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#1000文字小説

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小さな小さな箱の中から、無限に広がる世界をあなたに。
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記事一覧

物書きを自称する人

物書きを自称する人①: ベルトコンベアーの上に載せられたカップラーメンの箱の上に、緑色の…

一作
2年前
14

盗作詩

唐突だが、たまたま拾った百均のメモ帳に書かれた言葉ほど、面白いものはないと思う。それは太…

一作
2年前
15

マイルドセブン

テニスコートの上は真夏の光にさらされ、余計な蒸気が肌に不快な潤いを与えるような、そんな真…

一作
2年前
4

この世で最も怠惰な趣味

斜面を下れば下るほど、私は自由になってゆく。高校生の初化粧、友だちから貰ったファンデーシ…

一作
2年前
15

宵闇の こもりうた

隣の奴らが合唱をしていてうるさいので壁をガンガンに叩いてやろうと万年床を捲り上げた。午前…

一作
2年前
10

路傍の椅子

手心を知らない季節風にやられ、鉄の脚は錆びつき、ニスが剥がれ落ちた台座のベニヤ板が、空か…

一作
2年前
16

ただ一人、生き残った男の日記

人間のいなくなった世界。夜は本当に真っ暗闇である。何一つ見えない。昨日は月も出ていなかった。雲もなかった。あの星空。前の世界ではあんなの一回も見たことない。いや、見れるはずもないか。新宿も渋谷も、夜はギラギラだったもんな。 それは宇宙だった。まんま宇宙。びっくりするだろ?だって空を見上げると、黒い部分の面積よりもむしろ輝いている星の部分の面積が多いんだぜ?光り輝く粒々の合間に、宇宙の本来の姿である真っ暗闇の黒色がちょろちょろと現れているのさ。まるでシャワー・ルームのカーテン

神々もなんだかんだで大変だ

キリストがこの現代世界に降臨してきて、まず始めに着手したいと思ったのは金儲けであった。彼…

一作
2年前
6

偏差値99の難問

問. 以下の手記を読んで、それに対するもっとも適切な答えをa~dから選びなさい。 相変わら…

一作
2年前
34

下肢の木

信じてはくれないだろうが、いや、信じてほしい。やはり信じてくれないか。だが信じられること…

一作
2年前
5

犯罪的人間

人間をつかまえたいんだ その子は言った。 JRの高架下、一糸まとわぬ姿で宝焼酎をラッパ飲み…

一作
2年前
14

神亡き時代の生き方のお話

「とにかくよ、身体が若くてぴちぴちしてるときに死にたいなんざ贅沢なんだよ」 居酒屋で隣の…

一作
2年前
12

人間の硝子

一枚硝子が冷たい外気と温かな部屋の空気との境界線を引いておる。外は寒い。風がぴゅうぴゅう…

一作
2年前
7

夢小説らしきもの

めくれあがってゆく感覚により目を覚ました。勤め人としての本能が蘇ったのは幸運であった。今は何時?朝の10時。 冷や汗がぶわりと腋の下から流れ出る。今日が日曜で仕事が休みであるという事実にはとっくのとうに気がついていたが、背中に張り付いた唐辛子入りのスライムを剝がそうとするときのような不快感は拭い去れない。 最近馬鹿げた夢を見る。夢ならばいつも見ているのだが、最近の夢は違う。戦国時代の甲冑を着た女性が並んでいる。まるで発売前のアイフォンを手に入れるために徹夜して並ぶ人のよう