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#1000文字小説

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小さな小さな箱の中から、無限に広がる世界をあなたに。
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#小説

物書きを自称する人

物書きを自称する人①: ベルトコンベアーの上に載せられたカップラーメンの箱の上に、緑色の…

一作
2年前
14

マイルドセブン

テニスコートの上は真夏の光にさらされ、余計な蒸気が肌に不快な潤いを与えるような、そんな真…

一作
2年前
4

この世で最も怠惰な趣味

斜面を下れば下るほど、私は自由になってゆく。高校生の初化粧、友だちから貰ったファンデーシ…

一作
2年前
15

宵闇の こもりうた

隣の奴らが合唱をしていてうるさいので壁をガンガンに叩いてやろうと万年床を捲り上げた。午前…

一作
2年前
10

路傍の椅子

手心を知らない季節風にやられ、鉄の脚は錆びつき、ニスが剥がれ落ちた台座のベニヤ板が、空か…

一作
2年前
16

ただ一人、生き残った男の日記

人間のいなくなった世界。夜は本当に真っ暗闇である。何一つ見えない。昨日は月も出ていなかっ…

一作
2年前
13

神々もなんだかんだで大変だ

キリストがこの現代世界に降臨してきて、まず始めに着手したいと思ったのは金儲けであった。彼は「庶民の敵」という菓子を作って道ばたで販売を始めた。それは何の変哲もないもので、小麦粉と砂糖とココアとバターを適当にこねくり回してロケットの形にして焼いただけの、なにやらクッキーらしき怪しき食べ物だったが、卓越したネーミングセンスが人々の心を打ち、彼の商品はまたたく間に大ヒットした。 ロン毛で、顔の彫りがやたら深くて、澄んだ目をした外国人が、道ばたの露店で「庶民の敵」という名の菓子を売

偏差値99の難問

問. 以下の手記を読んで、それに対するもっとも適切な答えをa~dから選びなさい。 相変わら…

一作
2年前
34

神亡き時代の生き方のお話

「とにかくよ、身体が若くてぴちぴちしてるときに死にたいなんざ贅沢なんだよ」 居酒屋で隣の…

一作
2年前
12

人間の硝子

一枚硝子が冷たい外気と温かな部屋の空気との境界線を引いておる。外は寒い。風がぴゅうぴゅう…

一作
2年前
7

THE CAPITAL

「孤独な人ほど一人で楽しむクセをつけている。孤独を楽しめるようになれたことは、一生の財産…

一作
2年前
8

大地の何か

土を食べると血の味がする、なんて言ってた奴がいた。 そいつはぐっと力を入れればぽきっと折…

一作
2年前
5

オトナ

チャイムが鳴った。今日の授業はこれまで、という先生の声が聞こえてくる。 今日もこれで終わ…

一作
2年前
3

フラワーさん

精神科医のF博士は手紙から目を離した。これは「フラワーさん」と名乗る人物が自分につきまとっており、支離滅裂や悪口雑言を紡いで止まない、生活に支障をきたすので何とかしてほしいという依頼をしてきたとある患者の記録であった。 フラワーさんの言葉はかくも意味不明、摩訶不思議な代物であった。すでに彼の診断はつきそうだがいったいどうしたものか?F博士は考えた。彼には「フラワーさん」の話がどうも意味深長なところがあるように感じられたのである。 F博士は患者を呼んだ。患者はすぐにやってき