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短編小説 ちょっぴりの贅沢

この短編小説は、2022.11.13 本と珈琲と〇〇
第六編「本と珈琲と焼き菓子」のイベントに合わせて
書き下ろしたものになります。
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ちょっぴりの贅沢

「ごめん、やっぱり俺ら別れよう」
「うん、なんかそんな感じしてた。
 短い間だったけどありがとね、またね」

出会って半年、付き合って四ヶ月、
今回の彼氏はあっさりしていた。
フラれたけれど、傷跡はそれほどでもない。
すっきりと晴れ渡る感じもない。
一つ、終わったという事実だけを認識している、
ただそれだけ。
受け入れるのも容易かった。

仕事終わり、お互いスーツのまま、
チェーンのカフェでコーヒーを胃袋に流し、
最後の挨拶を交わした。
いつもと同じペースで、
いつもの帰路を歩む。
少しだけ夜風が肌寒かったかもしれない。

「ただいま」
「おかえり。ん?どうした我が妹よ、
 元気がないではないか」
「お姉ちゃん、私、フラれてしまったわ」
「とりあえずお風呂沸いてるから入ってきな」
「ありがと」

私は四つ歳の離れた姉と二人で暮らしている。
姉は私より先に実家を出て、
一人暮らしをしていたが、
私の上京を機に、二人で住むことになった。
元々はアパートに住んでいたのだが、
広いマンションを二人で探し、
今の部屋に引っ越してきてもうすぐ二年ほどになる。

 

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2,237字

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