見出し画像

駆け出しエンジニアについて考える

はじめに

IT業界を志すものが後を立たない。特に目にするのが「駆け出しエンジニア」という属性の人々の就職活動だ。彼らは新卒もしくは別業界からの転職希望者が大半であるため、もちろんどこかの会社に内定をもらうことがキャリアの第一歩になってくる。

しかし、ここで企業側とのギャップに苛まれてスタートラインにすら立てていないケースをよく見る。

私は現職で書類選考や一次面接を行うことがある。残念ながら業務の特殊性からか、門戸を開いているにも関わらず、ほとんど「駆け出しエンジニア属性」が応募してきたことはない。

それでも、一応IT会社の採用側の目線を持っている人間の話として以下の雑感を残そうと思う。まだまだ視座の低い人間の戯言ではあるが、暖かい目で見ていただければ幸いである。

1. 起業・フリーランスへの野望は一旦胸にしまおう

この世には数え切れないほどの企業があり、その数だけ採用基準がある。しかし、「出来るだけ長く勤めてくれる人材」にきてほしいというのは共通事項だと思う。

採用には大変なコストがかかる。金銭的なコストはもちろんのこと、時間的なコスト、人的コストがバカにならない。

そんなコストをかけて、さまざまな応募者と比較して、名刺を作ってPCを用意して研修プランおよびメンターのアサインをして…やっと採用した人が半年程度で辞めてしまったら、ものすごい徒労感に襲われてしまう。

なので、採用側はそのような雰囲気を最初から醸し出している人材の採用には消極的だ。同じ能力値の人材が2人応募してきたとしたら、出来るだけ長く在籍してくれそうな人を取るだろう。

ところが、SNSの「駆け出しエンジニア」属性のアカウントのプロフィールを見てると「フリーランスを目指す!」だの「ある企業で1年研鑽をついでから起業する!」だの最初から応募する企業を踏み台にする気マンマンな文章を書いている人を見かける。

この国には言霊信仰があるからだろうか、それとも正々堂々な侍の血が流れているからだろうか。正直、「言わなくて良くない?」と思わざるを得ない。

仮に、これらの野望を面接時にひけらかした所で面接官や役員の胸を打つことは少ないであろう。出来るだけ、胸にしまってから面接に臨もう。(後、Twitterもいつ見られてるか分からないから、出来るだけプロフからも消しておくことをお勧めする)

2. 会社を辞めてはならない

これもよく言われていることだが、現在の会社を辞めての転職活動はおすすめしない。「背水の陣」の方がやる気が出るという人もいるが、リスク分散をしておくことは大事だ。わたしも経験があるが、どのような組織にも属さない「無所属期間」というのは焦るものだ。

特に「プログラミングの勉強をするために辞める」というのは、大悪手だと断言する。なぜかというと、プログラミングに適正がない場合に取り返しがつかなくなるからだ。少なくとも基本的な構文が理解できた程度で、自分に適性があると思うのは間違いである。

一応、誤解なきよう書いておくが現職の労働環境がひどかったりするケースは上記には当てはまらない。というかエンジニア転職云々の前に、今すぐ身を守ろう。

3.義務的にポートフォリオを作らない

これは、会社にもよるだろうがポートフォリオを転職のためにわざわざ作る必要はないと考える。

もちろん、自分の作ったITサービスをネタにすることは良いと思う。そこでの苦労話や今度はこう作りたいとかそういう話に花が咲けばよいアピールになるはずだ。

ただ、それは同時に義務感やスクールの課題で作ったようなクローンアプリではなく、心から作りたかったものであってほしい。そこでの熱意がかりそめのものであったり、半端なものであったらイメージダウンは免れない。

そんな中途半端なポートフォリオを作るくらいだったら、大人しくIPAやJava Silverあたりの勉強に勤しむことをお勧めする。

4. 現在の会社でエンジニアとして生きる道がないか考える

「2」の指摘の派生だが、現職でエンジニアとして働ける道がないか探してみることをお勧めする。大手企業だと情シスの一つや二つあるはずだ。そこにまずは潜り込んでみる。情シスは往々にして開発を発注する側で手は動かさないことがあったが、最近は内製化の波を受けて手を動かそうとする企業もあるようだ。

また真面目な情シスであれば要件定義をベンダーに丸投げせず、一緒に作成していくはずだ。この上流工程をしたことのある人材を、IT企業は喉から手が出るほど欲しがっている。というのも要件定義は性質上経験を積むことが難しく、慢性的な人材不足であるためだ。

なのでIT部門への転属を上司に直訴してみたり、さらにその上席に対して根回しをしてみてはどうだろうか。何十倍の面接をくぐり抜けるより簡単なケースもあるのではないだろうか。

5. 勉強する技術を絞る

たとえばWebアプリケーションの会社への転職を望んでいる場合、もちろんWebアプリケーションにまつわる技術を学習するだろう。

しかし、例えばWebアプリケーションのフロントエンドひとつとっても、マスターしようと思ったら以下の要素を学習しなければならない。

これはかなり難儀な話である。なので、webアプリケーションを勉強するにもある程度「捨てる所」を選ぶ必要がでてくる。というか、ほとんど捨ててよい。

逆にいうと、捨てなかった部分に関してはちゃんと一から理解する。そうすることで、理解度に濃淡をつけていくのだ。

そして、面接の時にまだまだ勉強中であることを正直に伝える。面接官も根拠なき全能感をもった応募者よりも、自分の能力を謙遜して俯瞰で見ている応募者の方が、安心して採用できるはずだ。

もちろん、入社した後にはしっかり勉強して理解を後回しにしていた部分をキャッチアップすることは必須だ。

6. とある形態の企業をばかにしない

具体的に書くと、「SES」、「SIer」、「JTC」あたりの企業をバカにするような態度は改めてほしい。
例えばあなたが「自社開発企業」や「自社サービス企業」に入社したとしよう。しかし、全部自社のリソースだけで開発・運用するケースよりも、上記の形態の会社と協力してプロジェクトをすすめるケースが多いはずだ。
なので、そのようなパートナーをバカにする社員なんてリスク以外の何物でもない。
インフルエンサーあたりに感化されて、そんな姿勢になってないか、今一度自分自身を振り返ってみてはどうだろうか。

おわりに

上記の雑感に加えて一番駆け出しエンジニアの人に言っておきたいのは、IT企業だって普通の会社だということだ。面接なのでアピールはいるが、過度に奇抜なことをする必要はない。どうか誠実にあなたのことを話していただきたい。それが一番の王道である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?