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書評講座 Vol. 2

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課題書: 1)『掃除婦のための手引き書』- アメリカ、ルシア・ベルリン著、岸本佐知子訳、講談社、2)『ハムネット』- イギリス、マギー・オファーレル著、小竹由美子訳、新潮社
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#ルシア・ベルリン

【書評】心を調律する音叉のような声『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン著|岸本佐知子訳

本が好きで物語が好きで言葉が好きで、だから曲がりなりにも文章にかかわる仕事をしているのだけれど、たとえば好きな人に長い間ウソをつかれていたことを知ってしまったとか、一緒にくらす猫の病気に気がつけなかったとか、だれかが怒鳴られているのをずっと聞いていなくてはならなかったとか、突然の暴力にさらされたとか、何気ない一言で人を傷つけてしまったとか、だれにも言えない秘密ができてしまったとか、そういうことが積み重なって心が摩耗してしまうと、たとえずっと読みたかった本を手にとりページをめく

洗剤や消毒の匂いが漂う『掃除婦のための手引き書』

第2回目の書評講座は4月中旬だったのですが、ようやく書き直しをここに掲載することができました。「書き直し」、講評と合評で心に残ったコメントと意図、そして「修正前」の順番で載せます。 書き直しバージョン  本書を手に取る人はきっと『掃除婦のための手引き書』という不思議な題に興味を惹かれるだろう。ところが、表紙の写真は掃除婦らしからぬ美しい女性。小粋に煙草を指に挟んだまま、微笑を浮かべて遠くを見つめる目は達観し、何事も見逃さないような印象を与える。この女性が著者のルシア・ベル

「掃除婦のための手引き書」 書評 

豊崎由美さんを講師にお迎えした書評講座第二回に参加しました。2つの課題図書のうち、こちらは「掃除婦のための手引き書(ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 講談社)」のために書いたものです。もう一冊の「ハムネット」の書評もこちらに載せておきます。 以下、まず、講評後に手直ししたものを載せ、その下に講評前のものといただいたコメントを載せておきます。 講評後バージョン  後悔の無い人生を送れる人が果たしてどれだけいるだろう。あの時ああしていたら、ああ言っていれば、言わなければ、行