社会のゴミって言われたことある?
3markets [ ]がすごい。
すごいってなに? 語彙力足りないんじゃない? と思ったので、スリマのすごさについて書く。
ちなみにスリマとは3markets [ ](スリーマーケッツ)のこと。語尾の [ ]は発音しない。なんそれ?と思った人には後で説明する(かもしれない)。
端的にいえば、スリマは日本のロックバンドだ。
Official髭男dismとかKing Gnuとかと同じ分類。
横文字ですごいおしゃれな感じになった。
でもたぶんまだそういう感じではない。
「売れないバンドマン」で検索するとスリマのボーカルのカザマタカフミさんの名前が出てくる。ひどいけれどもしょうがない。
『売れないバンドマン』というタイトルの本を書いているからだ。
本はちょっと売れたので続編の『それでも売れないバンドマン』も出た。
売れないことを売りにするバンド。すごい。
いやいや、そんなのよくある自虐芸でしょ、と思うかもしれない。
売れないことを売りにするバンドなんてたくさんあって、それでも売れてないから誰も知らないだけでしょ、と言う人がいるかもしれない。
そうかもしれない。
しかし、スリマの自虐には他の追随を許さないすごさがある。
なにしろ代表曲のタイトルが「社会のゴミカザマタカフミ」だ。
「社会のゴミ」って言葉、ほかで聞いたことがない。
作詞作曲ボーカルのカザマタカフミが自分で作った。ひどい。
ひどすぎて事務所からは一度ボツにされた。
それでも無理を通して配信でリリースした。
ちなみにカザマタカフミは本名である。
公開後「親に謝れ」などのコメントが来たらしい。親戚の人かな?
スリマのすごさは歌詞を見たほうがよく伝わる。
公式ウェブサイトで全ての曲の歌詞が公開されているので見てみよう。
カザマタカフミは割ときちんと韻を踏んだ歌詞をつくる。
「社会のゴミ」と「カザマタカフミ」は厳密に言えば韻を踏んでないけど、雰囲気的には踏んでいる。もし名前がタカフミでなかったらこの曲はつくられなかったかもしれない。運がよかった。いや悪かったのかも。
その後も「底辺」と「0点」、「廃棄物」と「私物」、「名機」と「メイキング」と丁寧に韻を踏んでいく。
初めて聴いたときは、自虐がすごすぎて背筋がぞわぞわした。
これでもよくある自虐芸と思う人は、試しに誰かに「お前は社会のゴミ」と言ってみるといい。たぶんしばらく口を聞いてもらえなくなる。
カザマタカフミは道化だ。
自分を最低に卑下することで、聴く人に安心と優越をもたらす。
最初はあまりの自虐にびっくりするが、突き抜けているので、逆にカラッとしたユーモアさえ感じる。
共感して人生の応援歌のように受け取る人もいるだろうし、作り込まれたネタとして笑ってしまう人もいるだろう。
実際、この曲はTikTokでちょっと人気になった。
カザマタカフミ本人は書籍で次のように記している。
「社会のゴミカザマタカフミ」は単なる自虐ではない。
「一生夏休み」のフレーズは働かない人に対する高度な煽りにも見えるが、多くの小中学生やFIREに憧れる社会人にとっては夢のような生活でもある。
「売れないバンドマン」であることは、「売れたいバンドマン」にとっては地獄かもしれないが、一生バンドマンでいたい人にとっては平常運転だ。
実際、バンドマンの99.9%は売れていないだろう。
カザマタカフミさんは、2002年にスリマを結成してから今年で22年になる。確実に四十路は超えている。アルバイトもしている。
売れないバンドマンでも暮らせる社会は、そうでない社会よりもずっと素晴らしい。
そんなスリマがこの夏にいよいよメジャーデビューするらしい。
いまどきメジャーデビューがすなわち成功というわけではないだろうけど、インディーズで下積み22年のバンドがavexからメジャーデビューという言葉には夢がある。
仮に売れなかったとしてもその価値は変わらないけど、できれば売れてほしいと思う。
どこかで見かけたら、「いいね」でも押して応援してあげてほしい。
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