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フラワーさん

世界中の悪い奴を一挙に集めて肉団子にしてこねてあげようきっと楽しいぞうなんて思たのよ、すぐそこにはベニヤ板の市松人形が置いてありすっとこどっこいの格好でうずくまってる。いざ出陣という掛け声隅から隅まで軍隊アリの応酬、二十歳の駆け引き、夢の中の砦など、あらゆるハーゲンダッツの原材料が目の前で焼かれては灰になって消え星空を覗けば青い光のもと、多くの市松人形が唇をはれぼったくさせながら星になってキラキラと竹林に落ちて1000年眠る。うさぎの歯の欠片、肉団子の中の軟骨、白い欠片と青い欠片を混ぜるとアスファルトの下から菊とかぶの根っこが我先にと太陽を目指してセノビック。私にはあれがある、あのような物事はどこにあるのか、あれがある、耳元でささやく悪魔の声に、ラッパで喧嘩を吹っ掛けるのはいったい誰それは金髪のセレーヌの肩甲骨、むかで、とんびなどの名もなき俳優たちで何はともあれ向こうへ行く行く行くフルーツポンチを喰っては吐いて、脈拍数1、流れる巌、はるかなる海チャイナ娘卵かまきりゑひもせすん、コロナ抹茶寿司

精神科医のF博士は手紙から目を離した。これは「フラワーさん」と名乗る人物が自分につきまとっており、支離滅裂や悪口雑言を紡いで止まない、生活に支障をきたすので何とかしてほしいという依頼をしてきたとある患者の記録であった。

フラワーさんの言葉はかくも意味不明、摩訶不思議な代物であった。すでに彼の診断はつきそうだがいったいどうしたものか?F博士は考えた。彼には「フラワーさん」の話がどうも意味深長なところがあるように感じられたのである。

F博士は患者を呼んだ。患者はすぐにやってきた。

「今もいますよ」患者は言った。

「今なんつってるの?」「長崎鼻毛まんじゅうって言ってますよ。」「君、今度からその言葉をなるべく途切れなくメモしてきてくれないか?なんだか君の『フラワーさん』が、何かを主張しているような気がするんだ。なんかね、こう、普通の幻聴とは違うようなんだ。どうも文学的というか・・・」

「いいですよ」

で、結果はこれである。この手紙はことごとく何の関連もない言葉が意味なく羅列されているが、どうも何かの暗号になっているような気がする。何か大切な、生きてる人間が知りえないメッセージを含んでいるような気がするのである。

F博士は考えた。考えすぎて疲れた。いつのまにか眠った。するとこんな夢を見た。

それはアリの夢だった。戦争をしていた。真っ先に敵陣に向かう奴、反対方向に逃げ出す奴、見方を殺す奴、もうめちゃくちゃだった。その様子を彼は上から眺めていた。笑いながら。笑い転げながら、一匹のアリを拾ってその首をひきちぎった。アリは動かなくなった。博士は笑った。また一匹、首をひきちぎろうとつかみ上げた時、アリは彼の指を噛んだ。いたいっ、ひいっ、やられた。毒アリだった。指がむらさき色になる。真っ先に耳が腐ってゆく。心臓が途切れ途切れになり、胃から茶色い液体を吐き出す。吐瀉物にアリが群がる。ああ、飢えている、生命は飢えている。目が覚めた。



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