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先輩エンジニアは何故貴方を育てないのか

はじめに

4月。新卒社員が希望に胸を躍らせて、入社してくる季節だ。
一般的な企業であれば新入社員に教育・研修プログラムを施すであろう。原石も磨かない限りただの石である。
これはIT業界も例外ではない。しかし、ネット上では「何も教えてくれない」だの「プログラミングの本だけ渡されて放置プレーだった」だの「先輩がコミュ障で役に立たない」だの新人たちの呪詛の言葉が並んでいた。

本当にITエンジニアは人を育てないのだろうか。もし真実なら、何故ITエンジニアは人を育てないのだろうか。さらには、そのような環境でどう成長していったら良いのだろうか。

自分のとりまく環境を整理しよう

まず自分が所属するプロジェクトのメンバーを整理してみよう。様々な指標があるが、ここは教育義務が「あり/なし」、能力が「あり/なし」で整理してみた。なお、ここで述べる「能力」は業務を遂行するに必要な知識・技能全般を指す。

まずは右側の人々とコミュニケーションをとることを目指す

この図を見るとわかるが、貴方を育てる義務があるのはあくまで右半分の人々である。彼らとのコミュニケーションをいかに上手くやるかが鍵になってくる。

1. 義務「あり」 × 能力「あり」

理想的なメンターといえる。しかしこのタイプは非常に人気者なので、多くのタスク・プロジェクトを兼用してるケースがあり貴方にかまってる時間がない場合も多い。

対策: 質問がある時はまとめてするようにしよう。
1日に30分とか2日おきに1時間とか意図的に時間を確保してもらって、キャッチアップの時間を設けてもらうと良い。

2. 義務「あり」 × 能力「なし」

能力「なし」と書いたが無能という訳ではない。(そういう人もいるかもだが、少数派だと考える)メンター自身が別プロジェクトから赴任してきてまもない人物とか、マネージャーでエンジニアリング業務から離れて久しい人物とか優秀だが教える能力が限られてるケースが多い。

対策: 他の人を巻き込むように促す

このタイプは業務知識を教えられる能力がないことを自覚してるかしてないかで面倒さは変わるのだが、対策は共通である。

つまり「おれもわかんないから××さんに聞きにいこう!」と他の人を巻き込んでもらうように促すのだ。自覚ありの場合は、メンターが能動的にうごいてくれる。自覚なしの場合でも、ちょっとむずかしい質問すると停止する。そのタイミングでこちらから「…ここら辺って誰が詳しいでしょうか?」とポツリと言ってみるのだ。そして自然と他の技術者を巻き込んでいくのだ。ちなみに時間が経つとメンターも面倒になってきて「技術質問はもう直接××さんに聞いて良いよ。話は通してあるから」と言ってきたらほぼ勝ちだ(トントン拍子には中々進まないが)

左半分の人たちとの付き合い方

これまで話してきた人たちはあくまで教育義務のある人たちとの接し方だ。逆にいうとその他の人々は貴方に対する教育義務を持っていない。
つまり、貴方が仕事で失敗しようと成長しなかろうと彼らの評価には一切響かない。インターネット上で挙げられる「教えてくれないITエンジニア」は、ひょっとしたらこの層の人々なのかもしれない。個人的な信念としては、新人はみんなで育てるものと思っているが、こればかりは個々人の価値観の部分なので強要はできない。

とはいえ、彼らとの交流を諦めるのは非常にもったいない。彼らはメンターとはまた違った教えを授けてくれるだろう。以下に接し方への注意事項を挙げてみた。

  1. 質問することにコスト意識を持つ
    しばしば「質問はその人の時間を奪うことに等しい」と言われる。私はこの例えが新人の行動を束縛してしまうと思うので積極的に言うことはないが、同時に真実であるとも思う。人の時間を無駄に奪うのがなぜ良くないかというと、時間は金と同じ資源である。
    下世話な話だが貴方の会社の給与テーブルから、その人の時給を逆算してみるのだ。SES企業なら単価でも良い。すると、その人を占有することがどれだけの資源を浪費しているのか、自分はそれに見合う質問をできているのかを考えてみるのだ。バカ高い金額を浪費してるなら節約を考えねばなるまい。

  2. 話題をできるだけ分解する。
    相手はベテランの技術者で知識も経験も貴方よりはるかに豊富である。しかし、いきなり前提や問題の概要を伝えない質問をしたところで、わかるということは99%ない。そもそも、原因分析や問題の切り分けは担当者が責任を持つというのがITエンジニアのおきてである。これらの作業をそこそこにして、先輩にそれを肩代わりしてもらうというのは無責任という他ならない。
    なので、質問をするときはなるべく具体的な粒度まで砕いて砕いて砕くのだ。最初は難しいかもしれないし、的はずれな事をするかもしれないが繰り返すうちにやり方が分かってくるはずだ。相手としても、何か自分でやろうとしている人物と、全部投げてくる人物とどちらに好感もって助けるかは明白だろう。

  3. 議事録の確認という名目で交流を図る。
    新人の場合、議事録作成も作業の一つとして任されることもあるだろう。新人が任される理由としては議事録の作成を通じて、技術知識の取得やプロジェクトの関係を把握してほしいからだ。なので先輩が発言した知識や内容を漫然と書くのではなく一つ一つ理解して書くために、議事録を校正するタイミングで先輩に質問するのだ。普段交流がない先輩でも議事録作成という目的のためならちゃんと教えてくれる。もちろんこの場合も直接持っていくと芸がないので、インターネットで調べたり共有フォルダの資料を漁って自分で考えた後に質問しよう。

  4. 二度同じ質問をしない。
    最も大事なことかもしれない。二度先輩の時間をとってしまうことはコストという意味でもマイナスだし、心情も良くない。メモをして、わからないときはその場で質問してなんとか一度目で吸収しよう。どうしてもわからなくて二度目に聞くときは「二度目であることをこっちから伝える」、「自分が理解してる部分までを伝える」などとして少しでも相手の負担を減らす努力を試みるのだ。

おわりに

個人的な経験をもとにいうと、ITエンジニアは人に物を教えたがらないということはない。むしろITエンジニアは教えたがりが多いと感じるほどだ。
「新人が成長したら、自分の仕事がとられるから教えない」というエンジニアもいるかもしれないが、こんなのはごく少数だ。都市伝説級と断言しても良い。そもそも論だが強い仲間は一人でも欲しいのだ。
一番良くないのはITエンジニアは何も教えてくれないという先入観に絶望して、交流を閉ざすことではないだろうか。是非コミュニケーションを諦めないでもらいたい。

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