もすぐ来ると思います」と笑いかけた。 黒田はこの高校の卒業生で、ベテランの多い教師陣の中では三十代前半と比較的若いことと、愛嬌のある顔立ちで、馴染みやすい気さくな性格から「しづちゃん」と呼ばれて生徒から愛されていた。来月結婚する予定とあって、名字が黒田から変わってしまうこ
■前回までのお話はこちら■本編 そのホールは古びていた。あちこちの壁に雨だれが見られたし…
■前回のお話はこちら■本編 牧場の中は寂れていた。日曜日の、しかもこんなにも天気のいい昼…
ナルミは街の失せ物管理事務所で働いている。 週四日勤務。時間は八時から十六時まで。土…
わたしが生まれたのは、小雪が舞い散り始めた、明け方のことでした。 生まれた時、母は一…
治癒者(ヒーラー)なんて必要ないから! 茜は上等なカシミアのスーツを着た、一見セール…
■まえがき子どもがサッカーをやっているので、それにちなんだ小説を書いてみました。スポー…
※これは「 #青ブラ文学部 」の「港」のお題小説です。 二人の男が向かい合って立っていた。姿かたちはまるで違うのに、二人とも腕組みをして、反対方向に首を傾げているせいで、鏡写しに見えた。ユニゾンの唸り声が二人の間から上がる。 「参ったな」、言葉と感情がシンクロして同じ旋律を奏でた。 男たちの目の前には三本の通りが伸びていた。彼らはその辻に立って、困った困ったとただ口にしては相手をけん制するように互いに盗み見る。 東に伸びる通りはバーや飲み屋、飲食店が多く建ち並ぶ歓楽街