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【BONUS TRACKインタビューvol.7】ひとクセ効いたこだわりで、多くの方から愛されるお店へ。bed 倉本さん

2020年4月にオープンした『BONUS TRACK』は、“あたらしい商店街” をテーマに、飲食店や本屋さん、ヴィンテージショップにレコード屋さんなど、さまざまなお店がつらなる複合型施設です。

ここでは、そんなBONUS TRACKに出店しているそれぞれのお店をインタビュー形式でご紹介。個性あふれるお店がずらりと並ぶBONUS TRACKの魅力を、ぜひお楽しみください。


それぞれのお客さまに合ったアイテムの提案を

ーーBONUS TRACKインタビュー、早くも七回目となりました。今回は、BONUS TRACK唯一の “古着屋さん” である「bed」の倉本さんにお話を聞いていきます。よろしくお願いします!

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倉本さん:よろしくお願いします!

ーーbedさんは、BONUS TRACKのお店が二店舗目と伺いました。1号店はどちらにあるのでしょうか?

倉本さん:わたしたちbedの1号店は、下北沢の西口すぐそばにあります。駅から歩いて10秒もかからないぐらいのところにある、1階に毛糸屋さんが入っているビルの2階にあって。

ーー10秒……すごいですね……! たとえば、下北沢駅西口の1号店とBONUS TRACKのお店では、お客さまの層に違いはありますか?

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倉本さん:少し違いはありますね。西口の1号店は、20代前後の若い方々から受け入れていただいているように思います。「下北沢」という立地もあってか、やはり少し若い方が多いかなぁと思っていて。

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倉本さん:比べて、BONUS TRACKにオープンした2号店には、もう少し年齢層が高めの方も来てくださっています。世田谷代田に近いのもあり、より上の世代の落ち着いた方々が印象的ですね。なかには70代のお客さまなんかもいらっしゃって。1号店ではあまり考えられなかったことだなぁと思っています。

ーーそうなると、やはり古着のセレクトも変わってくるのでしょうか??

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倉本さん:基本的にはあまり変わらないのですが、たとえばワンピースやスカートひとつ取っても、「丈の長さ」や「柄の派手さ」には気をつけています。1号店には、若い方のための短め丈の洋服や、少し派手なテイストのアイテムを。BONUS TRACKのお店には、年齢層が少し上の方やご年配の方のための、より長い丈の洋服を。それぞれのお店のお客さまに合ったアイテムを揃えようとは意識していますね。

「ヘアメイクか、洋服か」葛藤の末に選んだ道

ーーそもそも、倉本さんが古着屋を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

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倉本さん:話すとかなり長くなってしまうのですが……。私、もともとは古着はずっと好きだったのですがまさか自分が古着屋をやると思っていなかったんです。

ーーえっ、そうなんですか!?

倉本さん:私が学生だった頃は、ちょうど世の中に「エクステ」が入ってきたタイミングで。友達にエクステを付けてあげたりヘアアレンジなどを手伝っていたこともあり、当時はヘアメイクに興味があって。服の学校かヘアメイクかすごく迷いましたが、結局ヘアメイクを本格的に学んでみようと思ったため、ヘアメイクの専門学校に入りました。

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ーー古着には、いつ頃触れられていたんですか……?

倉本さん:私は広島の出身なのですが、高校生に入ったばかりの頃、お洒落な友達に「古着」の存在を教えてもらい、面白い!と衝撃を受けてどっぷりハマりましたね。“一点モノ” というのもあり、発掘する楽しさとそこでしか出会えない洋服に触れられるのが好きで。学校終わりに県中のお店へ行って、仲良くなった古着屋の店員さんと話しながらいろいろ教えていただいて。

ーーでも、選んだのは「ヘアメイク」だった、と。


倉本さん:そうですね。ただ、専門学校でヘアメイクを学んでいるうちに、やっぱり本当にやりたかったのは洋服だ、と思ったんです。それでも、一応メイクの専門学校は卒業したのですが、ヘアメイクの業界に就職はせず、卒業後は雑貨屋さんでアルバイトをしていました。そのお店は、雑貨はもちろん、古着も多く置いてあるようなお店で。

ーーそこでの経験のうち、今の仕事に活かされているものはありますか?

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倉本さん:販売スタッフとして、お客さまにどういった提案をすれば喜んでいただけるかを体感的に学んだように思います。また、当時はお店のディスプレイを少し任せてもらっていたので、アイテムのより良い見せ方を自分なりに考えたり、それを実際に試してみたり、などなど。今の仕事に活かせていることはたくさんありますね。

数々の縁と経験が、今の仕事を生み出し繋げてくれた

ーー専門学校を卒業し、雑貨屋さんで働くことになり、今の「古着屋さん」にはどう繋がっていくのでしょうか……?

倉本さん:当時働いていた雑貨屋さんがお店を閉じることとなり、そのタイミングで、気になっていたアパレルブランドのデザイナーさんと友達のご縁で出会ったんです。ちょうど人手が欲しいとのことで、タイミングも良く、「働きたいです!」とお願いしてデザイナーアシスタントとして働かせてもらえることが決まりました。やる気と根性だけはありましたが、洋服の知識も経験もないのに受け入れてもらえたのがすごく嬉しかったのを今でもずっと覚えています。

ーー倉本さんは、「人の縁」が本当にすごい方だなぁと感じます。

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倉本さん:たしかに、数々のご縁や繋がりがありますね。そのデザイナーの方からは、「洋服の作り方」を学びました。仕様書を書いたり、実際の服作りを間近で見たりして。
フジロックなどの野外フェスにも出店していたので、そこでも経験させていただきました。
また、その方のきっかけで「ピースウォーク」というネイティブアメリカンの文化に触れられたのも大きかったですね。

ーーピースウォーク、とは……?

倉本さん:ネイティブアメリカンが行う、地球環境や人種差別問題など様々な問題を良くしていこうと言う平和運動です。5ヶ月もの長い時間をかけて、平和を祈りながら歩き、アメリカを横断するというもの。キャンプをしながら、サンフランシスコからワシントンDCまでの約5,000キロメートルほどを歩く取り組みで。

ーーそこから学んだことは、どういったものなのでしょうか?

倉本さん:長い道のりを歩いているうちに、周辺の皆様が古着や食べ物などを寄付してくれるんです。いただいた物資のうち、大量にあった「服」を見ていて。その服で何か出来ないかなと思い、ネイティブアメリカンの方々による色彩豊かなビーズワークや素晴らしい衣装に魅了されていたこともあって、古着に刺繍したり、洋服を組み合わせて新しい服を作ったりといったアレンジをしながらリメイクを始めました。

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倉本さん:今、わたしたちbedが行っている「洋服のアレンジメント」は、そこをルーツにしています。また他にも、20代の頃に好きだった音楽フェスやパーティー、海外のフェスに行ったりして影響を受けたのが、アメリカで行われている「バーニングマン」というアートフェスティバル。

参加者がそれぞれお手製の個性的な格好で参加しているのを見て、すごくお洒落で呆然としました。

そこで私には何ができるだろうと考えた時に、高校生の頃からずっと好きだった「古着を使ったリメイク」で個性を爆発させたい!と思ったんです。古着のリメイクや、刺繍アレンジなど。ピースウォークでの経験やフェスでの経験がなければ、きっと「洋服のアレンジメント」のサービスを行うことはなかったと思います。

ひとつのiPhoneケースに込められた、bedらしさとは

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ーーbedさんのアイテムで、ひとつ気になっているものがあって。オリジナルiPhoneケースは、どのような経緯で作ることになったのでしょうか?

倉本さん:こちらも、「リメイク」や「アレンジ」の文脈からですね。アパレルデザイナーの元を離れて、それもひとつのご縁からなのですが、古着を取り扱う代官山のセレクトショップで働くことになったんです。

そこは、もともと私がお客さんとして長く通っていた、1番好きなお店でした。そのお店のオーナーが、よく知り合いから要らなくなった古着を大量にいただくこともあり、その古着に対して「刺繍アレンジ」や「古着のリメイク」を行って販売させてもらうきっかけがあって。そこから、自分のリメイクブランドがスタートしました。

そのタイミングで、ちょうど世の中に「i Phone」が登場して。みんなと同じく私もiPhoneに買い換えたのですが、いざ新たな端末を手に入れて、そのカバーを買おうと思った時、お店にはとにかく気に入るものがなかったんです。

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倉本さん:そこで、もっともシンプルな透明のケースを買って、自分が好きなモチーフでアレンジしてみようと思って。ネイティブアメリカンのシンボルでもある「羽」を中心に、植物などもケースに挟んでみたんですね。そうしたところ、身内の方々や働いているお店のオーナーから『これは絶対に販売した方が良いよ!!』と言ってもらえて。その場でオーナーと二人で特許を取ることにしました。

難しい特許も取得でき、試行錯誤しながら何とか形にして、実際に販売してみたところ、すっごく人気が出て。そのiPhoneケースは、今でもbedの売れ筋商品でもあるんです。

韓国のアイドルグループ『BIGBANG』の方々も愛用してくださり、メンバーの中でもTAEYANGさんがすごく気に入ってくれていて。彼はゆくゆく、3年半ぶりにソロアルバムを出すからi Phone Caseのデザインで制作をお願いしたい、と直接依頼をくれて。デザイナーとして担当させていただける機会に恵まれました。

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ーーお話を聞きながらずっと思っていたのですが、倉本さんは行動力が本当にすごいですよね……! 特許を取るなんて、なかなか思いつかない……。

倉本さん:たしかに、その時にやりたいことをパッとやる、というのはありますね。他にも、働いていたお店が閉めることになりどうしようかなと思っていたタイミングで、当時の恋人が開いていた古着屋さんを手伝うことになり海外買い付けを経験したり。古着屋の運営を学びました。

そのお店が解散になったタイミングでも、やっぱりそのまま古着屋を続けたかったんですね。新たなテナントを探した結果、今のお店がある「下北沢」に決まりました。

今こうして思えば、たくさんの経験をしてきました。失敗も本当に多かったですが、失敗があったからこそ気づけた事も多く、それが成功に繋がったんだなと思っています。

ーー偶然成功したこと、ですか……?

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倉本さん:最初に下北沢に移った時のお店は、現在お店をやっている場所ではなく、すぐ隣のビル4階だったんです。

エレベーターは無く、階段のみで、お客さんには正直一苦労な場所だったと思います。すると偶然、ちょうど更新の時に、すぐ隣のビル2階のテナントが空いたんですね。お客さんにもわかりやすいし、4階から2階になるということで歩くのも楽になるし(笑)、即決でした。

賃料が少し高く、交渉は大変でしたが、結果かなりのお心遣いをいただいて、お借りできることになったんです。前のお店を退去しなければいけないひと月前のことでした。偶然も偶然ですが、すごく嬉しかったですね。この経験がなければ、今のbedは下北沢に存在しなかったかもしれません。


大変なことは、全部。これからのチャレンジについて

ーーでは最後に、BONUS TRACKにbedの2号店をオープンした際の一番大変だったところ、またこれからどんなことを企てていきたいか、教えてください。

倉本さん:大変だったこと……。正直、全部ですね(笑)。下北沢の西口にオープンした1号店には、自分たちの「好き」をすべて詰め込むことができました。そればっかりで良かった、というか。比べてBONUS TRACKのお店は、「手を加えてはいけない部分」が多かった。一部の木目調の素材を残す条件の中でお店の雰囲気をどうつくりこむか、ということにかなり頭を悩ませました。


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倉本さん:でも、だからこそ、面白いところも多いのだと感じています。どのようにすればBONUS TRACKの良さとbedの面白さを共存させられるのか、と考えること。そして、どうすればお客さまからクスッと笑ってもらえて、楽しんでもらえるかを考えること。

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倉本さん:たとえばこの「噴水」なんかは、ひとつのこだわりなのですが、やっぱりお客さまがみなさん笑ってくださるんですよね。『なんでお店の中に噴水が!?』なんて。こういった「bedらしさ」を残しつつ、付近に住むみなさんから愛されるお店を目指していきたいです。

まだ企画段階ではありますが、洋裁が好きな地域の方のお力を借り、これまでは私たちだけで行ってきた「洋服のリメイク」をみんなでやってみるイベントなども面白そうだなと思っています。

お客さまのなかにはスナックのママをやっている方もいて。今度スタッフみんなでお店にお邪魔するんですが(笑)、bedのお客さまにはそういった個性豊かで面白い方がたくさんいらっしゃるんです。そんな地域の方々と交流して、一緒になって楽しいことをどんどんやっていけたら良いですね。



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取材・撮影/平井 萌 文/三浦 希





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