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『幸せになる勇気』 言うは易く行うは難し

「この考えを実施できれば、人生が変わるかもしれない」。

読書をして、そのような思いを抱いたことのあるひとは多いのではないだろうか。とはいえ、そうは問屋が卸さないというのが現実である。

本書に限らず、本に書かれている内容を体得するのは難しいものだ。
さらに、自分の実践がどう間違っていたのかを知るすべもないのだから、なおさらだ。

この本は実践後の間違いがわかる稀有な一冊である。

本書『幸せになる勇気』は、アドラー心理学の入門書となる『嫌われる勇気』の続編である。アドラーの考えに感銘を受け、新たな人生を歩んだ青年が再び哲人のもとに訪れる話だ。

教育現場でアドラー心理学を実践するも、つまずき、苦悩する青年。
その青年の姿はまさに、読書をして、実践したものの、体得できずに悩む読者が思い浮かぶ。

では、この青年は実際に何が足りなかったのか。
解釈間違っていたわけでも、理解が乏しかったわけでもない。
それは、「人生で最大の決断」をしていなかったのだ。

人生で最大の決断とは、「愛のタスク」に向き合うことだ。

アドラーは、「人の悩みはすべて、対人関係にある」といい、「人の喜びもまた、対人関係から生まれる」と説く。

そして、対人関係において取り組むべき課題である「人生のタスク」を提唱する。これらは、仕事のタスク、交友のタスク、愛のタスクの3つである。

それぞれのタスクはどのような態度で他者と関わるかで、関係性の築き方が異なるという。

仕事のタスクは「わたしの幸せ」を追求すること。
交友のタスクは「あなたの幸せ」を追求すること。
愛のタスクは「わたしたちの幸せ」を追求すること。

愛のタスクに向き合うこと、他者を愛することで、
人は自己中心性から脱却し、自立を成し遂げ、他者への貢献感を感じることができる。そうすることで、人は幸福感を得られるという。

著者の一人である岸見氏は、主夫としてして育児中にアドラー心理学との出会ったという。子育てを通じて、アドラーの思想を実践し、愛することのむずかしさを理解したからこそ、アドラー心理学が理解できたという。

『幸せになる勇気』では、教育を題材にされているが、著者の実体験や想いが哲人のコメントから感じることができる。

この本は、青年のように前書『嫌われる勇気』を読み、実践するも、つまずいてしまった人こそ読んでほしい。

『嫌われる勇気』を読んだことがなくても、今の自分に幸せを感じれない方にはオススメだ。

ここまで本書の紹介をしてきたが、これらを理解するだけでは、不十分であると感じる。なぜならば、理解するだけでは、本書の青年のようになると思うからだ。

最後に、回答が本書の冒頭にあるので、紹介する。

あなたも、他のどんな人も、幸福へと踏み出すことができます。ただし幸福とは、その場に留まっていて享受できるものではありません。踏み出した道を歩み続けなければならない。

ぜひとも、『幸せになる勇気』を片手に、歩みを進めてみてほしい。


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