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【乱読という本の読み方】圧倒的に読書量を増やすことができる『乱読のセレンディピティ』

本の読み方には、本をじっくり読む精読。そして、速く読むことを良しとする速読があります。

しかし、じつはそのどちらでもない「乱読」という読み方をすすめている読書家はけっこう多くて、その一人が外山滋比古さんです(『思考の整理学』という本が超有名)。

乱読とは何なのか?今までとは少しちがう本の読み方を、『乱読のセレンディピティ』という本の感想とともに紹介したいと思います。

「本は丁寧に読むもの」という価値観を崩していく

本書のタイトルにもなっているセレンディピティ(serendipity) とは「思わぬものを偶然に発見する才能」を意味していて、読書をとおして思わぬ発見をすることがテーマになっています。

この本がすすめている「乱読」とは、ひとことでいえば「気になった本を手当り次第読んで、おもしろいページがあれば目をとめる」という読み方です。

乱読というとちょっとイメージが悪そうな印象を受けますが、この本を読むと精読や遅読の対義語として、乱読という言葉が非常にしっくりきます。

これまでは(というか、今でも)一般的にも「本は丁寧にじっくり読むべきだ」という価値観が支配的でしたよね。

もちろん丁寧に読むのが悪いことではありません。ただ、丁寧に読むというのはスピードが遅くなりがちなので、弊害が生じるのも確かです。

辞書をひいたりして、流れをとめてしまい、むやみに時間をかけると、ことばをつないで意味を成立させている残曵が消えて、わかるものがわからなくなってしまうのである。

「残曵(ざんえい)」というむずかしい言葉が使われていますが、「残像」と置き換えてかまわないと思います。

本の内容がぜんぜんわからずに、辞書を引いたり、調べ物をしながら読んだ経験ってありますか。

僕は中学生のころ、推理小説に出てくるわからない漢字を片っ端から辞書で引いてました(笑)

たしかに、それをやると漢字とか単語の意味は覚えられるんですよね。

でも、文字を流れるように読むことで得られていた爽快感というか、意味がスーッと頭の中に溶け込んでくる感じが失われてしまうのもまた事実。

だからこそ、なにもかもじっくり丁寧に読むのではなく、自分が面白いと感じたページに目を留めて読んでみるという乱読が良いというわけです。

僕は基本的に乱読に賛成なんですが、小説とか文芸書については適用しづらい読書術なのかなと思います。

何度も本を読み返すのが必ずしも良いとはいえない理由

乱読の効果や効用を紹介だけでなく、読書そのものに対する考え方についてもハッとさせられる記述が非常に多いのが本書の魅力でもあります。

「わからない本でも、何度も読み返せば理解できるようになるのか?」という問いに対して、著者は以下のように書いています。

自分の意味を持ち込むから、わかったような錯覚をいだく。読み返すたびに、読者のもち込む意味が増える。そうして、ついには、自分のもち込んだ意味ばかりのようになる。それをおのずからわかったと思い込む。対象の本を自己化しているのである。

「まさにそのとおりだ…」と膝を打ってしまうくらい、納得する考え方でした。

わからない本って、書いてあるままを理解できないから、どうしても自分の頭の中で独自の解釈をしようとするんですよね。

それを「自分なりの考え方が身につく」といえば聞こえはいいけど、実際に本が伝えている本当の意味は理解できない可能性が高いですよね。

だから、わからない本を何度も読み返して理解しようと務めるのは、デメリットも多いんじゃないかと思います。

それをやるのではなく、その本を読むための周辺知識を入門本などで身につけていったほうが、時間はかかるけど正確な読み方ができるはず。

乱読に最適なのは新聞の見出し読み

この本では新聞の見出しを読むことを、乱読の入門テキストと位置づけています。

短い時間で、新聞を読むには、見出し読者になるほかない。見出しだけなら一ページを読むのに一分とかからない。これはと思うのがあったら、リードのところを読む。それがおもしろければ終わりまで行く。

見出しで、記事内容を推測するのはかなりの知的作業であるが、頭のはたらきをよくする効果は小さくない。新聞は乱読の入門テキストとしてうってつけである。

新聞の読み方は社会人にとって大きな課題だったりするわけですが、その新聞を乱読のテキストとして活用するのはたしかに実用的です。

おおむね賛成なのですが、一つ気になるのは以前ほど新聞が一般的に読まれていないということです。

おそらく、最近は新聞を購読してない人が多いし、読んでいるとしても電子購読していると思います。

新聞を読んでいる人にとっては意義のあるやり方だとは思いますが、僕はそれよりも「自分の興味があるテーマの入門書」を2〜3冊買ってきて、それを乱読したほうが身につきやすいと思います。

アンチ・読書ノート派には朗報

読書ノートについても一般的には良しとされていますが、外山滋比古さんは懐疑的です。

本を読んだら、忘れるにまかせる。大事なことをノートしておこう、というのは欲張りである。心に刻まれないことをいくら記録しておいても何の足しにもならない。書物は心の糧である。

ふむふむ、この意見にも僕は賛成です。というのも、僕自身、読書ノートというものに憧れながらも、書いたノートを上手に活用できずにいるからです。

読書ノートを取っていると、たしかに振り返りには最適化もしれないけど、「読書ノート取る時間があるんだったら、他の本を読みたいよ」と思ってしまうんですよね。

それになにより、過去に書いた読書ノートを見返したことがほとんどない

結局、本当に良いと思えるものって、本を読んだだけで頭の中に残り続けるんですよね。ノートを取るまでもなく。

読書ノート礼賛の風潮に嫌気が差している人は、この本が強い味方になるはずです(笑)

どんなに頭が良い人でも、本選びには失敗する

読書に慣れている人はそこまで心配ないと思うのですが、読書初心者の人や読書に苦手意識を持つ人は「本選びで失敗したくない」という思いが強すぎる傾向があります。

せっかくお金を出して買うんだからハズしたくないという気持ちはたしかに僕もわかります。

でも、買う本すべてが面白いというのは、不可能に近いです。

僕は知識的にはごく一般的な人間なのですが、頭の良い人でもそれは同じのようです。

いくら賢い人でも、乱読すれば、失敗は避けられない。しかし、読めないで投げ出した本は、完読した本とはちがったことを教えてくれることが多い。

著者の外山滋比古さんはお茶の水女子大学の名誉教授なんですが、これほど賢い人でも本選びに失敗するわけです。

だから、「買う本すべてを当てよう」とするのは無茶な話。

その意識で本を買っているとハズレたときの落胆が大きくなるので、おすすめしません。

ハズレの本を買ってしまったら「なぜ自分はこの本を読めなかったのか?」と冷静に分析しましょう。

それをすれば、自分の強みと弱みがわかるので、本選びの精度が上がります。

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