効果的なフィードバック
多様化する職場の人材を育成するために欠かせない「フィードバック」の基本的な理論から実践法までが網羅された入門書でした。
人材開発の第一人者として知られる中原教授は、
「フィードバック」 = 耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと
と定義され、下記の2つの働きかけが成長を促すといいます。
1)情報通知
たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること
(現状を把握し、向き合うことの支援)
2)立て直し
部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動をふり返り、今後の行動計画を立てる支援を行うこと
(ふり返りと、アクションプランづくりの支援)
そしてフィードバックをするときに最も重要なのは「フィードバックから始めない」ことです。
まず相手の具体的な問題行動を観察し、「SBI」の視点から情報を集める必要があり、
S : Situation(どんな状況で)
B : Behavior(どんな行動をとり)
I : Impact(どんな影響をもたらしたか)
という3点を具体的に把握しておきます。
そしてフィードバックを始める時には、相手に「改善してほしいことがある」と目的をストレートに述べ、「一緒に話し合っていこう」「一緒に改善策を考えよう」と伝えることが重要になります。
上司のこの姿勢は、フィードバックを受ける側にとっていかに大事かを、私は社会に出てからずっと考えてきました。
私は大学卒業後の10年間、テレビ業界にいましたが、「相手の成長を願い、お互いの意思をリスペクトした上でフィードバックを行う」というカルチャーは、職場や業界全体でほぼゼロでした。
フィードバックする側が感情的に言いたいことだけ言い、信用関係を築く気のないマネージャーの多い組織では、あり得ない金額のコスト超過やケアレスミスが多発していました。
「マネジメントとはとても呼べない無責任な体制は、人・組織・社会のすべてをダメにする」と感じたことが、人と組織の関係について学び始めたきっかけであり、現在は「人と組織の成長」を支援する動画のご依頼を多くいただいています。
さらに、フィードバックの具体的な技術の中で印象に残っている点があり、著者の中原教授がフィードバックを始める際に心しておくべきこととして、
・腹をくくる
・相手から逃げない
・しっかり相手と向き合う
という決意が大切であり、「相手から目をそらさない」ことを指導されているそうです。
そして、フィードバックの技術としては、
・反応を受けたら、必ず返す
相手の言っていることをいったんリピートして受け入れてから、論理のほころびを指摘する
・耳の痛いことを言った後、無駄に褒めない
厳しい場になって罪悪感にかられても、フォローを入れると指摘が弱まってしまう
・嫌われることも役割
部下の仕事を立て直すためには仕方がない、と覚悟を決める
・ストレートに、しかし決めつけない
できるだけ客観的事実を伝える
などを紹介されていました。
フィードバックは上司と部下のどちらにもストレス度が高く、避けたくなりがちですが、組織論においては、
「ピーターの法則」 = 人は無能になるまで出世する
という言葉があり、「フィードバックを自ら求めにいく人材」こそが自分を成長させ続けるそうです。
人と組織の成長を最大化させるために、耳の痛いことを伝える技術と聞く技術は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルと言えそうですね。
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