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オンライン読書会 開催報告(1月21日)

今回は、友人からの紹介やFBの告知などで繋がりが生まれ、初参加の方が2名、計5名と盛況での開催となりました。

しかも、事前に「電子書籍についても分かる限りお伝えします」と、うっかり大風呂敷を広げてしまったため、ファシリテーターの私もドキドキしっぱなし。

参加者の皆さんがオンラインになり、軽く顔合わせが終わると、まず始めは予告通り「電子書籍の使い方」についてお話を。

私自身も、いち電子書籍ユーザーとして、試行錯誤しながら今の読書スタイルになりました。海外在住での苦労が分かるからこそ、何かお役に立てることがあれば…との思いで言い出したことでしたが、どうやら参加者の方の疑問は解決できたようでホッとしました。

海外に住んでいると、日本から紙の書籍を買うのはハードルが一段と高く感じますし、コストも掛かるため、電子書籍の便利さがすごく魅力的に見えるんですよね。

疑問点を色々と伺う中で分かったのは、電子書籍サービスとEリーダーの種類、アカウントのリンク、各社のアプリとデバイスなどなど、意外とややこしいな、ということ。

使い始めると分かるだろうけど、分からない部分があるから踏み出せない、なんてジレンマが意外とあるのかも。一応、ご質問などにはにお答えできたようで、ホッとしました。

EリーダーをEインクと言い間違えることはあったけれども(Hちゃん、ご指摘どうもありがとう!)。


さて、気を取り直して、本来の読書会に戻り、推し本の紹介に参りましょう。トップバッターは言い出しっぺの私から。

紹介した本はこちら。
僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 by ブレイディみかこ

2022年の一冊目に、としばらく取っておいた一冊です。 前作では、イギリスはブライトンの片隅から、主人公である「ぼく」の目を通して、クラスで起こる様々な問題と、そこから世界中へ繋がる社会問、大ベストセラーとなりました。

昨年秋に待望の2冊目が出るということで、これは早く読みたい!と珍しくKindle で購入。一気読みでしたが、読み始めた直後から、もう読み終わるのが惜しい本でした。

学校で抱えた胸のモヤモヤを、お母さんに素直にぶつけていた少年だった「ぼく」も、今作では13歳。
年齢が上がるにつれて1人で考えたり困難に向き合ったり、お父さんといわゆる「男同士の話し合い」をしながら、少しずつ親離れが始まっているようで、一冊目のトーンを踏襲するというよりは、彼が少しずつ自分の考えをもち、自分の足で歩き出しているような印象でした。
相変わらずブライトンからイギリスから世界中へ繋がる社会問題を引きずりだしてくる感じ、それでも子供たちから未来への希望を見いだすこの感じ、たまりません。

著者と息子さんの鋭いやりとりは相変わらず健在ですが、今回は前作に比べると、著者であるみかこさんの視点で切り取った社会問題が、けっこう大きなボリュームを占めていたような印象。

親子の対話が減るのも、親離れの一部なんですよね。私たち読者がこの親子を見ていられるのも、ここまでだろうなと思うと、心にスキマ風が吹くような感じがします。でも、その風は軽やかで、自由に世界へ旅立つ「ぼく」が起こしているような、寂しくもさわやかな読後感でした。


続きまして、お二人めの推し本紹介は、今回初参加の会社員Mさん。v州よりご参加頂きました。 

ご紹介していただいた本はこちらです。
「夏物語」 by 川上未映子

英語版の『Breasts and Eggs』 はこちら。

https://www.amazon.com/Breasts-Eggs-Mieko-Kawakami/dp/1609455878

主人公は、大阪で生まれ育ち、東京で小説家として生きる38歳の夏子。

第一部と第二部で構成されている本作は、第一部が過去の自作「乳と卵」を発展させたパート、そして第二部は奈津子に芽生えた「自分の子どもに会いたい」という願いと、そこから始まる葛藤を描いた物語とのこと。

パートナーとの深い繋がりを持たないままの出産を願うことは、果たして正しいのか。自分の願いのままに、この世に新しい命を生み出すことは、正しいことなのかーー。

30台の後半といえば、女性の人生が大きな分岐点を迎えるころ。パートナーの有無、未婚既婚、子供のあるなし、仕事との向き合い方…数えきれないほどの選択をしながらも、どこかで「自分は間違っているのではないか」、「ほかの方法のほうが正しいのでは」なんて考えることもしばしばで、迷いに迷いながらそれぞれの人生を歩んでいくお年頃だと思います。 

そんな年代の女性を主人公に、生々しいまでの濃密な文体で描かれる物語。Mさんのご感想を伺っているだけなのに、つい一緒に読んでいるような気持ちにさえなってしまいました。すごく女性の心に訴えかける力のある小説だと感じました。 

また、Mさんの読書へのこだわりを伺えば伺うほど、新鮮な驚きの連続でした。

海外にいると、「日本文学といえば村上春樹」は定石。でも、それ以外の作家の名前がとんと聞こえてこないのはなぜ?日本の作家の海外進出を応援したい、というお考えから、日本人作家さんの本で北米で翻訳出版されているものがあれば、日英の両方で読まれているとのこと。

感想を教えていただいたときに、とても深く読み込んでおられるな、と言う気がしたのですが、それもそのはずですね。

私は、「日本語で読む方が早い」という理由だけで日本語の書籍ばかりを手にしていましたが、こんな形で日本文学、日本の作家を応援できるということ、考えてもみませんでした。挑戦してみようかなぁ、日英読書。



さて、続きまして3人目は、Hさんのご紹介により、シアトルの郊外、雪山の中より初参加いただいたSさんです。

なんと、お兄さんが某中古書籍ショップ関係のお仕事をされているため、書籍のサプライに困らないという、夢のような環境とのこと。これは掛け値なしにうらやましいの一言。お兄さんはひょっとして天使かなにかでいらっしゃる…?

紹介していただいた本はこちら。
「花神」by 司馬遼太郎 (※合本版のKindleリンクを貼っています)

幕末の長州藩士、大村益次郎の人生を描いた作品。

大村益次郎と名乗る前の、村田蔵六の名前で物語が進みます。緒方洪庵の適塾で蘭学を学んでいた村田蔵六は、オランダ語に通じていたために外国のエンジニアリングを学び、その才能を買われて宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、明治維新の縁の下の力持ちとして、歴史の激流に巻き込まれていくーー。

Sさんの推し本ご紹介、本当にこの物語を楽しんだということが伝わるような、熱のこもったお話で、激動の時代をドラマチックに生き抜く主人公たちの姿が目に浮かぶようでした。Sさんご自身がエンジニアということもあり、エンジニアリングの才能で明治維新の影の立役者となった村田蔵六の生き様に共鳴することがあったのですね。

実は、私自身は、どうしても歴史小説のジャンルにうとく、司馬遼太郎は学生時代少し読んだ程度でした。「しまった、このジャンルや古典って、すっかり手つかずだわ。これはちょっと恥ずかしいな…」と思ってモジモジしていたら、他の参加者の方も、みんなそれぞれの理由で手を出せずじまいのジャンルだったと言うことが分かり、ほっとしたような可笑しいような。
これから開拓できるジャンルがまだまだあるんだ、ということにも気づくことが出来ました。 

司馬遼太郎は、書店でも図書館でも、ずらずらっと並んでいる背表紙のイメージがすぐ目に浮かぶほど歴史長編小説のイメージがあったので、なかなか手をつけられずにきてしまいましたが、この「花神」は司馬作品の中では短編の、「たった」3冊とのこと(「たった」…?)。

やっぱり、いつかちゃんと向き合いたいですね、苦手意識があって手を出してない分野って(私は歴史小説や古典が後回しです…)。

さて、今回の読書会のトリを飾ってくれたのは、初回からずっと継続して参加してくれているHちゃん。

彼女の推し本はこちら。
「リュッケ 人生を豊かにする『6つの宝物』」by Meik Wiking(マイク・ヴァイキング)

「リュッケ(LYKKE)」とはデンマーク語で「幸せ」のこと。本書は、デンマークに実在する『幸福研究所』というシンクタンクのCEOを務める著者による、幸福研究の最新報告書です。

幸福とは何か? どうやって測るのか? 幸福度にはなにが影響するのか? など、社会学、科学的な統計データや哲学、心理学、統などをベースに、幸せとは一体どんな状態か。幸せな状態に自分を持っていくには何ができるのか。幸せを作るレシピをもとに書かれた本です。

参加者全員が北米住まいの会社員ということもあり、北欧のつつましやかで飾らない幸せ感に、深く感じるところがありました。

私たちが、毎日を生きているこの社会では、追い立てられるように、仕事とお金とモノに囲まれています。情報はものすごいスピードで目の前を駆け抜けていき、少しでも追いつけないと、取り残されてあっという間に不幸へ転落してしまいそうな、正体不明な焦燥感が常につきまとっています。

が、時々立ち止まってこんな本を読んで、全く違う価値観を自分に取り込む。違う価値観で自分の物差しをもう一度見直してみる……そんなところから、身近な幸せを見つける第一歩が始まりそうな気がしました。

開催報告を書くにあたって、書籍情報を確認したのですが、この本って表紙もホンワカしていて本当にカワイイですね(ただし、私の脳裏に一瞬だけ、映画「ミッドサマー」のビジュアルがよぎったのは内緒です)。個人的には、紙の書籍で手元に置いて、飾ったり、ときどき手に取って読み返したりしたいタイプの本ですね。


さて、今回は2名も初参加の方がお越し下さったので、きちんと進行できるかアワアワするわ、楽しんで頂けたかハラハラするわと、心落ち着かない様子をお見せしてしまいましたが、「楽しかった!」というご感想を頂けて心底ホッと致しました。 

また参加したいです、とのお声も頂きましたので、心強い限り。

私も、まだまだ色々な本との出会いを楽しみに、細々と続けていく所存です。お住まいの場所によっては中途半端な時間になって申し訳ありませんが、また皆さんと本のお話ができるのが楽しみで仕方ないです。



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