特別なレシート
財布が分厚くなっていることに気がつき、中身を整理することに。
財布のお札を入れるスペースには、レシートやら、餃子1皿(6個入り)が100円引きになるクーポンやら、たい焼き屋のスタンプカードやら、去年行った大塚国際美術館の入場券やらが突っ込んでありました。
よくもまあ溜め込んだものだと、自分のことながら呆れます。期限切れのクーポンはまとめてゴミ箱へ。こだわりがないので、ポイントカードもいくつかは捨てることに。
ただし、レシートは確認してから捨てます。
というのも、私には特定のレシートをとっておく習慣があります。コンビニや飲食店などのものは躊躇なく捨ててしまえるのですが、持っておきたいものもあります。
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最近やり始めたのですが、本を買った時のレシートは捨てずにとっておきます。スクラップブックなどに貼ったりはせず、買った本に挟んでいます。
栞がわりにするのではありません。本を買った店と日時がすぐにわかるようにするためです。
大した目的はありません。気まぐれで本を読み返す時、挟んであるレシートを見て、その本を読んだ当時の記憶をぼんやり思い出し、1人で懐かしむのです。
「この本はあそこのタリーズの片隅の席で読んだっけな」とか、「この本は愛知県にいた時に買ったっけな」とか。
そういった記録自体は専用のアプリでつけているのですが、当時のレシート現物を捨ててしまうのがもったいないと感じたのです。
実は、作家の池井戸潤さんも同じことをされていたそうです。ある時インタビュー記事を読んでそのことを知り、勝手に親近感を覚えました(だいぶ前の記事なので今でも続けられているかはわかりません)。
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昨年、私にとって残念なことがありました。私がよく利用していた書店が閉店するという記事を新聞で見つけたのです。
そこが閉店したことにより、古本屋を除いて、街中の独立した書店はすっかり無くなりました。紙の本を読むのが好きな私にとっては本当に辛いです。
最近は通販や電子書籍が普及しているので仕方がないことなのでしょうが、私が魅力を感じるのは紙の方なのです。
閉店の2日前に、足を運びました。明後日になれば閉まっているのかと思うと、何とも言えない寂しさがこみ上げます。
新刊の棚をひと通り眺めたあと、中古本の棚へ。この書店に来た時は必ず、そこで掘り出し物を探すのを楽しみにしていました。
ここが閉店したら、これらの古本はどうなるのだろうと、ふと考えます。チェーン展開している書店なので別の店舗に運ばれるのか、あるいは売却されるのか。いずれにしても、紙の本が好きな人の手に渡って欲しいです。
しばらく物色して、連城三紀彦さんの文庫本を選び、レジへ移動。会計を済ませて、受け取ったレシートにはこんな文面がありました。
"7年間のご愛顧ありがとうございました
〇〇〇図書はこれからもがんばります!"
店を出た後、つい立ち止まってレシートを取り出し、もう1度そのメッセージを見て、爽やかな気持ちになりました。こういう心遣いは何だか良いなと思いました。
通販や電子書籍は確かに便利ですし、否定するわけではありません。ただ、自分の足で書店へ行って本を買うと、こんな特別なレシートをもらうという体験もできるのです。
もちろん、このレシートは大切にとってあります。普段は気にせず捨ててしまうものも、時には思い出の品になることがあるのです。
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