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顧客は安心・安眠を買う

会社を長く続けるために重要なことは、経営方針やマーケティング面の意思決定をする際、大口の優良顧客だけでなく、すべての顧客に対して些細なことにまで気を配り続けることだと言えます。いざという時に頼りにできる会社である、どのような顧客にでも力になるためなら喜んで余分の努力をする、という態度は今後のビジネスでさらに差別化につながる、と確信することがありました。

私の知り合いに、書籍のPRをされている黒田剛さんという方がいます。本が売れないと言われる時代に数十万部のベストセラーを何冊も生み出し、出版社のパブリシティ関係者で知らない人はいない有名人です。一体どのようなプロモーションでその成果を達成しているのか、という疑問を持った書籍の編集者の方によるインタビューのnoteを公開され、ご本人から共有いただきました。(そのnoteのリンクは下に記載します)

書籍PRのノウハウを6時間ものロングインタビューで語られていますが、その原点は売れない営業時代に出会った「IBMがなぜ成長したのか」について書かれたビジネス書だったそうです。noteでは書籍名は紹介されていませんでしたが、私は気になって探し、それらしき本を見つけました。(ご本人は「覚えていないけど、この本かも」と言っていました)

こちらの本は、IBMの本社マーケティング担当副社長を10年間務めたバック・ロジャーズによって1986年に書かれた書籍でした。IBMの年間売上高を100億ドルから500億ドルにまで伸ばして世界最高のマーケティング組織という評価を不動のものとし、「マーケティングの天才」「セールスマンのセールスマン」と呼ばれています。

どんな革新的な戦略を打ち出したのかと読んでみると、意外にも「IBMが今日の大をなす基礎となったのは、ごく簡単明瞭な信念と信条にすぎない。思いやりとか礼儀とか誠実といったことである」という内容でした。彼は顧客を訪問した際、製品を売り込むのではなく、ゆっくりと問題や関心事を考えてもらい、それを言葉に表す時間をたっぷり与えていたそうです。

そして、IBMでは営業だけでなく全ポジションの従業員に「顧客との関係」を明確に規定し、返事の電話をし損なう、約束に遅れる、お礼を言わない、買ってくれるのを当たり前に思う、といったことを許さなかったといいます。一方、ロジャーズ自身は、膨大な数の顧客を訪問し、帰ると必ず手紙を書き、面談の時間を割いてもらったことや仕事を与えてもらったことのお礼を述べ、話し合った事項やまとまった計画を要約して確認していたそうです。

顧客を一人でも得るためにニーズに常に敏感になり、時には製品と直接関係のないニーズでも核心をつく質問をして、その答えを注意深く聞く。マーケティングの観点では、本質的な価値を生まないカスタマイズ要求を受けてしまうリスクもありますが、それでも一見些細なことを徹底し、世界最高のマーケティング組織というブランドを確立しました。

彼の印象的な言葉の中に「1つのことを1000%よくやるより、1000のことを1%ずつよくやる。もう1押しの余分の努力を進んでする。よい仕事を確実にするためにも手を尽くす。その気持ちを顧客や仲間に立証してみせる」というものがありました。現在は「個」の時代と言われていますが、どのような働き方をしていても差別化になるのは、こうした顧客に対する態度であると私は思います。

こちらがインタビューのnoteです。
https://note.com/kaori_shimoi/n/n8b6b7b74b2db

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