対話の質を高める
「1on1ミーティング」を近年多くの企業が導入されていますが、人と組織の成長を目指し、対話の質を上げるためのマインドセットと技術がわかりやすく解説された本ですね。
最も印象深かったのは、「部下の経験学習を進めることが上司の役割」という点です。
「経験学習」とは、経験を通じて学んだ内容を、次の経験に活かすプロセスを指します。
人の成長を決める「学びの要素」は3つあり、
70%:仕事経験から学ぶ
20%:他者から学ぶ
10%:研修・書籍から学ぶ
という比率になっているそうです。
経験しただけでは十分な成長にはつながらず、経験を学びに変換するプロセスに注目し、1on1を活用することが重要となります。
そして、1on1の前提となるのが、「評価する」から「一緒に探求する」という上司のマインドセットの転換です。
組織・人材開発に取り組まれている著者は、さまざまな企業の経営層に「対話の質」について話した際、「生ぬるい」「遠回りのアプローチ」「あなたはどうありたいですか、という質問は気持ち悪い」という反応があったそうです。
しかし、何度も対話を重ね、上司と部下とのあいだで何が起こっているのかを探求し、部下がチャレンジすることで生産性が上がる、ということを理解していったといいます。
私もこれまで「仕事は見て盗め」というカルチャーで生きてきたため、「どうありたいか」を最初に聞かれたときは、正直気持ち悪いと感じてしまいました。その体験は、なぜ今1on1が求められているのかを考え、学び始めるきっかけになりました。
部下の才能と情熱を解き放ち、成果を上げ続けられるチームをつくることが自分の役割であり、部下が成果を上げられない状況をつくっているのは自分かもしれない、という視点は、私の1つの道標となりそうです。
さらに、この本ではさまざまなテクニックが紹介されていましたが、特に私が取り入れたいと感じたのは、「シンプルな質問」を投げかけて相手が考える、という点です。
たとえば、
・最近、何が気になってる?
・他には?
・何を一番考えたい?
・それで、どうしたい?
・次は何をする?
と短くニュートラルな問いかけで対話を進め、最後は「次の行動」に重きを置くことが重要だといいます。
(私は話が長くなりがちなので、気をつけなければ...と思いました)
また、「なぜ」という質問をする際は、なるべく過去ではなく、未来を尋ねるときに使うとよいそうです。
仕事経験を振り返ることで学びに変換し、次の行動を一緒に探り、約束することで「1サイクル」とする1on1ミーティングは、今後の人と組織の生産性を高める大きなきっかけとなりそうですね。
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