見たおぼえのない舞台/ライトアップ'

ラグの上にふわりと落ちたのは1枚のチケットだった。
1度四つ折りにした後にまた引き伸ばしたあとがあって、さらに角はずいぶんと丸くなっているそのチケットは、タイトルと出演者、日時の書かれた舞台演劇のチケットのようだった。
わたしは拾いあげてその文字を目でなぞり、記憶と照らし合わせてみたもののまるでおぼえのないそのタイトルに首をかしげるばかりだった。

というかそもそも、わたしはあまり外に出ない。
季節の変わり目にそれを感じるために1度2度外に出るのみで、それ以外は滅多なことがない限りはここにいる。

2年前の7月か...

天使がモニターされる液晶。
流れる男性の声は、それが何なのか必死に解いているようだった。

2年前の7月に何かあったかといえば、あった。
額に巻いたはちまきがプチンと切れた。
喋り方は?身振り手振りは?
覚えていないよ、そのほかは。

なんとなく居心地が悪い。
知らない落とし物が部屋に落ちている。
それに、さっきから知らない人が4人談笑している。
それに、知らないオードブルを囲んでいる。
わたしのインテリアで。

わたしのインテリアは椅子とテーブルとフカフカのラグ。
照明は、わたしだけを照らすペンダントライト。

「あの」

退出を促す。
同時に、1人が照明のスイッチを消した。
わたしも消えた。

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