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SIerにはプログラミングが「できない人」が「複数種類」存在するという説

はじめに

以下のツイから始まる連投が少し話題になっていた。

かいつまんでいうと、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを形成したいなら、SIerではなく別の種類の会社に行った方が良いという主張だ。なぜかというと、ソフトウェアエンジニアはプログラミング、コーディングが業務のコアであるが、SIerにはその機会が訪れないということだ。

ソフトウェアエンジニア自体その業務内容は千社千別であり、氏の引リツやリプ欄を見ると「ソフトウェアエンジニア業=プログラミングではない」とか言う意見もある。たしかにプログラミングだけで成り立つプロダクトなんて皆無だろう。とはいえ、個人的にはプログラミングはソフトウェアエンジニア業の中核であるという、氏の意見にある程度同意する。

そしてSIerではプログラミングが「できない」という説もまことしやかに囁かれる。私はいわゆるSIerに所属したことはない。ただ、これまでの会社でも現職でもある時は下請け、ある時は製品の顧客、ある時は発注側という形でSIerに接してきた。

私が接してきた範囲でだが、確かにSIerはプログラミングが「できない」人は居た。一方「できない」にもいろいろ種類があるんだなと感じた。いかにそれらを挙げていく。もちろんこの中には営業や経理など非エンジニア部門の人々は含まれてない。

「できない」の分類

1. 能力「できない」 × 役割上「できる」 = できない

新卒、若手は大体ここからスタートするのではないだろうか。経験を積むことで能力「できる」× 役割「できる」にクラスチェンジできる。このフェーズからの脱却は個人の資質によるが、やはり理系出身者が速いのだろう。

2. 能力「できる」 × 役割上「できない」 = できない

ちゃんとした教育を受けて、入社した後もバランスの良い部署で実装の経験を積んだ人が管理職やPL, PMに昇格し役割上「できない」というパターン。まっとうなSIerのキャリアパスの一つ。エクセルや顧客と睨めっこする毎日だが、トラブル対応などの緊急時は秘めたソフトウェア工学の力を発揮して恐るべき速さで問題解決をしていく。

またとあるSIerは若手時代から完全にプログラミングをさせない所もあった。これは本体はあくまでPJ管理に注力し、実際に手を動かすフェーズはグループ会社に発注するという体制を採用していたからだ。ただこのSIerも若手にプログラミングさせないというのはいかがなものかと感じていたんだろう。若手をグループ会社に出向させるという方法でこの課題を乗り越えていた。

3. 能力「できない」 × 役割上「できない」 = できない

2の時期からいつまで経っても成長せずに役職だけ昇進してしまい、永遠にプログラミングする機会を失ったパターン。もしくは1のように上司がプログラミングの機会を提供してくれなかったパターン。SIerの若手には意外とここに危機感を持ってるひとが多いのではないだろうか?
下請け時代に一番苦労したのが、このタイプの人であった。なまじ権力はあるので、平気で無茶なことをいってくる。SIerの闇をネットに吐露する中には彼らの被害者も含まれているのだろう。
実は現代の学生はこのような人材になることを恐怖しているのではないだろうか。一社に定年までいる時代は終わり、無能でも飼っていってくれる企業が少なくなる昨今において、スキルや経験を積めないことに対する恐怖はよくわかる。まぁSIerだけに閉じた話ではないと思うけど。

4. 【番外編】インフラ畑の人

役割上「できない」でもあるのだが、サーバーやDB、ネットワーク、非機能要件に全てを捧げている人々。ちなみに「おれプログラミングわかんないからさー」といいつつLinuxのコアを魔改造しちゃう人もいるので、彼らがいう「プログラミングできない」は信用しない方が良い。

図解してみた

プログラミング能力の高低、機会の多寡で図解してみた。赤矢印は一般的なキャリアの方向を指している。インフラエンジニアは必ずしも①を経由しなくても良いが、方便的に①を始発としている。

可視化するとよりはっきりするが、「能力」と「機会」両方とも「できる」というのは右上の領域だけになってしまう。そして右上の人々は人材的にも一番脂ののった時期なので、より待遇の良い企業へと転職していく。なので、ただでさえ「できる」が減っていってしまう。

状況によってはプログラミングしているらしいよ

あたりまえだが状況によっては彼らもプログラミングする。現職では超上流工程でSIerと仕事することが多いが、この段階はまだ下請けをいれることはないので、彼らが独自でプログラミングする。また研究開発部門の人々もプログラミングバリバリである。普通に理系の修士号やらをもっている人が多い。

改善していっているらしいよ

私がこの業界にはいったあたりはSIerは確かにPL、PMになっていくのが一番良いキャリアパスなどとされていた。これは喫煙所で本人たちから愚痴を聞いていたのでまぁ本当だったんだろう。現にそのうちの1人は外資系に転職をしていった。
ただ、そういった事態に何も手を打たないわけはない。

記事の内容を要約すると、とりあえず働き方やキャリアパスの自由度をたかめて、成果に応じた報酬を提供できるような仕組みづくりを提供するようにするらしい。前にも似たようなことしていたような感は否めないが、NTTが変わると業界が変わるのでぜひとも成し遂げていただきたい。

おわりに

氏にDMを送った学生はまだ就活中であるなら、まずはいろんな人に話を聞くのが大事であると私は考える。まさにメルカリやLINEやDeNAの人に話を聞いたり、逆にNTTデータの人に話を聞いたりするのだ。特に理系の学生・院生であるなら教授や研究室のツテでその人たちに会えるのではないだろうか。
上記のNTTのニュースもあるとおり、本当にIT業界はめまぐるしく変わる。新聞やWebサイトには載っていない情報(コンフィデンシャルという意味ではなくただ単にのっていない)や現状を聞く良い機会である。意外と社会人は学生を無碍にはしない。最低限の礼儀さえわきまえていれば、本当にいろいろなことを教えてくれる。
もちろん氏の意見を参考にするのも結構だが、何も彼だけの意見を聞いて人生の岐路を判断しなければならないなんて道理はないだろう。ぜひ沢山の人と会話してほしい。


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