初夏飴 【1分で読める】#シロクマ文芸部
初夏を聴くキミの耳を美しい旋律の風が撫でる
ボクが声を出して読み上げると、彼女はクスッと笑った。
休み時間に独りで読書をしている彼女にちょっかいを出そうと、ページを盗み見て読んだ結果だった。
「ハッカじゃなくて、しょかだよ」
「おれ、ハッカ飴、嫌いじゃないよ」
「だからハッカじゃないって」
彼女のことが好きなのに、わざと意地悪していた。
学校帰りに彼女を見かけると嬉しくなった。からかうと「仕方ないわね」みたいな感じで笑っていた彼女の顔を懐かしく思い出す。
激しい雨の襲来に悲鳴をあげて駆けだす子供たち。
日に日に気温が上昇していき、入道雲がやってきて、どこかで高校球児の声。
目を細めて空を仰ぎ額の汗を拭く。
あれから何年が過ぎたかな。
彼女が転校して行った夏がまた来る。
初夏を聴くキミの耳を美しい旋律の風が撫でる
ボクはハッカ飴を口に入れる。
初夏飴の味がした。
また参加させて頂きました!
ありがとごじゃいます!
明日は文学フリマ東京36ですね。
僕は私用でお邪魔できませんが、おそらく方々でレポがあると思うので、
とても楽しみにしております!
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