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CASE1:弟を捜索せよ!

どうにもならないアレコレシリーズと銘打って、
今まで不動産をどうにかしたいが、
どうしたらいいんかわからん!
という相談の体験談を書いていく
意外とみんなの身近な話やそういう可能性があることも
あるんちゃうかな〜、と思っている

第一弾は、
【弟を捜索せよ!】

依頼は、
そこそこ幹線道路に面した『二軒長屋』*1の右側だけ売りたいというものだった
所有は建物だけで、土地は違うという
場所はそんなに悪くないし、長屋であるということのハードルはあったが、
そこまで大きくないので、買ってくれる人もいるのではないか

*1 『長屋』というジャンルの戸建住宅で、
二軒以上が連なっており、壁や屋根、なかには梁も共有している建物
三〜五軒繋がっているものもある
京都の町家が有名
テラスハウスやタウンハウスと最近は呼び方を変えているものある
そうだが、色々な制限や融資が受けづらい、土地や権利の問題など、
なんかややこしい

たにぐち経験談
アパートに近い長屋例
平家タイプの長屋

という建物の依頼だった。

来店したのは、女性三名で、姉妹だということだ
所有者を聞くと三姉妹のお父様で亡くなっているという
まずは、相続登記*2を進めていかないと売れないことを説明し、

*2 相続登記は、例としてはお父様所有の土地や建物を自分の所有に
するために法務局に申請するもの
存命の人に所有権を移しておかないと売ることができない
ちなみに相続の折り合いがついていれば、ある程度売却が決まるギリギリでの
申請も可能で、その方が売却益で登記をすることができる
あくまで、『折り合い』がついていれば!
賃貸はすることが可能だが、できれば登記しておきたい

たにぐち体験談

「では、みなさん三姉妹で相続する手続きですね。
ちなみに他に相続権利者はいませんよね?」

とたんに表情が曇る
あれれ・・・
実は、弟がいるという

「では、弟さんと連絡をとって、誰に相続するかどうかを
決めないといけませんね。」

さらに表情が曇る
あれれれ・・・
音信不通で行方不明だという
全く連絡を取る手段がなく、どこにいるかも分からない

おぉ・・・
なかなかハードな話やな〜

弟さんが見つかって、皆さんで相続をどうするかを話し合って、
決定事項を手続きしないと売ることはできない。
三姉妹ではどうすることもできない、ということなら、
弁護士等に依頼して弟さんを探してもらうことになる
そして、依頼したからといって見つかるかは不明、
見つからなくてもお金がかかる

そこの状況として、土地は借地で建物のみの所有権だ
売るとしても相当安く売るしか方法はない
他に処分する方法としては、建物を解体して土地を返す方法だ

土地が借地で建物のみがどうして安いかは後述するので、
そちらを参考にしてほしい

地域差があるので、ある程度の地方都市という感じだが、
建坪20坪で数十万円にしかならない
弟探しに難航した場合、売却してもそれ以上に弁護士費用がかかるかもしれん
ということで、『貸す』ことで進めていきたい、
という話になった
ただ、建物自体に5年くらい人が住んでいない
そして、どうなっているかも全くわかっていないという

お父様が一時期人に貸していたこともあるらしいが、5年以上前だし、
設備や内部の状況が不明ということで、貸せるかどうかを見にいくことに

結論からすると、『条件付きで貸せる』

条件?
ある程度のリフォームをしないと貸せない、ということだ
給排水管のメンテナンス、給湯設備交換、窓や網戸の不具合を改修などなど、
まあまあ手を入れないと貸すにはきつい

借りる側もある程度すぐ住める状況じゃないとやはりしんどい
人気エリアで自分でDIYしてでも住める!というところなら、
そういう可能性もあるかもしれないし、
家賃を激安にするならいけるかも、という答えになった

貸せるように改修しても30,000円/月で、
改修工事に60万円はかかる
プラスになるまでに20ヶ月かかる
その間やそれ以降も大家の責任として
建物を保全する責任はついてくる

場所として悪くはないので、借り手を見つけることはできると思うことを
伝えて、とりあえずは家族会議をしてみるということで、
一旦お別れすることになった

その後、何度かの打ち合わせをしていき、
最終的には三姉妹で所有して、家賃を折半して、
なんかあった時にお金を出すことを都度話をして、
というのは現実的に厳しく、
ましてやそれぞれ遠方に住み、物件の近くにいない
管理を任せるにもやはりお金もかかり、
すぐ決断もできないことから、建物を解体*3して、
土地を返却することで決まった

*3 借地権がある場合、建物を必ず解体しなければいけない
という訳ではないのだが、そういう慣例がある地域もあり、
なんとなくそこに関して貸した側が強い場合もある
ここは大家さんとの状況確認と話し合いが必要
しっかりした借地権の契約書があるといいのだだ、
かなり昔だとほぼ持っていないことが多い

たにぐち体験談

冒頭に『弟が行方不明だと弁護士に依頼する以外、どうしようもない』
ということを述べたが、今ならやれることが増えている
令和5年から所在が不明な共有者がいる場合に
裁判所に申し立てて残りの共有者で管理ができる
という制度ができている

もう5年ほど前にもらった相談で、その当時はこのような制度はない
うまくいけたかどうかは不明だが、まだやれることがあった
今後、同じ話がきた場合には、下記の制度を提案できる
このように今は空き家をどうしていくかという観点で
法律の整備が進んできている
完璧ではないが、どうにかできるかもしれない方向にある

こういう法改正は、うまく調べないと出てこないし、
不動産会社でも知らなかったり、面倒だから教えてもくれないところもある
大変だけど、色々なところへ相談をすることをおすすめしたい
医療でセカンドオピニオンといわれるが、こういった財産についても
色々な観点で聞いてみると一番良い方法を提案してくれるところや
波長の合う業者も見つかるのではないかと思う


後述するといっていた建物のみの場合は下記↓

なぜ土地が借地で建物しか所有してないと相当安いのかというと
土地はその場所に付いた価値での判断となり、
建物は経年劣化をしていくからというものだ
固定資産税も土地はその街の状況や景気などによって変化していくが、
建物は築年数と面積でほぼ金額が決まる
(リフォームしたり、増築したりで変化もあるが)

まあ、いわゆる資産と消耗品の考え方に近い
家は消耗していくが、土地は資産としての価値がある
というものだ

カメラが好きな人だと分かると思うが、
『レンズは資産、カメラ本体は消耗品』といわれる
レンズはカメラ本体を変えても使用できるし、
とっても古いレンズも『オールドレンズ』として人気も高い
カメラ本体は一部、ライカやハッセルブラッドの
古いものはいまだに人気だが、
基本的にはシャッター切った回数で消耗していくものとして
捉えられていることからそういわれる
車でもホイールやパーツのいいものは資産だが、
本体自体は消耗品として扱われる
やはり一部『旧車』として市場価値もとても高いが、
一般的にはそういう考え方だ
*ちなみにウチは30年以上前のジムニーを一生乗る!
と息巻いている(特に妻が)

我が家の話はまあいいのだが、そういうことだ
古民家が流行っていたり、古いものへの考え方も
だいぶ変化があるとはいえ、やはり属人的な評価基準しかなく、
古民家を適切に評価し、回収できる人も限られている

資材高騰で新築が厳しくなり、中古市場に光が当たりそうな流れには
多少なってきているが、古い住宅に対しての評価は
まだまだ高いとはいえない
ここについては、また別で話したいと思っている

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