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オンライン読書会 開催報告(12月10日)

今回のオンライン読書会では、開始時間直後直後より、なぜか接続できない方が出るというアクシデントがありドキリ。ファシリテーターとしては焦ったものの、参加人数も3名と比較的少なかったため、全員がオンラインになったところでゆるーくスタートいたしました。

前回は初回かつ大所帯だったので、できる限りタイトにまとめようと努めたつもりですが、今回は真逆。少人数でかなりのゆるゆるムードだったので、雑談や質問もたっぷり交えての読書会となりました。 

まず最初は、クリスマス仕様の装いで参加してくれてたHさん。

寒色のオフショルモヘアニットが、やはりオシャレなクッキーモンスター…もとい、いつもとってもオシャンティーでかわいい彼女がえらんだ本はこちら。 


美術品でたどるマリーアントワネットの生涯 by中野京子

キラキラしたものが好きで、ご本人もキラッキラのHさん。パリへの初旅行でベルサイユ宮殿を訪れたのがキッカケでこの本を手にとったそうです。

私を含め、全員世界史に特別な興味を持ったことがない参加メンバーも、彼女のプレゼンを聞いて、この本を推してくれた理由に納得。 

世界史の中のいち登場人物としてではなく、一人の女性として彼女がどのように生き、政略と運命に流されていったのかを、当時残された絵画や美術品、身の回りのコレクションの解説を踏まえて解き明かします。

マリー・アントワネットが、ルイ16世に政略結婚で「引き渡され」た時、彼女はほんの14歳。当時はまかり通っていたとはいえ、やはりフランス語もできない少女が、抗えない流れに翻弄される人生、現代に生きる私たちにとっては胸がチクチクするばかりです。

中野京子さんの、中立的で時にシニカルな文章でつづられる、マリー・アントワネットの人生の光と影。こんな風に一人の女性が、大きな流れに飲み込まれて、不器用に生きていく様を知ってしまうと、歴史を見る目も変わりそう。

これは私の持論ですが、読書とは、自分の目に映る世界の「解像度」を上げてくれるものだと思っています。その意味で、今まで興味がなかった分野の本を知れるというのは、本当にありがたい。  


お次はTさん。ご紹介!と取り出した本は…ん?バーコードがない表紙?和綴じ???と思ったら、なんと湯布院のお土産屋さんで手に取った本とのこと!

おおー!!!
カナダへ移住されても手元に残していたという本は、こちらです。 

心にある力 by北川八郎

(紹介していただいた本は、著者の講演の内容をボランティアの方が文字起こしし、コピーをして綴じて販売しているもので、一般的な出版流通では手に入らないものでした。そのためリンクはAmazonではなく、著者の個人サイトです。陶芸、書籍販売から講演、DVD、ポッドキャストなど俗世を離れた仙人のようなイメージに反して、意外と手広い方なんですね…!)

サラリーマンとして銀座で勤務しながらも、個人としての価値観と、会社としての利益追求の板挟みに疑問を感じ、脱サラしてインドへ放浪。その後、九州の阿蘇へたどり着き、自然の中で暮らし、自分の体を通して自然や宇宙とのつながりを感じながら、菜食主義を貫いて暮らしておられるそうです(仙人かな)。

Tさんの推し本、まさかのおじさん大冒険の物語第二弾でした…!!

こんな風にこころ穏やかに自然に囲まれて暮らせたら、私だってどれだけ落ち着くことでしょう(遠い目)。


最後は主催のわたくしが、今年読んだ中の2冊を一気にご紹介(人数も少ないし、今年最後ということで張り切って、ちょっと無茶をしてしまった…これは反省)。

1冊目はこちら。
ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー byブレディみかこ

押しも押されぬ「80万人の課題図書(と帯に書いてあるんです)」のぼくイエ、読んでみるとやっぱり素晴らしい本でした。ジャンルとしては「社会派エッセイ」とされていますが、気軽に読めて勧めやすいジャンルだったと思います。もちろん内容も素晴らしかった。 

日本国内では、この「異人種と暮らす」感覚や、「人種による差別」がそこらへんにある環境で育つ子供たちというのは、どう受け止められたんでしょうか。
日本だと、ちょっと肌感覚として実感しづらいかも、というイメージがあったので、この本が日本でベストセラー入りしたというのは、手放しで嬉しい出来事です。ダイバーシティの意識が知られたり、新しい考え方が根付いているんだな、と感じました。
海外に暮らしていると、異人種間や異文化間の摩擦や、自分の属するアイデンティティの問題は、常につきまとうので、本書の内容は身につまされるものです。
私にも息子がおりますが、この若い世代が「エンパシー」を身に着け、どんな未来を見て、どんな世界を切り拓いていくのか。非常に楽しみです。

2冊目はこちら。 
アーモンド byソン・ウォンピョン

韓国文学がアツい、と聞いて久しいのですが、ようやく韓国文学作品の初体験です。

この物語の主人公は、生まれつき感情を司る偏桃体が小さかったため、喜怒哀楽が分からないのです。…にも関わらず、本文は一貫して主人公目線。ちょっと驚きの設定にも関わらず、著者の筆力もあってかそこには引っかかることはなく、流れるように読めてしまった。

中盤、大変な悲劇が主人公を襲いますが、そこからラストに向かって、絶望から少しずつ希望へ。息の詰まるような緊張を経ての読後感は、全身から力が抜けるようでした。人と人とのつながりにある救い。手元に置いて、折に触れ読み返したくなる小説でした。


さて、前述のとおり、今回の読書会は非常にリラックスムードで進めることができました。 それもこれも、辛抱よく付き合ってくださった参加者の皆さまのおかげです。 

今年、突然思いついて始めたオンライン読書会ですが、細長くボチボチ続けられたら、と思っています。

来年の個人的な目標としては、新しい参加者の方に来ていただくこと、でしょうか。そのためにも、各種SNSで少しずつ発信を続けて、誰かのアンテナに引っかかるように種を撒き続けたいと思います。いきなり知らない人とオンラインで話すのって気が引けるでしょうし、粛々と続けていくことが結局は近道のような気がしています。

北米で読書を続けている、まだ見ぬ読書好きの方と繋がれますように。それから、2022年も心揺さぶる本との出会いがありますように。

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