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最高の支援

誰かを支援する、という行動は、顧客やチームメンバーとのコミュニケーションにおいて重要ですが、このプロセスを研究する「支援学」という領域があることを最近初めて知りました。

最高によかれと思って行った支援がなぜ失敗するのかを研究する組織心理学の創始者・エドガー・H・シャイン教授によると、支援者が陥りがちないくつかの罠があり、最も大きな原則は「相手を知らずに、支援はできない」ということです。

「余計なお世話」「おせっかい」「的外れ」は相手のためにならない、ということは何となく想像できますが、依頼者が抱えている問題の本質が見えていないことの方が多い、といいます。


その例として、著者は自身の小学生の娘のエピソードを紹介していました。

あるとき、娘が算数の宿題を手伝って欲しいと頼んできました。
仕事を中断し、宿題を手伝いましたが、娘はありがとうも言わず、ふくれっ面で離れていきました。
後日、また宿題を手伝ってほしいと頼んできたため「ちょっとおしゃべりでもしようか」と提案すると、学校での仲間付き合いについて話したがっていたことがわかりました。
娘は十分に話すことができ、気分がよくなったようでした。


支援の依頼の裏側には真の問題が隠されていることがあり、支援を始める際に大切なことは、1つの問題を前提とした質問で話を促さない、ということなのですね。

そこで著者が提案するのが、下記のような「純粋な問いかけ」と呼ぶ、依頼者の話に集中するプロセスです。

▼純粋な問いかけ
・続けてください
・どうなっているか教えてください
・どういうふうに手伝ったらいいですか?
・その例をいくつかあげていただけますか?
・詳しく話してくれますか?
・それが最近起きたのはいつですか?
・他に何か思い浮かぶことはありますか?


こうした問いかけから始め、依頼者に主導権を握らせ、問題を能動的に解決する立場を取り戻せるようにすることが、支援を失敗しないコツだそうです。

さらに、組織のチームビルディングの際、相互の支援関係をどう作っていけばよいかを紹介されており、組織行動学の第一人者であるエドガー・H・シャイン教授によると、

チームワーク = グループメンバーの相互の多様な支援関係

と定義され、成果を上げるチームとは、自分の役割を心得て、役割を果たすことが快いと感じるメンバーがいることだといいます。

そして、チームに入ったメンバーは、最初に下記の疑問を抱くことが多いそうです。


・このグループで、自分の役割は何か?
・このグループで、自分はどのくらい影響力を持つか?
・このグループで、自分の目標をどのくらい達成できるか?
・このグループで、メンバーとどのくらい親しくなれるか?


これらの疑問に満足な答えを得られるまで、メンバーは不安を感じて仕事に集中できず、上の空になりやすくなります。

そこで重要となるのが、チームリーダーの下記の2つのプロセスで、


1)支援が必要だと認識し、口に出して認める
リーダーは指示者ではなく、パートナーになれる能力が必要

2)「信頼を探り合う時間」を与える
関係性を構築し、互いに必要な支援について理解を深める


これらのプロセスを経ることで、チームメンバーは初めて仕事に没頭できるのですね。

生成AIによる業務効率化や自動化がさまざまな業種で進んでいますが、「信頼を探り合う時間」を短縮することは、おそらく難しいのではと思います。(この領域を効率化するAIができたら画期的ですね)

AI活用によって創出できた時間を、相互の支援関係の構築に回せると、生産性の向上に繋がりそうですね。

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