鋤名彦名

純文学を読むのが好き。それに影響された創作小説を書いてます。雑記も少々。

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マガジン

  • 東京彩ふ文芸部

    • 39本

    書くのは、楽しい。 あなたも何か書いてみませんか? 2024年1月より、彩ふ読書会は文芸部活動を行います。東京会場の読書会に過去一回以上参加経験のある方でしたらどなたでも部員になれます。入部・退部は自由です。 入部お待ちしております!

  • 小説集

    純文学好きが書いた小説まとめ

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【小説】秘戯

 この部屋の角に置かれたクイーンサイズほどあるベッドは丁寧にベッドメイキングされていて、黒地の上に豹柄の帯をあしらったベッドスローが掛けられている。そのベッドのフッドボードの脇に置かれている縁の付いた黒く丸い天板で三本足のサイドテーブルの上に籐カゴのプランターカバーに入った小さな鉢植えがあり、何という名前の植物か分からないが、二方が一面のガラス窓となっている部屋を覆っている淡いベージュ色のカーテンの前にあるためか、その花びらの色がやけに映えて見える。その植物は萼片を中心にいく

    • スロー・ラーナーな語学体験

      「アルン スオス ダイ」  これはどこの言語で、何という意味かご存知だろうか。  正解はカンボジア語(クメール語)で「おはようございます」という意味。上記のカタカナ表記は正確な発音とは違うかもしれないが、私の耳が聞き取って覚えた発音で、実際も「アルン スオス ダイ」で伝わった。  これは私の最近の学びの一つである。  個人的なことだが、私の働いている職場は小さな食品加工工場で、そこのパート従業員の大半をカンボジア人が占めている。ほとんどの人は在住歴も長く、日常会話レベ

      • 【小説】薔薇の下で 《レトロスペクティブシリーズ⑧(終)》

        《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「薔薇の下で」  埋もれた記憶の中から蘇ってきたその若々しい肉体を、わたしは今から愛でようと思う。その若々しい肉体とわたしの交わりをこの場で公にするが、これが記憶の中にあった断片を繋ぎ合わせたものであるか、それともわたしの筆による空想の

        • 読書会の参加経験者が「読書会にまつわる50の質問」に答えてみた件について

          はじめに  読書会友人のshikadaさんが「読書会にまつわる50の質問」というのを作った。詳細はこちら。  企画段階でshikadaさんから声をかけてもらって、自分も質問作成に関わっているのだが、せっかくなので自分でも答えてみる。 「読書会にまつわる50の質問」 Q1. 読書会に参加し始めたきっかけは何ですか? A.本について話せる人と会いたかったから。 Q2. 初めて参加した読書会で紹介した本は何ですか?(課題本形式の場合、課題本は何でしたか?) A.村上龍の

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        【小説】秘戯

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        記事

          【小説】瑠璃子の舌 《レトロスペクティブシリーズ⑦》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「瑠璃子の舌」  楽しみにしていたプリキュアショーを見終えて興奮気味の瑠璃子の手を握り、私たちは園内にある売店でソフトクリームを買った。四歳になる姪の瑠璃子は少し右側に傾いた白い巻貝のようなソフトクリームを落とさないように両手で持ってベ

          【小説】瑠璃子の舌 《レトロスペクティブシリーズ⑦》

          【小説】ヘイズ 《レトロスペクティブシリーズ⑥》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「ヘイズ」  吐き出されたタバコの煙が視界を覆う。それは突如下ろされた紗幕のように僕と彼女を遮る。煙の粒子が躍りながら上へと昇っていく。霞んでいた彼女の姿が実像を取り戻し、再び僕の目の前に現れる。黒目がちな彼女の瞳。小さな額の上で真ん中

          【小説】ヘイズ 《レトロスペクティブシリーズ⑥》

          【小説】マリィ 《レトロスペクティブシリーズ⑤》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「マリィ」  そこに死があった。ひび割れた灰色のコンクリートの上に横たわるそれは、死そのものを自ら誇示するかのように存在していた。それはやや青みがかった彼の眼球の表面に、発光するもののように映った。彼はその場所へと導かれるように歩みを進

          【小説】マリィ 《レトロスペクティブシリーズ⑤》

          【小説】面汚し 《レトロスペクティブシリーズ④》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「面汚し」  浴室は甘い匂いで満ちていた。チョコレートソース、生クリーム、イチゴジャム、マーマレードジャム。多量に買い込んだそれらの製菓材料は一時間ほどでほとんど空になった。僕は手に付いたチョコレートソースを蛇口のお湯で洗い流す。脱衣所

          【小説】面汚し 《レトロスペクティブシリーズ④》

          【小説】泡と渦 《レトロスペクティブシリーズ③》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「泡と渦」  ここ数日でやって来ること。平成の終わり。令和の始まり。そして、締め切り。  そんな他人様にとっては締め切りなんて何のことは分からないだろうが、私は至極焦っているのである。読書会仲間と始めた文芸部サイト。一応部長を勤めている

          【小説】泡と渦 《レトロスペクティブシリーズ③》

          【小説】愛に、鬱血。 《レトロスペクティブシリーズ②》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「愛に、鬱血。」  いつ頃からだろうか、私は将とセックスをしてる時大体が正常位の時だけれど、私の首を絞めて欲しいとお願いするようになった。世間では窒息プレイだとか首絞プレイだとか言われる類の、いわゆるアブノーマルな行為だ。最初は気味悪が

          【小説】愛に、鬱血。 《レトロスペクティブシリーズ②》

          【小説】孕む 《レトロスペクティブシリーズ①》

          《レトロスペクティブシリーズ》とは  わたくし鋤名彦名がnoteで作品を公開する以前の、2019年から2021年までに「彩ふ読書会」の参加者有志で立ち上げた文芸サイト「彩ふ文芸部」にて公開していた自作の小説を再掲していく、いわば回顧展。 「孕む」  怖い夢を見た。それは私が彼以外の、しかも見知らぬ男に身体を許し、その男の子供を孕む夢だった。  私は彼を愛している。今こうして私の横で額にうっすらと汗を掻きながら微かな寝息を立てている彼の、その寝顔に私はとても愛おしさを感じ

          【小説】孕む 《レトロスペクティブシリーズ①》

          「小説を書く人に100の質問」回答集

          こんな企画を見つけたので自己分析も兼ねてやってみる。質問は以下のページから引用しました。 Q.1 筆名(ペンネーム)を教えてください。 A.鋤名彦名 Q.2 筆名の由来は? A.町田康『宿屋めぐり』の主人公の名前から。(元々はTwitterのアカウント名から流用) Q.3 主にどんな小説を書いていますか?(長編・短編・掌編など) A.掌編以上短編未満くらいの長さ。 Q.4 主にどんなジャンルの作品を書いていますか? A.純文学。 Q.5 作品はどこかで公開しています

          「小説を書く人に100の質問」回答集

          「文学フリマ東京38」にて

           二〇二四年五月十九日、東京流通センターにて行われた「文学フリマ東京38」に行ってきた。前回は彩ふ読書会メンバーとして出店側にも立っていたが、今回は純粋な来場者として参加した。ちなみに前回のイベントレポはこちら。  今回の文学フリマ東京には事前に出店を告知をしてた気になる参加者も居たため、前々から行くことはぼんやりと考えていたのだが、恐らく一人だと当日になって「やっぱり行くのめんど」となりかねないので、前もって読書会の仲間と一緒に行く約束をすることにした。  会場に着いたの

          「文学フリマ東京38」にて

          親譲りのホニャララ

           事の発端は友人との会話だったと思う。小説家の金原ひとみに娘がいるのだが、その娘が小説を読むのか、ひいては親の小説も読むのか、みたいな話をした。金原ひとみ自身も父親は翻訳家の金原瑞人氏で、父から村上龍や山田詠美の小説を薦めてもらっていたとどこかで読んだことがある。  私も読書会へ足を運ぶことがあり、そこで読書のきっかけを聞くことがあるが、親が読書をする人だったという答えをたびたび聞く。なんとなく「読書のきっかけが親の影響という人はどのくらいいるのだろう」という旨をX(旧Twi

          親譲りのホニャララ

          YOUは何しに読書会へ?

           ここ最近、読書会の新規開拓をしている。いつも行っている彩ふ読書会がここ数ヶ月間、東京での開催を休止しているので、せっかくだからこの期間に違う読書会へ行ってみようと思ったわけだ。  そこで私が参加したのは、東京読書倶楽部が企画する「BOOK & BOOZE! 自称読書家達の飲み会」と、エンタメを語ろうの会が企画する「小説限定読書会」の二つだ。 「BOOK & BOOZE! 自称読書家達の飲み会」はそのタイトル通り、レンタルスペースでお酒を飲みながら参加者の持ち寄った本を紹介

          YOUは何しに読書会へ?

          どん詰まり小説ハウツー

           突然ですが小説を書かれたことのある方にお聞きします。  あなたは小説の書き方をご存じですか?  私事ではありますが、私は何度か小説を書いたことがあります。読書会で知り合った仲間と文芸部を立ち上げ書いたものをネットで公開したり、その読書会が主導で始まった文学フリマ出店企画にも参加し、同人誌製作に関わったこともあります。そして公募の新人賞である文學界新人賞にも応募したことがあります。全くの素人ですが、小説の執筆経験のある私が、先の質問に答えるとするならばこう答えるでしょう。

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